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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第95話 転移迷宮②

 広場の敵が、一斉に凍りついた。


 氷に閉じ込められたガーディアンたちは、内側から砕け散り、魔石だけが残されていた。


 アレクシアの上級魔法――《ブリザード・パージ》。


 アレクシアは、ゆっくりと杖を下ろし、一息をつくとリオへ向かって声をかけた。


「リオ、助かった……んだが、お前、アタシに何を飲ませた?」


「えっと、言った通りですけど。回復薬、エリクサーです」


 アレクシアの顔が引きつった。


「エ……エリクサー?」


 リオは、不思議そうに首を傾げる。


「はい」


「お前、エリクサーがどれくらい価値があるのか知ってるのか!? そんなもん、自分のパーティでもないアタシに、ぽんと飲ませるやつがあるか!!」


 思わず怒鳴ったアレクシアへ、リオは心底不思議そうな顔をした。


「でも、アレクシアさん、顔色悪かったですよ? 魔力も尽きかけだったんじゃないんですか?」


 アレクシアは、言葉を失う。


 反論しようとして……できなかった。実際、あのままなら先の戦闘を越えられたかどうかも怪しいところだ。


「はぁ……」


 アレクシアは、諦めたように息を吐く。


「お前はそういうやつだったな……」


 それから、少しだけ表情を緩めた。


「ともかく、ありがとう」


「はい」


「後のことは、ここを脱出してからだ」


 アレクシアは、改めて周囲へ視線を向け、すぐにリオたちへ視線を戻した。


「しかし、どうやってここに来れた? アタシたちは転移のルールが分からず、やみくもに動き回ってしまったから見つけるのは大変だったろう?」

 

 アレクシアは首をかしげて続けた。


「お前たちがどうやってここに来れたかが、正直不思議だ」


 その言葉に、後ろで控えていたアレッタが一歩前へ出た。


「初めまして。僕はアレッタといいます」


 アレッタは、ぺこりと頭を下げた。


「蒼天の軌跡に新しく加入した錬金術師です。リオさんが転移罠の位置や魔力の流れを感知して、僕が転移罠に描かれた紋章を一つ一つ確認しました」


 そういって、アレクシアににっこりと微笑みかけた。


「まだ全部は分かっていませんが、ある程度の規則までは理解できています」


「ほう」


 アレクシアが興味深そうに眉を上げた時、リオが、背負っていたカバンから一枚の紙を取り出した。


「これが俺たちが作ったこの迷宮の地図です」


 そこには、迷宮の通路や広場の形が細かく書き込まれていた。


 各所には、転移文様の位置、さらに、文様同士を結ぶ矢印が記されている。


 すべてが書かれている訳ではないが、が、迷宮全体の半分ほどには、どの文様を踏めばどこへ移るのか、すでに予測が書き加えられていた。


「こ、この地図を作ったって言ったのか?」


 アレクシアは、目を細めた。


「意味が分からねぇ」


 紙へ視線を落としたまま、ゆっくりと顔を上げる。


「この、転移だらけの迷宮で何をすれば、そんなことができる?」


「あ」


 リオは少しだけ困ったように笑った。


「最近、アグレス坑道でやたらと罠が多い階層にぶつかりまして……以前、階層主戦でやったように、広く感知領域を広げて、罠を感知できないか試していたんです。そしたら、罠やいろんな魔道具の位置まで感知できるようになりました」


「……できるようになりました、で済ませるな」


 アレクシアが呆れたように言うが、リオは首を傾げるだけだった。


「あとはその応用で、転移罠の位置を広く感知できないか試したら……できちゃいました」


 ミアとアレッタが、揃って苦笑する。


「私も、最初はびっくりしたよ〜」


「リオさんは、時々すごくさらっと理解できないことをしますからね」


 アレクシアは、もう一度地図へ目を落とした。


 自分たちは三日間、行き止まりにたどり着くたびに手探りで文様を踏み続けてきた。


 だが、目の前の三人は迷宮全体を見渡しながら、転移文様の繋がりを読んで進んできたのだ。


「アレクシアさんたちがここで休息を取っているのも感知できたので」


 リオは、地図の一角を指差した。


「一番近くに出る転移罠を使って飛んできました。間に合ってよかったです」


 アレクシアは、しばらく黙っていた後、小さく笑った。


「……そうか」


 その横で、ロガーナが小さく腹を鳴らした。


 それに気づいたアレッタが言う。


「あ。気が利かなくてごめんなさい。食事にしましょう」


 アレッタは背負っていたカバンを開き、中から干し肉やパン、携帯用の乾燥果物を取り出した。


「どうぞ」


「助かる」


 アレクシアとロガーナは受け取ると、黙って食べ始めた。


「……うまいな」


「ああ」


 広場の空気が、少しだけ和らいだ。


 しばらくの休息の後、 アレッタは地図を広げ、近くの転移文様を確かめた。


「ここから先は、まだ実際に通っていない場所です。でも、今まで確認した文様の組み合わせから考えると、おそらくこの先に出口へ繋がる経路があるはずです」


 リオも目を閉じ、迷宮の奥へ意識を広げる。


「……外へ向かう魔力の流れみたいなものが、少しだけ見えます。たぶん、アレッタの考えている方向で合ってると思います」


「よし」


 アレクシアが杖を握り直した。


「だったら、今度は迷わず進めるな」


 それからの探索は順調だった。


 食事を取り、体力を取り戻したロガーナが前に立つ。


 傷を負えば、ミアの回復魔法がすぐに癒す。


 アレクシアは、十分に戻った魔力でガーディアンをまとめて凍らせる。


 リオは広く感知を続け、通路の先にある広場や転移文様、待ち伏せるガーディアンの気配を伝える。


 アレッタは文様を確認し、地図と照らし合わせながら次の行き先を決めて行く。


 五人は一つずつ、確実に出口へ近づいていった。


 そして、 最後の転移罠を通り抜けた先。


 一行は、崩れかけた石壁に囲まれた場所へと出た。


 空が見える。


 長く閉ざされていた迷宮の空気とは違う、冷たい風が頬を撫でた。


「ここは……」


 アレクシアが、周囲を見回す。


 リオは遠くに見える古代遺跡の外壁へ、視線を向けた。


「古代遺跡の近くですね。階層主がいたダンジョンの、裏側あたりだと思います」


 リオは、安心したように深く息を吐いた。


「ギルドの待機場所に向かいましょう。皆が心配していると思います」


 五人は頷き、待機場所へ向かって歩き出した。


挿絵(By みてみん)


※挿絵はAIで製作したイメージ画です。


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