第93話 救出作戦
翌日、蒼天の軌跡と、銀翼の剣のカイゼル、ミレティア、リュザードは、古代遺跡へと向かった。
遺跡の入口近くには、すでに王都探索者ギルドが簡易的な待機場所を設けている。
救出に必要な補給物資。
負傷者のための治療道具。
そして、万一に備えて待機するギルド職員たち。
セレナたちはそこで最後の準備を整えると、迷宮へ入った。
一行は銀翼の剣が残した記録と、リュザードの案内に加え、リオの感知や魔法の連発でものすごい速度で古代遺跡の地下に広がるダンジョンを進んで行く。
途中には罠もあり、強力な魔物も現れたが、一行を足止めできるほどではない。
リオのフレア・ストームでほとんどの魔物を薙ぎ払い、生き残った魔物もドルク、フィエル、レオル、カイゼルらの前衛があっという間に片づけ、一行は、予定通り五十階層へと到達した。
そして……いま、一行の眼前には、他の階層よりも明らかに大きな扉がある。その、黒い石で造られた両開きの扉には、この先に特別な相手がいることを示すかのような複雑な文様が刻まれていた。
「この先だ」
リュザードが低い声で続ける。
「ロガーナが飛ばされたのは、この部屋の中だ」
それを聞いたセレナは首を縦に振る。
「ここから先は、予定通りに行くわ」
視線を向けられ、リオ、アレッタ、ミアが頷いた。よく見ると、三人の腰には、短いロープが結ばれており、互いに離れすぎないようになっていた。
ロープ程度で別の場所に飛ばされない保証はないが、それでも、転移罠に入るまでの間に分断される可能性は減らせる。
「リオさん」
アレッタが、自分の腰の結び目を確かめながら言った。
「僕たちは、リオさんが飛ばされた後に同じ転移罠へ入ればいいんですよね」
「そうです」
リオは頷いた。
「転移罠はすぐには消えないはずですから」
「はい」
ミアもロープを軽く引いて確かめる。
「うん。リオが先に行ったら、私たちもすぐ後を追って飛び込む」
三人を見つめるセレナの表情には、わずかな不安ものぞかせていたが、それ以上に強い信頼の感情が浮かんでいる。
「皆、必ず帰ってきて。あとはリオ、これを持っていって」
そういってセレナはエリクサーと転移結晶をリオに渡す。エリクサーは先日のウォー・オーク・エンペラー戦でのレアドロップだ。体力、魔力に加えて気力まで完全に回復する奇跡の霊薬。
「エリクサーはもし姉さんやロガーナに必要であれば迷わず使ってちょうだい。転移結晶は使えないんだとは思うけれど念のためね」
リオは受け取ったエリクサーと転移結晶を見つめて頷いた。
「ありがとうございます。セレナさん。必ず二人を助けます」
アレッタとミアも、その言葉に頷く中、フィエルが扉の前へ進んだ。
「残る者は、三人が転移したのを確認したらすぐに転移結晶でダンジョン入口へ戻る。それでいいな」
「分かった」
レオルが頷く。
「ここで無理に階層主を倒す必要はないんだよな」
「ああ」
カイゼルも答えた。
「今の俺たちの目的は、二人の救出だ」
リュザードは、強く拳を握る。
「……中に入ったら、ロガーナが立っていた場所を指示する」
「頼みます」
リオが短く言った後、大きな扉が、ゆっくりと開く。
その先には、広い円形の部屋が広がっていた。
床には、いくつもの複雑な文様が刻まれている。
そして部屋の中央には、黒い鉄と結晶で造られた、巨大な柱のような魔導兵器が佇んでいた。
「……クリスタル・アイアン・モノリス」
リオが、低く呟く。
五十階層の階層主が、ゆっくりと上部の結晶を光らせた。
※挿絵はAIで製作したイメージ画です。




