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2:相人

「ゆき——由姫……か」

「?」

「あ、いや、似合ってるなって…」


不思議そうな顔でこちらを見ている——。


「俺は夜月 柊。呼び方はなんでもいいよ」

「柊……」

「わかっただろ、覚えてるのは名前だけ。あと、記憶以外は特に問題ない」

「そうか、それは良かったよ」


ひとまず大ごとにはならなくて安心した。見た感じ辛そうな様子もないし、別に怪しいところもない……と、そうだ。


「ていうかそのジャケットは?」


 彼女は白いワイシャツに黒い生地に赤いラインの入ったジャケット、うちの異端討伐軍の制服を身につけていた。


「その格好は寒いだろうと思ってな、その椅子に置いてあったのをかけてやっただけだ」

「あぁ、そういうことか」


なんだ、実は隊員でしたーとか今日から入隊します——って言われるかと身構えてしまった。


「それ、お前が昨日忘れていったやつだけどな」

「俺のかよ!」


昨日って……それ絶対汚れてるだろ、せっかく髪とか綺麗になったのにそんなの着せるなよ——。

 とにかく状況はわかった。彼女の種族は不明、記憶喪失で覚えているのは自分の名前だけ。正直一番ほしい情報が得られていない。百歩譲って傷の理由を置いておくとしても、せめて種族がわからないとこの先不安ではある。種族がわかれば、大まかではあるが行動思考の傾向やそれぞれ特有の能力なんかも割り出せるはず。まぁでも基本的に自分を明かすことは敵か味方か判断してからの方が長生きする。この大陸では様々な生き物が生息しているため知識の豊富さが生死に直結しているからだ。特定はできないが、見たところ角は見られず体も人型であることから魔族でも獣人でもなさそうだ。


「それで、これからどうするんだ?」

「ん?これからって?」

「えーと、由姫……の、これからの扱いだよ」


話しながら、ちらっと彼女の顔を盗み見ると——。


「……」


目を見開いてこちらを凝視している。


「今後の方針は何も決めていないが、私は御守はごめんだぞ」

「え?じゃあどうするんだよ」

「お前が連れてけばいいだろ」

「そう言われてもな……」


別に俺が部隊に入っていなければ軽く手伝うことはできるんだけど。今の異端討伐軍は特に忙しい。最近、獣人族領地の老種が大量に発見されている——。


「私は……」


ずっと黙ってこちら二人の会話を聞いていた彼女が口を開いた。


「私は特にやりたいこともないからついていくよ」

「ついてくるって……俺はある部隊に入っているんだ。危険もあるし、さすがに入隊するわけにはいかないと思うんだけど——」

「……」

「本人がいいんだからいいんじゃないの?それくらいの面倒見てやれるだろ。第一、選択肢はお前が連れていくか置いていくかの二択だぞ。」


俺と同じ異端討伐軍に……?あんな彼女の細腕で戦闘は無理だろうし……見た感じ、狩人っていうよりもお姫様だもんなぁ。それでも強い女はたくさんいるけれど、ここじゃなくてもいいんじゃないかって常日頃思っている。


「わかった、とりあえず説明させてくれ。そのあとにもう一度聞くから」


彼女は今までと同じく顔色を変えずに「うん……」と頷いた。


 いつから起こり始めたのか、もう誰にもわからないが暴走する闇はいくつもの命を刈り取っていた。

 あらゆる生き物は自己の魂を汚染させないようにある程度のセーフティが設けられている。この大陸に住んでいる種族にはそのセーフティを解除してしまう可能性が大いにある。自分の能力を限界まで酷使した代償にその生き物の魂は汚染され化物に変貌する——これを「老種」と呼ぶ。

 そしてこの老種を討伐するために中央都市が作り出したのが異端討伐軍だ。老種は主に中央都市の外、五種族の領地に発生するためその領主との連携が必要になる。この連携が討伐任務よりも厄介だということは周知の事実でもある……。とにかく危険な部隊であるのは明らかだ。

一通り話し終えてもう一度、彼女に確認してみると——。


「わかった、危険なら私も力を貸すよ……なにもできないと思うけど」


なんて今までと変わらない表情で言うので返す言葉も見つからずあっさり了承してしまった。

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