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家の広々としたキッチンでお菓子作りをしながら、私は昨晩のことを考えていた。
……私、今までなんて自分勝手だったのかしら。
正直、かなり落ち込んでいた。
死にたくないばかりが先行して、私はキースのことをちゃんと知ろうとしていなかった。そして、キースはそれを分かっていた。
なんて滑稽なの、私……。
私は昨晩キースの元を飛び出すように部屋を出てから、大広間には戻らなかった。
エヴィンには何があったのかと詰められた。エヴィンから興味津々の目を向けられ、私は口を閉ざした。
黙り込む私にエヴィンはパーティー会場での盛り上がりを色々と教えてくれた。
突然二人……私とキースが消えたっきり帰ってこないから相当噂されていたらしい。良い噂も悪い噂もずっと何かしら私たちについて話されていたらしい。
これでより一層、私は他の貴族たちと関わりにくくなってしまった。社交界デビュー失敗だわ。
私はため息をつきながら、キッチンのオーブンを開いた。
「こっちも大失敗」
オーブンの中身を確認するなり、私は再び盛大なため息をつき、肩を落とした。
シフォンケーキを作っていたのに、全く膨らんでいない。ぺちゃんこ。
お菓子作りを失敗するなんて初めてよ……。
「ああ、これはこれは……。今日は随分と上の空でいらっしゃいましたからね。何かあったのですか?」
柔らかな口調で小太りの中年男性が近づいて来る。彼は私の代わりにオーブンからぺちゃんこのシフォンケーキを取り出してくれる。
この男は我が家の専属シェフであるジェフ・エリオス。ここでは彼が料理長で、彼の双子の弟ジェット・エリオスが副料理長を務めている。今日はジェットの方は休みのようだ。
二人の料理は、栄養バランスが完璧で美味しい。つまり、最高のシェフ。
お菓子作りに関しては本を読んで学んだけれど、二人から教わったことも沢山ある。
それに、私は昔から、嫌なことがあれば本を片手にいつもこの場所に来ていた。キッチンの隅で静かに本を読んでいた。
嫌なことというのは、ほとんど王妃教育。キースとの婚約が決まってからというものの、かなりハードな日々だった。
ジェフとジェットはいつだって私を優しく迎え入れてくれた。先生たちが私を探しに来ても、私のことを隠してくれた。
ジェフの包容力はこの世で一番と言ってもいい。ジェットの方は少し意地悪だけど、優しい。
私は二人のことをとても慕っている。二人にはなんだって相談できるし、相談してきた。
「考えないといけないことが一気に増えて……。頭が爆発しそうなのよ……」
私はジェフにボソッと弱音を吐いた。




