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死にたくない私は王子に愛を伝える  作者: 大木戸 いずみ


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「あの、私……」

 うまく言葉が出てこない。

 今すぐこの場を離れたかった。キースの前から立ち去りたかった。

 全てキースに見透かされていたんだわ。

「落ち着け。別に責めてはいない」

 羞恥で慌てる私を見て、キースはどこか穏やかな声色でそう言った。

 どうして……! そこは私を責めるべきでしょ、キース!

 混乱状態の私は「少し一人にさせてください」と席を立ち、逃げるように部屋を出ようとした。取っ手に手をかけたその瞬間だった。

 キースが私に近付き、扉を開けようとする私の手首をぐっと力強く掴んだ。振り向いた瞬間、キースと目が合う。

 その青い瞳にまっすぐ捉えられた瞬間、胸の奥で心臓が大きく跳ねた。 

 ……近すぎる。

 この距離で、この美形は目が溶けちゃうわ。

「どこに行く」

 キースの低い声に私は一拍置いて答える。

「……一度、頭の中を整理したくて」

「一人で城内をうろつくことは許さない」

「それなら、大広間に……」

「それはもっとダメだ」

 彼は嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「ああ、もう! キース様が何を考えているのかちっとも分かりませんわ!」

「俺はいつだってお前のことを考えている!」

 …………私のこと? 

 反射的に言い返されたキースの少し乱暴な言葉に私は固まった。

 今、私のことを考えているって言った? 

「……いや、今のは忘れてくれ」

 無理でしょ。忘れられるわけがない。

 キースは目を逸らし、私の手を握る力を緩めた。これで、私はいつだって部屋を出ることができる。

 キースに色々と聞きたいことはあるけど、先に自分の気持ちを落ち着かせたい。

 今日、本当に久しぶりにちゃんと会話ができた。……これを会話と呼ぶのなら。

 圧倒的コミュニケーション不足で、私たちの物語はまだ序章にすら辿り着いていないんだもの。

 それを解消する方法も考えなくちゃいけないわ。

「また会いにきますわ」

 私はお辞儀をして、急いで部屋を出た。

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