18
「あの、私……」
うまく言葉が出てこない。
今すぐこの場を離れたかった。キースの前から立ち去りたかった。
全てキースに見透かされていたんだわ。
「落ち着け。別に責めてはいない」
羞恥で慌てる私を見て、キースはどこか穏やかな声色でそう言った。
どうして……! そこは私を責めるべきでしょ、キース!
混乱状態の私は「少し一人にさせてください」と席を立ち、逃げるように部屋を出ようとした。取っ手に手をかけたその瞬間だった。
キースが私に近付き、扉を開けようとする私の手首をぐっと力強く掴んだ。振り向いた瞬間、キースと目が合う。
その青い瞳にまっすぐ捉えられた瞬間、胸の奥で心臓が大きく跳ねた。
……近すぎる。
この距離で、この美形は目が溶けちゃうわ。
「どこに行く」
キースの低い声に私は一拍置いて答える。
「……一度、頭の中を整理したくて」
「一人で城内をうろつくことは許さない」
「それなら、大広間に……」
「それはもっとダメだ」
彼は嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「ああ、もう! キース様が何を考えているのかちっとも分かりませんわ!」
「俺はいつだってお前のことを考えている!」
…………私のこと?
反射的に言い返されたキースの少し乱暴な言葉に私は固まった。
今、私のことを考えているって言った?
「……いや、今のは忘れてくれ」
無理でしょ。忘れられるわけがない。
キースは目を逸らし、私の手を握る力を緩めた。これで、私はいつだって部屋を出ることができる。
キースに色々と聞きたいことはあるけど、先に自分の気持ちを落ち着かせたい。
今日、本当に久しぶりにちゃんと会話ができた。……これを会話と呼ぶのなら。
圧倒的コミュニケーション不足で、私たちの物語はまだ序章にすら辿り着いていないんだもの。
それを解消する方法も考えなくちゃいけないわ。
「また会いにきますわ」
私はお辞儀をして、急いで部屋を出た。




