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「具体的に?」
キースは顔を顰めた。
……私の好きなところを具体的に言えないということ?
キースってば、本当に私に興味がないのね。私は思わずため息をつき、口を開いた。
「手頃な公爵令嬢だったということですね」
「……違う」
なんだか部屋が少し寒くなったような……。
キースは鋭い視線を私に向けて、どこか怒っている様子で否定する。
「じゃあ、答えてください」
私も意地を張る。普段なら折れるのに、今回ばかりは最後まで戦おうと思った。
キースから目を離さずに私は返答を待つ。
もう婚約して十年の仲よ? 少しぐらい私に歩み寄ってくれてもいいじゃない!
沈黙だけが長く伸びていき、それでもキースは何も言わなかった。
もう! どうしてそんなにも私と話したがらないのよ!
私は耐えきれなくなり、声を発した。
「キース様は私のことを少しでも知ろうとしてくれたことがありますか?」
私のその言葉にキースの眉がピクリと僅かに動いた。
「君も俺のことを知ろうとしないだろう?」
まさかの返答に私は思わず「え」と声を漏らす。キースは話を続けた。
「俺に愛を伝えてくれているが、俺に惹かれているわけではない」
「そんなこと……」
そう言いながらも、キースの言っていることはあながち間違いではないのかもしれないと思った。
「好意はあります」
「好意はあるだろうが、恋だの愛だの、そんな感情を君は俺に対して持っていない」
「どうしてそんなことキース様に分かるんですか」
勝手に決めつけないでほしい。
私は少しムッとして言い返すと、キースは「俺には視えるからだ」と少し間を置いて言った。
……視える? 何が? 心が?
それなら、読める、と言うはず。
きょとんとしている私にキースは更に言葉を加えた。
「君は俺の何を知っている?」
その言葉に私は固まってしまった。一切の曖昧さを許さない目で、キースは私を見据えた。
確かに私はキースのことを何も知らない。
趣味や好きなものも把握していない。だって、彼が答えないから。………………本当に?
私は自問自答を脳内でする。
王子の好きなものなど、知ろうと思えば知る方法なんていくらでもある。公爵家が調べようと思えば、そんなの朝飯前だもの。
死にたくないから愛を伝えていた。スイーツも作って渡してきた。だけど、それはいつだって一方的だったわ。
キースのことを知ろうとしていなかった。キースについて質問したこともなかった。
手紙の内容もいつだって、愛を綴っているだけ……。
私は自分のことしか考えていなかった。なんて自己中心的だったのかしら……。
そのことを自覚した途端、私は恥ずかしくなった。




