花が落ちても
アリスの話はどれも好きだった。
だけど、1番好きだったのは【 花が落ちても 】。
他の作品とは違うこのお話は片思いで終わる。
「あの…」
「何?」
「花が落ちても って」
「あぁ、花ちゃんが好きなあの小説?」
「はい。あれも、…アリス先輩の体験なんですか?」
「あれ?あれは違うわ。私の話じゃなくて結の話よ?私、片思いで終わらせた恋は無いもの。必ず、振るか振られるかして気持ちを切り替えるし。一途に思い続けています、なんて私には辛くて出来ないもの」
ニコッと微笑み彼女は続けた。
「結にそんな相手がいた、なんて私も知らなかったから相手がどんな人なのか気になりはするけどね?」
「そう…なんですね」
「まぁ、話作るのも上手いし相手は存在しなくてそんな話を書きたかっただけかもしれないけど」
" 高野君は...アリス先輩の事、好きにならなかったの? "
" ... どう思う? "
" 春君良い人そうだったね "
" ん。良い人だよ。優しくて面倒見よくて苦労するタイプ。春君って誰にでも優しいから麗奈が恋に気付くの遅くなっちゃったみたい...本当は【 もっと前から両想いだったのに 】 "
" ぇ?あぁ、麗奈は俺の... "
「…好きな人?」
「え?」
「…ぁ、すみません。何でも、無いです」
無意識に口に出してしまっていたみたいだった。
あの話はもしかしたら、結君の体験なのかもしれない。
どうしてそう思うのか… それは内容が重なってしまうから。
想い人に恋人がいてもずっとその人を思い続ける主人公と、春君とアリス先輩…の傍に居る結君が。
何これ…。
小説を読んだ時、主人公の気持ちだけで凄く辛い思いをした。
何度も泣いて、苦しくて。
だけどそれは、自分が好きになった人の体験で今も彼は…この想いを抱いたまま?
そんなの辛すぎるし …
それに、私の想いもきっと彼には届かないんだ。
まさか自分が1番好きな小説と同じ体験をしちゃうだなんて夢にも思わなかった。
「…ゃん…?…花ちゃん?」
「…へ?」
「花ちゃん大丈夫!?」
気がつくと、アリス先輩が慌てていた。
何故だろう、滲んで見える気がする。
「ぇ?」
「どこか痛い?大丈夫?」
「えっと…?」
「花ちゃん、今泣いてるよ」
言われてそこで気づいた。
滲んで見えたのは気のせいじゃない… 私、泣いてたんだ。
「ぁ、すみません」
「いや、私は大丈夫なんだけど花ちゃん大丈夫?」
「ちょ、どうしたの?」
「花ちゃんが急に泣き出しちゃって」
「ごめん、なさい」
電話から戻ってきた彼も私と彼女の様子から何かあったのかと心配している。
早く涙を止めたいのに思い通りには止められなくて私は謝ることしか出来なかった。




