思
「はい。とりあえず保健室行く?」
結君はハンカチを渡してくれた。
私は自分の分があるから遠慮しようとしたら押し付けられてしまった。
「大丈…」
「大丈夫じゃねーから。ほら立てる?立てないなら前みたいに運ぶけど?」
「前…みたいに?いや…大丈夫!!」
前みたいにって事は…またお姫様抱っこをされるということだ。
…絶対に嫌っ!!
好きな人にお姫様抱っこって憧れるシチュエーションではあるけど、重いって思われたくないっ!
それに…今、泣き顔の私は絶対に不細工だ。
そんな顔を至近距離で見られるなんて絶対無理っ!!
「じ、自分で歩けますっ。大丈夫、だから」
ハンカチで顔を隠しながら答えた。
「わ、私、1人で保健室行ってそのまま帰る…。アリス先輩もすみません」
「え、ちょっと」
「また」
私は荷物を纏めて急いでその場を離れた。
知ってしまったからには2人が一緒に居るなんて嫌だけど今はそれより自分の気持ちを落ち着かせる方が先だった。
涙は拭いても拭いても止まらなくて…
" 経験?付き合った人数のこと?数だけ多くても意味無くない?内容が大切でしょ? "
結君の言葉を思い出した。
初めから私が教えられる事なんて無かった。
だって、私が初めて好きになった人は貴方だったから。
私が抱いた感情は貴方から貰った物だった。
私より色んな感情を既に知っている貴方に、私が教えられる事なんてきっと…1つだってない。
" じゃあ乙木さんが俺に恋を教えてよ? "
恋がどんなものか、1番知ってるのは貴方じゃない。
ずっと抱えていたんでしょ…?
楽しさも苦しさも1番よく知ってるのは貴方の方だった。
逆に…私の方が教わってしまった。
だから…
「私…どうしたらいいのか、分からないよ…」
滲む視界の先にある彼から借りたハンカチを見つめ、私はポツリと呟いてしまった。




