違和感と正体
分かったことがある。
アリス先輩と初めて出会った日、結君と2人で楽しそうに話していたのは恋愛話だったらしい。
春君との話を結君によく話しているみたいで、彼の存在を知った私も今日はその話に混ざっていた。
「この前春君と駅で待ち合わせしていたら、金髪の女性と話していたの。様子を見ていたんだけど、彼女がいきなり春君に抱きついて!だから私許せなくて春君に怒っちゃったの…春君は何も悪くないのに…頭では分かってるんだけど…。だって嫌じゃない、私の春君なのに。私だけの春君でいてよって」
話を聞くと、海外から来た女性が春君に道を尋ね感謝の際に抱きついてしまったらしい。
確かに、恋人が抱きつかれている場を目撃してしまうのは辛いかもしれない。
でも、分からない土地で頼れる人を見つけて気持ちが高まってしまった相手の気持ちも分からなくは無くて。
私は " 優しい所が春君の良い所だけど... " なんて言うアリス先輩の怒ったり落ち込んだり、コロコロ変わる表情をただただ見ていた。
アリス先輩を知る度に、自分の中で違和感を覚えた。
確かに、物語の女の子の要素は感じる。
" だって今までのはアリス先輩のお話ですよね!どれも凄くときめきました!! "
" それは、そうなんだけど "
私の問いに、アリスの話は " 自分の話 "だと彼女は言った。
だけど、アリスが書く物語に使われる様な想いや温かさをアリス先輩自身からは感じられなかった。
アリス先輩が優しくない訳じゃない。
だけど 相手を思いやり、相手の為に行動したり、溶け込んでくる優しい言葉を掛けてくれたり… それがアリスな筈なんだ。
アリス先輩は、アリスの温かさとは別人のように感じ、それが違和感だった。
「春君が誰にでも優しいのは今に始まった事じゃねーじゃん。ずっと誰にでも優しくて。それが春君だし、だから好きになったんじゃん?誰にでも平等な春君が1人だけ選んだのは麗奈なんだから自信を持てば?麗奈は春君を信じてあげないと。何があっても春君の1番は麗奈しかいねぇーんだから」
「それは...分かってる...」
「そ。分かってて偉いじゃん。大丈夫、麗奈と春君はちゃんとお互いを好きだから。浮気なんて出来ないだろうし疑わず真っ直ぐ信じてあげなよ」
結君の言葉は優しくて安心させてくれる言葉が多かった。
そのせいもあるのかもしれない。
この優しさにずっと触れていた気がする。
関わる度に違和感を覚えて…
アリスは アリス先輩 な筈なのに…
どうして私は 結君 の中にアリスを感じてしまうのだろう…。
「あ、春君からだ」
「え?春君?」
タイミングが良いのか?結君のスマホに噂の主から連絡が着たみたいだ。
「ちょっとごめん」
そう言い彼は私達から離れた場所で電話に出た。
「春君、結に謝ってそうだな」
「え?」
「迷惑かけてない?大丈夫?ごめんね?って...。春君は何でもお見通しなの。それも、ムカつく。だって私だけが好きみたいに感じてしまうの」
「アリス先輩は…寂しいんですね?大切に想われてるから自分の事が理解して貰えていて、それは嬉しい。だけど感情的になるのはいつも自分の方ばかりだから、好きが溢れているのは自分だけな気がしてしまうんですね?自分の好きが相手より重い気がして不安で寂しくて悲しくなってしまって。気持ちをコントロールするのは難しいですよ。だって私達は今を生きてるから。日々変化するから感情の波は必ずあります。春君は私達より大人だからそれが上手いんですよ。それかそう見せているだけかもしれません」
「 … 」
「春君はアリス先輩の事が大好きだから結君に連絡してきたんだと思います。相手がどう思っているかなんて誰にも分からないから当人同士でも難しいですけど、好きを伝えあって安心するしか無いんじゃないですかね?せっかく両思いで付き合ってるのに悩んで幸せじゃない時間を過ごすのは勿体ないですよ」
「…そう、ね」
アリス先輩は一瞬驚いた様に目を開いたが、一瞬だけの反応でその後は自分の中に落とそうとしているみたいだった。
そして再び口を開いた彼女の言葉に今度は私が驚かされたのだった。
「結が言いそうな言葉で驚いちゃった。でも不思議では無いのよね…だって、花ちゃんは結の小説大好きだもの。少なからず影響を受けるわよね?」




