変化
「春君と麗奈は付き合ってるんだ。麗奈ってモテるからさ色んな奴と付き合って、今は春君とって感じ」
「そう、なんだ...春君良い人そうだったね」
「ん。良い人だよ。優しくて面倒見よくて苦労するタイプ。春君って誰にでも優しいから麗奈が恋に気付くの遅くなっちゃったみたい...本当はもっと前から両想いだったのに」
「高野君は...アリス先輩の事、好きにならなかったの?」
「... どう思う?」
「それは...」
好きになった...のかな。
あんなに可愛い人が傍にいたら。
だけど、言いたくない。
高野君はアリス先輩の事が好きだったなんて思いたくない...。
幼馴染み で アリスの存在を共有しているだけ
ただ、それだけでいい。
それだけで、私からしたら特別なんだから。
だけど、彼女と話す時の高野君は楽しそうだったから...考えざるを得なくて...苦しい。
「...分からないかな」
「そ」
「でも、もし私がアリス先輩だったら...。想いを寄せてくれる人が傍にいたら嬉しかっただろうな、とは思う」
「...フ、何それ」
「だから、春君や高野君、色んな人がアリス先輩の事を好きになったとして、でもそこに同じ好きは無いから...一人一人の想いに感謝したいなって思っただろうなって話。まぁ、私はモテないので感謝出来ないですけどね?」
自分でも何でそんな事を言ってしまったのか分からない。
分からないけど、彼の横顔を見ていたら考えるより先に口に出してしまっていた。
「...そっか」
小さな一言だった。
だけど私には聞こえていて、優しい音に感じた。
それから無言になってしまったけど、あっという間に駅に着いた。
「あ、じゃあ高野君、送ってくれてありがとう。また学校でね?」
「...あのさ」
「ん?」
「名前、結でいいから」
「...え?」
「俺とアンタの方が先に知り合ってんのに、麗奈や今日知り合った春君ばかり名前呼びって何か嫌じゃん?だから、俺もアンタの事、花って呼ぶし、結って名前で呼べよ」
「えぇぇ!??」
「っ、うるさ」
「ぁ、ぁ、ごめんなさい!ビックリしちゃって」
「まぁ、嫌なら...無理には」
「嫌じゃない!嫌じゃないよっ!...良いの?...その、私が呼んでも?」
「別にいいでしょ、下で呼ぶくらい」
「うん!!...えっと...結...君」
「っ...結でいいのに」
「いや、流石にいきなり呼び捨ては...ちょっと。心の準備というものが」
「心の準備?」
この日から私達はお互いを下の名前で呼ぶようになった。
「じゃあな花、気をつけて帰れよ」
たった少しの変化だったのに。
好きな人の名前を口にしたり、名前を呼んでもらえたり、ただそれだけで幸せな気持ちになれた。




