第6話 買い物
時代背景は貴子達が高校生だった10年前の2010年です。
「佐伯さん。ちょっといいかしら。」
終業のホームルームも終わり、帰ろうとした私を吉田さんが呼び止めた。
「なんですか?吉田さん。」
「今日はこの後予定とかある?」
「帰るだけだよ。」
「私と付き合ってくれない?」
なんと!
吉田さんから告白された!
コレってアレですよね?
私たち女同士でしょ?
私は百合とかそんなの興味ない…
…ない
……なくはない。
「貴女って本当に面白い人。」
吉田さんが右手の甲を口に当てて、ウフフと控えめに笑う。その仕草、どこまで大和撫子人なんでしょう。
見た目だけだけど。
「貴女が何を考えてたのかは、わかってます。私の言い方が悪かったのですね。」
私の思考は吉田さんに読まれていたらしい。
「買い物についてきて欲しいの。」
「あ、そういう事ですね。いいですよ。帰ってもヒマしてるし。」
「良かった。貴女と行きたかったの。」
私と行きたかったって、久保田君ではダメなんだろうか?
「私でいいの?久保田君と行かないの?」
二人を見てると焦ったい。早くくっつけば良いのに。
ズキッ!
あれ?今、私の心臓、不整脈をおこした?
「紀夫には秘密にしておきたいの。」
「そっか。わかった。じゃあ行きましょ。」
秘密って事は、久保田君の誕生日プレゼントかな?そういえば久保田君の誕生日って知らない。後で吉田さんに聞いて、私も一緒に買うことにしよう。
今日は日直の為、放課後も仕事がある久保田君に「お先に〜」と挨拶をして、私と吉田さんは学校を後にした。
吉田さんにどこへ買い物に行くのか尋ねたら、彼女は近くの大型デパートに行くと言った。
近くのデパートと言っても、学校の最寄り駅から電車で三駅離れている。
電車の中で何を買うのか訊いてみた。
「吉田さん。何を買うのか教えて?」
「水着です。」
「水着?」
「ええ。期末考査が終わったらプールに行こうと紀夫が言い出したから。」
「へぇ。久保田君と二人でプールデートなんだ。羨ましいね!」
あれ?今の私、吉田さんにヒガミっぽくなかった?
「何を言ってるの?貴女も一緒に行く事になってるわよ?」
「へっ?」
「へっ?って、貴女。紀夫から聞いてない?」
「そんなの、聞ぃてないよ〜。」
私は顔をブンブンと横に振った。
「全く、紀夫は何をしてるのよ!」
吉田さんはプンスカとお怒りモードだ。
「私と吉田さんと久保田君の三人で行くの?」
「いいえ。他に三人。三組の渡辺君と桜庭さん、あと一人は渡辺君が誘うって紀夫が言ってたわ。」
「その一人は男子なのかな?女子かな?」
「渡辺君に任せてるから分からないって。」
三組の渡辺哲也君は、久保田君と中学の時から仲が良いと聞いている。桜庭さんは先日の相合傘の相手だ。その後、仲良くなったのだろう。
吉田さんはハァと溜息を吐いて、窓の外を流れる景色に視線を移した。
電車が目的の駅に着いた。私達は電車を降りて、駅の向かい側にあるデパートに入った。六階に水着の特設売り場が設けられていた。
「うわぁ〜水着がいっぱいある!」
私はカラフルな水着に興奮して声を上げた。
「佐伯さん。こっちよ。」
吉田さんは派手にディスプレイされた水着の間を抜けて、売り場の奥へと進んでいく。
「売り場の手前にある水着は今年のデザインモデルなの。値段が高いのよ。」
彼女がそう言うので、手身近にあった水着の値札を手にしてみた。
五万円と書かれていた。とてもじゃないが、高校生では買えるお値段ではない。
「びっくりするでしょ。水着って本当高いのよね。だから…」
吉田さんは奥の方を指差した。
「昨年モデルを買います。」
指差した方向に『2009年モデル売り切りコーナー』と書かれたポップが目に入ってきた。
「昨年モデルだと安いの。水着の流行りなんて昨年も今年も大して変わらないし。要は隠すところを隠せたら良いのよ。」
吉田さんの言う事は正しい。正しいのだけど、残念感を覚える。
「ただねぇ。昨年モデルだと売れ残りだから、気に入った水着のサイズが無かったりするのよね。」
それでも彼女が言うには、このデパートは他のお店よりも、昨年モデルの品揃えが豊富らしい。だから、このデパートに来たかったのね。吉田さん、しっかり者だ。
「この特設売り場、今日からなの。サイズが無くなる前に買いたかったから。」
なるほど。勉強になります。
「佐伯さんもプール来るでしょ?水着持ってるの?」
私もプールに行くのは決定事項なんですね。はいはい、わかりました。お財布の中、いくら入ってたかしら。諭吉さんが二人はお住まいになってたはず。でも、これ使ってしまうとキツイなぁ。お小遣いももらったばかりだし。アルバイト始めようかな。
「私、水着って学校のしか持ってないの。」
「佐伯さん。マジで言ってる?」
「ええ。中学の時とか誘われた事は無かったし。」
「貴女…」
なに?吉田さん。その哀れむ様な目は。別に中学は一人ぽつんと過ごしてた訳では無いですよ?それなりに友達もいました。皆オタク系でしたけど…
「まぁ、スクール水着も需要が無い訳ではないので…」
待って下さい。その言い方危ないですって。
「佐伯さんのスク水姿。Fですものね…ゴクリ…」
「いやいや、何を言ってるの。それを言ったら吉田さんもEでしょ?」
「自分のオッパイ見ても興奮しませんのよ?」
ダメだ、この人。
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(`-ω-)y─ 〜oΟ




