第三話 原因調査!エウロパへ引き返せ (4)
――さて、エウロパに着くまでに時間もあるし、ユニットの解析を本格的にしないと……。
「でも、解析って何をどうするの?」
「ゲートのユニットはどこに接続したかとか、逆にどこから接続されたとか。
その時間、距離、接続者などを記録しているんです。
それから、どんなものが通過したのかも」
「へー。そんなことしていたんだ」
「もっとも、人間の大きさくらいのものが通ったとかしかわかりませんけどね。
なので、虹彩認証でだれが通ったとか追加認証していたんです」
「つまり、何時、誰が、何処に行ったかわかるってことね」
「まあ、このゲートを使った人だけですけどね。これを、世界中で管理しているので、結果的にはラクーンの言った通りのことが実現できています」
「それから、外部からのネットアクセスなんかもモニターしています」
「外部からのアクセス?」
「通常ゲートは一対一で対応しているのはご存知だと思うんですが」
「知ってるわよ。だから、人類が行ったことがあるところにしか行けないし、ゲートは片側だけ盗んだりしても好きなところには行けないって話よね」
「ええ、それです。でもどうやって通信していると思います? ワープの様な機能がないと、ゲートの様に通信はできないはずなんですけど。それで利用しているのが、量子テレポートを使った暗号通信です」
「量子テレポートってつまり何よ」
「えーと、詳しくは割愛しますけど、粒子の動きってのは決まっていて、
二つの粒子同士をリンクさせておくことで、離れたところでもリンクした粒子は同じふるまいをするんです。
なので、片方のふるまいを変えてやることで、もう片方を……」
「えーい、既に分かりにくいわ」
「要するにゲートのユニットの中にその粒子が入っているので、お互いに通信しているんです」
「ふむふむ」
「その通信を利用して離れたところから、接続することができちゃっているわけなんですが……」
「本来はそれ以外の通信は受け付けないわけです。
もちろん僕たちユニットの技術者はそれを解除してユニットとつながることができるわけですが」
「はあ」
「というわけで、この新品同様のユニットは工場出荷時から僕と対応するユニットの2つとした通信していないはずなので、他のアクセスがあるはずがないわけで……」
「それが見つかったら、そいつのせいかもしれないってことなのね」
ふむ。大筋では合っているし、細かい説明は今いらないか……。
「最も、今の時代の技術をもってしても、悪意のある第三者がユニットにアクセスなんてできないはずなんですけどね」
「それって犯人は宇宙人ってこと?」
「いえ、それはどうだかわかりませんけど。でも、ここまでされて犯人は宇宙人でした。しかたありませんでした。で解析終わるのは嫌ですよね」
「そうね。誰であろうと徹底的に宇宙の果てまで追っていかないと……」
それはちょっと違うような気もするけれど……。
「というわけで、まずはその解析です。
何かあるのかもしれませんし、何もない可能性のほうが大きいです」
「シエン、EEG(脳波)インタフェースリンク接続、チャンネルをゲーニーに」
「了解です。EEGリンク開始……
コントロールをゲーニーさんに譲渡します」
「ちょっとシエンちゃん止まっちゃったわよ。
ゲーニーくん大丈夫なの?」
「えーと、端末モードで起動してもらっているうえに、シャトルの航行に必要なリソース以外を全てこっちにもらっていますからね。
そりゃ、止まりますね。
シエンはそのための端末でもありますからね」
「さて、ここから、シエン経由でユニットにアクセスしてと……」
「ちょっと、地味すぎて何やっているかわからないわよ。
もっとわかりやすくやってよ」
うーん。ログの解析や接続なんて本来は地味なんだけど。しかたないビジュアルモードで起動してみよう。ちょっと重くなるけれど仕方ない。
「ビジュアルモードON。外部表示機構へリンク、出力ON。
それからラクーンさんのEEGも同時リンク、リードオンリー」
シエンの補助機能を使ってラクーンさんに多少わかりやすいように、表示してもらう。
本来はログのみのそっけないものだが……
シャトル内のコントロールルームが光に包まれる。
本気で3Dの投影を行えばこの部屋くらいはヴァーチャル空間で満たせる。
光の部屋の中には、自分とラクーンさんの二人。
向かいには大きなドアとそのドアの鍵穴が見える。
「このドアがゲートユニットですね。
僕が持っているアクセスキーがこのゲートのへの正常アクセスの方法です。
開けますよ」
まあ、実際は脳内でパスをやりとりするだけだが、こっちのほうが確かに見やすいか……
GUIか……。CUIのほうが使いやすいと思っていたけれど……
ドアが開くと、大きな建物のエントランスよろしく、大きい吹き抜けと両側に階段、そして多くのドアだ。この辺りはシエンのイメージングデバイスでイメージ化しているはずだけど……
シエンのイメージって……なぜロココ調なんだろう。こまか装飾まで見事な再現度だ。
「まあ、ずいぶん立派な建物ねぇ」
「これはシエンがイメージ化しているだけで、実際にはただコンピュータにアクセスしているだけなんですけどね」
「まあ、夢のない子ね~。
いいじゃない、綺麗で」
「……」
ラクーンさんの順応が早すぎて驚く。
やっぱりこの人、何者だかわからないなぁ。
「と、我々が向かうのは書庫ですね。そこにどこからアクセスがあったか記録しているファイルがあるはずです。頼むから変なもの触らないでくださいよ」
一応、権限をリードオンリーにしているはずだけど……
念のためだ……
「外部アクセスログってファイルを探してもらえますか?」
「いいわよ、えっと、これは起動ログね。
あとは……」
「ありました。外部アクセスのログです」
「さきに見つけられちゃったか~。どれどれ?
何も書いてないわね」
「やっぱり、外部からアクセスするなんて不可能ですよね。
このセキュリティ敗れる人間なんて……」
「じゃあ、こっちのログは何かしら……」
えーっとそれは、内部からのアクセスログか……
「接続先のユニットとの通信ログですか……
大したことはしてないと思いますよ。なにせつないだ瞬間にエラーで落ちたわけですからね」
ラクーンさんが通信ログを開こうとするが……。
「ゲーニーくん。これ重すぎるわ。
ちょっと持つの手伝って……」
物理的な重さがあるわけではないんだろうけど、重いってことは情報量の問題か……
「そんな重いはず……」
あった、何だこのデタラメなアクセス量は……
「そんな……
通常では考えられない量のアクセスが……」
出先は接続相手のユニットからを示しているけど、こんな量のアクセスするはずがない。
これは、このユニットを踏み台にして別のところからアクセスされているかもしれない。
しかし、このユニットのパスワードを突破して踏み台にするなんて芸当は今の科学水準では不可能なはずだ。18人いるユニット技術者のうちの誰かか……。
「シエン。この内部アクセスログを解析して発信源を突き止められる?」
「はい。このアクセスからすると発信源は地球、ユーロ南部のポブレ地域ですね」
「そこから先は追える?」
「無理ですね。現地に行けばなんとかなるかもしれませんが……
そろそろ、エウロパ到着ですよ……」
読んでいただき、ありがとうございました。
感想、レビューなどお時間がありましたらお願いいたします。




