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第四話 ゲートをくぐるとそこは火星でした (1)

 ――3D投影モードを終了して、モニタ越しにエウロパが見える。

 さて、どうやって入港したものだろうか。普通にいったら居場所がばれてしまう。

 とはいえ、シャトルは二課のものをつかっているし、入港時には認証とられるし……


 とりあえず、エウロパを目前にシャトルを停止している。エウロパのサーチ網からはギリギリひっかからない程度の位置だ。


 「エウロパを目前にして。どうしたもんですかね。

 あそこにあるゲートをくぐれば月でも地球でもすぐなのに」


 「ちょっと考えがあって、心当たりを呼んでおいたわ」


 「シエンちゃん。このポイントに向かってくれるかしら」


 「了解です」


 「なんですか、このポイントって?」


 …………。


 …………。


 …………。


 シエンちゃん、通信チャンネル3604ね。


 「もしもし私……」


 陽気な女の子の話声だ。録音メッセージか?


 「カッツェ、マオス来てる?」


 「ん? あの二人ですか?」


 「ほーい。ほーい」


 「いいタイミングよ」 


 女の子の声はなくなり、カッツエ、いやマオスか? の声が通信チャンネルから聞こえる。

 なぜ、このタイミングであの二人なんだろうか。


 「ほーい。姉さん」


 「シエンちゃん、ゲーニーくん。

 相対速度合わせ、むこうのシャトルに移るわよ」


 「え? 二課のシャトルは?」


 「とりあえず、この二人に任せれば安全なところに運んでくれるわ」


 「はあ。でもなんでこの二人呼んだんですか?」


 「通るのよ。裏ゲートを。

 それなら、認証もかいくぐれるわ」


 「ああ、なるほど」

 

 なぜ連絡が取れたんだろうか。あの耳打ちにはどんな意味があったんだろうか……。

 相対速度合わせて、マオスがこっちの船に乗り込んでくる。僕たちは向こうの船へと移動した。


 「でも、入港は?」


 「このカッツエが一人で通ります。お三方は隠れていてくだせぇ。

 マオスにはそっちの船の方をやらせまさぁ」


 「まかせてくだせぇ」


 「そんなんで大丈夫なんですか」


 「ええ、特にチェックが入るわけではねぇんです。でもしばらく黙っていてくだせぇ。貨物として入港していただきますんで。入港していただくのは、東3番港でさぁ」


 「あれっ、エウロパの宇宙港東側って2番までではなかったっけ」


 「あら、ゲーニーくん。初めから3港あるわよ。知らなかったの?

 最もあんまり知られてはいないかもしれないけれど」


 「もしかして工業用途の?」


 「そうね。基本は工業用途だけどね。一般での利用は制限されているわけではないのよ」


 「降りてからも危険ですから、しばらくは隠れててくだせぇ」


 そうか、東3番から入港ってことはエウロパでも治安の悪い地域へ入港するということだ。

 生きのいいバイオ二人と最新の人型アンドロイドだ、肝臓がいくつあっても足りない。

 

 裏ゲートの存在自体も都市伝説だとばかり思っていたのに、まさか正規の技術者である自分が裏ゲートをくぐる日がくるとは……


 しかし、無事に月までたどり着けるのだろうか。

 

 「浮かない顔ね。ゲーニーくん。

 ぐちぐち考えているだけじゃ、何も解決しないわよ」


 「おっと、そろそろ静かにしていてくだせぇ」


 エウロパの入港手続きが進んでいる。スキャンとかされないんだろうか?

 まあ、もともと怪しげな宇宙港だし、いろいろと省略されているのか。


 …………。


 …………。


 …………。


 「お三方もう喋っても大丈夫ですよ。

 でも、小声でお願いしまさぁ。このままゲートまで行っちまいます」


 「んもー、窮屈ねぇ。早く出られないの?」


 「ここは本来あんたがた表の人間の来るところじゃないんでさぁ。

 おとなしくしていてくだせぇ」


 「ラクーンさん、ここはおとなしくしておきましょう」


 「そういやぁ。通行料の方は大丈夫なんですかぁ」


 「裏ゲートの通行料って……

 高いんですか?」


 「君のような勘のいいガキは……」


 本来ゲートはどこまで行っても同じというのが売りだ。

 そもそも、ゲート社の社員はただでどこまでも行き来できるのだが。


 「とりあえず、私が立て替えておくわ。

 あとで経費でおとしましょ。もちろんキャッシュで」


 さらりと流したけれど、おいくらなんだろうか……

 事と次第によっては内臓やら腕やらなんでも持っていかれそうだ。

 まあ、ことが解決したら全額経費で落とせるだろう。

 なにせ、あのシャトルが経費で落ちるのだから。

 

 「ちなみに、裏ゲートは表と違ってあまり行き先を選べません。木星圏から地球への近道はまず火星に行ってもらうことになりやす」


 まあ、それはそうだろう。通常のゲートならばエウロパから地球へも行けるはずだが、裏ゲートともなれば行き先は限られてくる。潤沢にゲートペアがあるとも思えないし。 

 とは言え、火星でまたゲートをくぐればいいはずだ。どうせ、一歩プラスになるかどうかの差なのだ、たいしたことはない。


 「まあ、しょうがないですね。火星経由でも問題ないでしょう」


 「さて、そろそろゲートの前です。もう外に出てもらっても大丈夫でさぁ」


 「ふう~。窮屈だったわ。こんな日陰の生活とっとと終わりにしましょ」


 「じゃあ、お三方気いつけて行ってくだせぇ。

 無事を祈ってまさぁ」


 ついて来てくれるわけではないのか……

 火星についたら、アイナ行きのゲートは目の前なんだろうか……

 

 「火星についたら、別の案内人がおりますんで、おらぁここまででさぁ。

 ただ、今ゴタゴタしてるんで気いつけてぇください」


読んでいただき、ありがとうございました。

感想、レビューなどお時間がありましたらお願いいたします。

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