47話 思い出の刃
赫月の盟約——ギルドマスター室。
---
静かだった。
---
白銀の杖は、
まだ淡く虹色に光っている。
---
トールはそれを見つめていた。
---
母。
---
バラガン。
---
知らない事ばかりだった。
---
ローグが椅子へ座る。
---
その目は、
どこか昔を見ていた。
---
ローグ「バラガンはな」
---
静かに。
---
ローグ「昔から無茶苦茶じゃった」
---
リシアが苦笑する。
---
リシア「想像つくな」
---
ローグが笑う。
---
ローグ「わしとあやつで、よく深層へ潜った」
---
ローグ「死にかけたことも数え切れん」
---
トールは黙って聞く。
---
ローグ「その中でも特に無茶だったのが」
---
少し笑う。
---
ローグ「メタルドラゴン討伐じゃ」
---
トール「……メタルドラゴン?」
---
リシアも驚く。
---
B級金属竜。
---
通常の武器では傷すら付かない特殊個体。
---
危険度はA級相当。
---
ローグ「若かったのう」
---
ローグ「二人で突っ込んだ」
---
ユリウスですら呆れたように揺れる。
---
ユリウス「正気ではありません」
---
ローグ「結果、半壊した」
---
リシア「だろうな!?」
---
だが。
---
ローグは笑う。
---
ローグ「それでも倒した」
---
静かに。
---
ローグ「そして」
---
トールを見る。
---
ローグ「その素材で作った」
---
ローグの視線。
---
トールの腰。
---
形見のナイフ。
---
トール「……これが?」
---
ローグが頷く。
---
ローグ「バラガンとわし」
---
ローグ「初めて二人で倒した大物の証じゃ」
---
トールはナイフを見る。
---
ずっと使ってきた。
---
ただの形見だと思っていた。
---
だが。
---
違った。
---
ローグ「本来なら国宝級じゃぞ、それ」
---
リシア「さらっととんでもないこと言うな……」
---
ローグが笑う。
---
ローグ「しかも登録式じゃ」
---
トール「登録?」
---
ローグ「持ち主を記録する」
---
ローグ「だからおぬしと、おぬしの認める者しか扱えん」
---
トールがナイフを握る。
---
不思議だった。
---
確かに。
---
最初から手に馴染んでいた。
---
その時。
---
ローグが立ち上がる。
---
懐から何かを取り出す。
---
白い箱。
---
机へ置く。
---
ゆっくり開く。
---
中。
---
そこにあったのは。
---
白銀の短刀。
---
リシア「……っ」
---
空気が変わる。
---
濃密な魔力。
---
ただ置かれているだけなのに、
圧がある。
---
ローグ「メタルドラゴンの残り素材で作った刃じゃ」
---
トール「……」
---
ローグ「元々はわしの予備じゃった」
---
静かに。
---
ローグ「じゃが」
---
トールへ押し出す。
---
ローグ「今はおぬしの方が必要じゃろう」
---
トール「いや、でも」
---
ローグ「受け取れ」
---
真剣だった。
---
ローグ「バラガンの息子ならな」
---
静寂。
---
トールはゆっくり短刀を取る。
---
瞬間。
---
“ギィン……”
---
魔力が共鳴する。
---
腰のナイフ。
---
白銀の杖。
---
そして。
---
新しい短刀。
---
三つが同時に反応した。
---
ユリウスが目を細める。
---
ユリウス「……面白い」
---
ローグが笑う。
---
ローグ「武器に好かれすぎじゃ」
---
リシア「ほんと意味分かんねぇなこいつ」
---
だが。
---
トールは短刀を見る。
---
暖かかった。
---
まるで。
---
昔から知っているような感覚。
---
その時。
---
白銀の杖が淡く虹色に光る。
---
そして。
---
微かに。
---
以前よりはっきりと。
---
“守ってください”
---
声が響いた。
---
トールの目が見開かれる。
---
今度は。
---
気のせいではなかった。
■ 形見のナイフ
---
■ 分類
シースナイフ
---
■ 素材
・メタルドラゴン素材
・高密度魔鋼
・特殊登録刻印
---
■ 来歴
ローグとバラガン。
---
二人が初めて共闘し、
討伐した“メタルドラゴン”の素材から作られた刃。
---
バラガンが所持していた一本。
---
現在は、
トールへ形見として受け継がれている。
---
■ 外見
---
・鈍い白銀色の刃
・実用性重視のシースナイフ形状
・無駄のない軍用設計
・薄く銀光を放つ
---
■ 特徴
---
B級魔物素材とは思えない強度を持つ。
---
メタルドラゴン特有の:
- 高耐久
- 魔力伝導
- 刃こぼれ耐性
を備える。
---
■ 効果
---
【登録刻印】
所有者を記録。
---
現在登録者:
・トール
---
■ 特徴
・登録者以外は性能低下
・拒絶反応あり
・認めた対象のみ使用許可可能
---
【魔力伝導】
魔力操作時の損失軽減。
---
【高耐久】
通常武器では破損しない攻撃にも耐える。
---
■ 備考
---
トールは長年、
ただの形見だと思って使用していた。
---
だが実際は、
ローグとバラガンの過去が刻まれた特別な刃だった。
■ 受け継いだナイフ
---
■ 分類
カランビットナイフ
---
■ 素材
・メタルドラゴン素材
・高密度魔鋼
・特殊魔力核
---
■ 来歴
ローグが保有していた予備武装。
---
形見のナイフと同時期、
同じメタルドラゴン素材から製作された。
---
現在は、
ローグからトールへ託されている。
---
■ 外見
---
・鈍い白銀色
・通常のカランビットより刃が長い
・流線型の湾曲刃
・高級感のある白銀光沢
---
■ 特徴
---
形見のナイフよりも戦闘向け。
---
ローグの戦闘技術を前提に調整された特殊形状。
---
斬撃・切断・近接制圧に優れる。
---
■ 効果
---
【魔力増幅(微)】
魔力出力を僅かに増加。
---
【耐久強化】
極めて高い耐久性能。
---
【魔力共鳴】
特定武装との共鳴反応。
---
■ 共鳴対象
・形見のナイフ
・白銀の杖
---
■ 備考
---
ローグが正式にトールへ託した初めての武器。
---
単なる装備ではなく、
“バラガンの後継”
として認めた証でもある。




