46話 幼馴染
赫月の盟約——訓練場。
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昼。
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風が吹く。
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トールは白銀の杖を握っていた。
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杖。
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いや。
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武器型魔物。
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まだ実感がない。
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ローグが腕を組む。
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ユリウスは浮遊。
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リシア達も見ていた。
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ローグ「今日から封印解除訓練を始める」
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トール「訓練で解除できるのか?」
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ローグ「無理やりは無理じゃ」
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静かに。
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ローグ「認めさせる必要がある」
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トール「認める?」
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ローグ「武器型魔物は主を選ぶ」
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ローグ「特に上位種はのう」
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ユリウスが頷く。
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ユリウス「力だけでは従いません」
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ローグ「まずは魔力を流せ」
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トールが杖を握る。
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深呼吸。
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魔力を流す。
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その瞬間。
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“バチッ!!”
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トール「ぐっ!?」
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虹色の光が暴れる。
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杖が拒絶する。
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ローグ「止めるな」
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トール「っ……!」
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さらに流す。
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杖が震える。
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白い粒子。
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虹色の光が舞う。
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だが。
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まだ暴れる。
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ローグ「……ふむ」
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ローグがトールを見る。
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ローグ「おぬし、どこまで知っておる」
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トール「何を」
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ローグ「自分の親のことじゃ」
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静寂。
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トールは少し黙る。
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そして。
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ゆっくり話し始めた。
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トール「何も覚えてない」
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トール「気がついたら森にいた。」
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白銀の杖を見る。
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トール「この杖で見るまで母親の事は何も覚えていなかった。」
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ローグは静かに聞いている。
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トール「親父……いや」
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少し迷う。
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トール「森で出会った育ての親はバラガンって名前だ」
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その瞬間。
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ローグの目が止まる。
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ユリウスも反応した。
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リシア「?」
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ローグ「……今、なんと言った」
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トール「バラガン」
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空気が変わる。
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ローグが目を細める。
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どこか。
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懐かしむように。
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ローグ「……あやつか」
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トール「知ってるのか?」
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少し沈黙。
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そして。
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ローグが笑った。
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ローグ「幼馴染じゃ」
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トール「……は?」
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リシアも驚く。
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ローグ「昔はよく暴れておった」
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少し遠くを見る。
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ローグ「無茶ばかりする男じゃった」
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ローグ「強くてな、冒険者からは殲滅の龍と呼ばれておった。」
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ローグ「数々の魔物を共に狩った」
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トールは黙って聞く。
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知らなかった。
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育ての親の過去なんて。
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ローグ「じゃが」
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空気が少し重くなる。
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ローグ「ある日、消えた」
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ローグ「噂では魔王軍へ行ったそうじゃ」
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リシア「魔王軍……」
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ローグが頷く。
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ローグ「そこで」
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静かに。
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ローグ「自らを魔物化したそうじゃ」
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トール「……魔物化?」
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ローグ「半人半魔とは別物じゃ」
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ローグ「完全に魔へ堕ちる禁術」
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ユリウスですら黙っていた。
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ローグ「理由は分からん」
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ローグ「じゃが、」
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トールを見る。
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ローグ「あやつは最後まで情に深く実に人間臭い男じゃった」
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トールは白銀の杖を見る。
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色んな感情が混ざる。
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その時。
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杖が震える。
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優しく。
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今までとは違う。
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拒絶ではない。
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共鳴。
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ローグ「……来るぞ」
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次の瞬間。
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虹色の光が広がる。
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杖の先端。
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淡い魔法陣。
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トール「これ……」
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ユリウスが目を細める。
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ユリウス「封印出力、一部解除」
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ローグが笑う。
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ローグ「ようやく認め始めたか」
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白銀の杖。
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その表面。
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汚れが少し剥がれ落ちる。
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内側から現れる。
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虹色の紋様。
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神秘的な光。
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リシア「……綺麗だ、」
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トールは杖を見る。
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何故か。
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暖かかった。
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まるで。
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ずっと側にいたような感覚。
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その時。
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微かに。
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本当に微かに。
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声が聞こえた気がした。
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“まだ……”
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“足りません”
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トール「!?」
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周囲を見る。
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誰も反応していない。
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だが。
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白銀の杖だけが、
淡く虹色に光っていた。




