34話 異変
赫月の盟約——
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朝。
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ギルド内はいつも通り騒がしい。
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依頼書。
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武器の音。
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冒険者達の声。
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その中をトール達は歩いていた。
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リシア「今日は素材採取だったな」
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トール「珍しい薬草だっけ」
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受付のミリアが頷く。
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ミリア「はい。【蒼月草】です」
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机の上に資料を置く。
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ミリア「中層でしか採れない薬草で、回復薬の素材になります」
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リシア「高いのか?」
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ミリア「かなり」
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即答。
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ミリア「ただ、群生地の近くには魔物も多いので注意してください」
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トールが依頼書を受け取る。
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ミリア「あと……」
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少し迷う。
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ミリア「最近、中層の魔物が少し変なんです」
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リシア「変?」
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ミリア「縄張りが乱れてるというか……」
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首を傾げる。
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ミリア「すいません、上手く説明できなくて」
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トール「分かった」
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依頼受注。
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ヴァルグリム深林——中層。
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森は静かだった。
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ナイトが前を歩く。
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影に溶けるように。
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メタは後ろで揺れている。
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人型。
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今ではかなり自然になっていた。
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リシア「便利だよな、それ」
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メタが少し胸を張るように揺れる。
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トールが周囲を見る。
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気配。
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少ない。
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いつもより静かだった。
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ナイトが止まる。
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低く唸る。
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トール「どうした?」
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その瞬間。
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茂みが弾ける。
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飛び出した。
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牙獣ファングラット。
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だが。
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様子がおかしい。
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目が赤い。
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呼吸が荒い。
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理性がない。
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リシア「なんだこいつ!?」
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突進。
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速い。
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トール「ナイト!」
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ナイトが影から飛び出す。
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風操作。
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加速。
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横からぶつかる。
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牙獣が弾かれる。
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メタが前へ。
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ナイフ。
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斬撃。
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だが。
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牙獣は止まらない。
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血を流しながら突っ込んでくる。
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異常。
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トール「影粘域」
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影が広がる。
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拘束。
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動きが止まる。
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その瞬間。
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リシア。
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剣閃。
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首が飛ぶ。
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静寂。
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だが。
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終わりではない。
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奥。
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さらに気配。
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二体。
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三体。
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本来縄張りが違う魔物。
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それが同じ方向から来る。
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リシア「ありえないだろ……!」
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トールも分かっていた。
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異常。
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だが。
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考えるより先。
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動く。
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ナイトが走る。
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風。
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影。
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翻弄。
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メタが横から斬る。
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トールが拘束。
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リシアが仕留める。
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連携。
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昨日までとは違う。
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役割が噛み合っている。
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短時間。
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殲滅。
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静寂。
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リシアが息を吐く。
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リシア「……なんなんだよこれ」
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トールはしゃがむ。
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魔物を見る。
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その体。
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赤黒い筋のようなものが浮かんでいた。
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血管のように。
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脈打っている。
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トール「……これ」
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メタが近づく。
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体の一部を伸ばす。
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赤黒い結晶。
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魔物の体内から出てくる。
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異様。
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リシア「素材……か?」
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トール「見たことない」
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ナイトが再び唸る。
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森の奥を見る。
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嫌な気配。
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だが。
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今は追わない。
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蒼月草の群生地へ向かう。
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そこには——
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大量の蒼月草。
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本来なら希少な薬草。
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だが。
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異常なほど生えている。
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リシア「……多すぎないか?」
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トールも頷く。
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メタが回収を始める。
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収納。
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採取効率が圧倒的だった。
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日が落ち始める。
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赫月の盟約へ帰還。
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ミリアが目を見開く。
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ミリア「こんな量……!?」
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さらに。
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赤黒い結晶を見る。
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ミリア「それ、どこで……」
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トール「魔物の中にあった」
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ギルド内がざわつく。
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その時。
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奥から杖の音。
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カツン。
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ローグ。
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結晶を見る。
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一瞬だけ。
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目が細くなる。
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ローグ「……面白い物を拾ったのう」
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静かに。
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だが。
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その表情から笑みが消えていた。
■蒼月草と赤黒結晶
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■ 蒼月草
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■ 分類
高級回復薬素材
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■ 生息地
・ヴァルグリム深林 中層
・魔力濃度の高い場所に群生する
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■ 特徴
・青白く淡く発光する薬草
・夜になると月光を吸収するように輝く
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■ 効果
・回復薬の主材料
・疲労回復効果
・魔力回復補助
・解毒作用(微)
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■ 備考
・通常は少量しか採取できない希少薬草
・群生している場合は周囲の魔力環境に異常が起きている可能性がある
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■ 赤黒結晶
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■ 分類
不明鉱石/変質素材
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■ 発見場所
・異常化した魔物の体内
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■ 外見
・赤黒い結晶
・内部が脈打つように光る
・生物の血管のような模様が走っている
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■ 特徴
・微弱な魔力反応を持つ
・通常の魔石とは明らかに異なる性質
・長時間触れていると僅かな圧迫感を感じる
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■ 現時点で判明していること
・異常化した魔物からのみ確認
・縄張り崩壊との関連性は不明
・ギルドでも詳細は確認されていない
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■ 備考
・ローグが反応を示したことから、何らかの危険性を持つ可能性がある
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■ 補足
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今回の異変はまだ“入口”に過ぎない。
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ヴァルグリム深林の奥では、
既に何かが動き始めている。




