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29話 調理と価値

朝。


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街。


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買取所。


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リシアはカウンターの前に立っていた。


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トールはその横。


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足元にはメタ。


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影にはナイト。


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リシア「出せるか」


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トール「うん」


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メタが揺れる。


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収納していた素材が、順に並ぶ。


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皮。


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骨。


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牙。


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肉。


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どれも整っている。


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切り口が綺麗だった。


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無理に剥がした跡がない。


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潰れていない。


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裂けていない。


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受付の男が手を止めた。


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受付「……これ、誰が解体した?」


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リシア「こいつだ」


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リシアはメタを見る。


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受付もメタを見る。


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少しだけ黙る。


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受付「……スライムが?」


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トール「うん」


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短い。


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受付は素材を手に取る。


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皮の端を見る。


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骨の外し方を見る。


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肉の切り分けを見る。


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受付「傷が少ない」


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受付「筋の処理もいい」


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受付「素材が潰れてない」


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リシアは腕を組む。


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リシア「値は?」


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受付が計算する。


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いつもより長い。


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そして金額を出す。


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リシアの眉が、わずかに動いた。


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リシア「……上がってるな」


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受付「当然だ」


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受付「この状態なら上に出せる」


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トールはメタを見る。


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メタが小さく揺れる。


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トール「……使える」


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リシア「ああ」


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短く頷く。


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リシア「これから解体はメタに任せる」


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トール「うん」


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受付はまだ素材を見ている。


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受付「次もこの質で持ってこい。値は出す」


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リシア「覚えておく」


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金を受け取る。


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重みがあった。


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ただの狩りではない。


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解体。


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保存。


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加工。


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そこまで含めて、価値になる。


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トールはそれを見ていた。


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■ 市場


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買取所を出る。


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リシアはそのまま市場へ向かった。


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香草。


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塩。


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油。


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乾いた木の実。


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香りの強い葉。


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見慣れないものが並んでいる。


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トールは立ち止まる。


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リシア「今日は調理もやる」


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トール「調理」


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リシア「ただ焼くだけじゃ限界がある」


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トールは頷く。


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リシア「魔物肉は癖が強い」


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リシア「血抜きができていても、臭みが残る」


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リシア「火の入れ方を間違えると硬くなる」


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トール「じゃあ、変える」


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リシア「ああ」


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リシアは香草を選ぶ。


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青い匂いのする葉。


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少し辛い香りの実。


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粗い塩。


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油。


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リシア「これを使う」


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トールは見る。


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覚える。


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リシア「肉の臭みを消す」


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リシア「脂を活かす」


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リシア「硬さを抜く」


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トール「うん」


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リシアは少しだけトールを見る。


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リシア「お前、食う時は真剣だな」


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トール「大事だから」


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リシア「……そうだな」


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少しだけ、呆れたように言う。


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だが、声は柔らかかった。


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■ 拠点


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夜。


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火を起こす。


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メタが肉を出す。


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今日使うのは、狼系の肉。


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赤みが強い。


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筋が多い。


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だが、メタの解体で形は綺麗に整っている。


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トールはナイフを握る。


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スッ——


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刃が通る。


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余分な筋を外す。


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硬い部分を切り落とす。


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脂を少し残す。


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リシアが横から見る。


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リシア「そこは落としすぎるな」


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トール「脂」


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リシア「焼いた時に香りが出る」


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トールは頷く。


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残す。


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香草を手に取る。


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指で潰す。


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青い香りが立つ。


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鼻に抜ける。


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さっきまでの魔物肉の重い匂いが、少し変わる。


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塩を振る。


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油を薄く塗る。


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香草を擦り込む。


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肉の表面が光る。


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トールは火を見る。


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強すぎない。


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弱すぎない。


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肉を置く。


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ジュウゥゥ……ッ


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音が弾けた。


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脂が溶ける。


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火に落ちる。


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パチッ。


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小さく火が跳ねる。


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香りが広がる。


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最初は青い香草。


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次に脂。


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その奥から、肉の甘い匂い。


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重いはずの魔物肉の匂いが、少しずつ変わっていく。


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臭みではない。


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食欲を引く匂い。


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リシアが顔を上げた。


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視線が肉に止まる。


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トールは無言で焼く。


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表面に焼き色がつく。


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脂が浮く。


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端が少し焦げる。


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香ばしい匂いが強くなる。


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トールは肉を裏返す。


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ジュッッ——


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さらに強い音。


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香りが跳ねた。


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リシアが一歩近づく。


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無意識だった。


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リシア「……さっきより、匂いが違うな」


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トール「うん」


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短く返す。


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肉から湯気が上がる。


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白く。


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ゆらゆらと。


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トールは火から外す。


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少し置く。


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リシア「すぐ食わないのか」


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トール「落ち着かせる」


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リシアは少し黙る。


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リシア「……覚えが早いな」


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トール「食うためだ」


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リシア「やっぱりそれか」


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トールは肉を切る。


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スッ——


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断面。


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中はしっとりしている。


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焼けている。


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だが、乾いていない。


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肉汁がじわりと滲む。


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香草と脂の匂いが、また広がる。


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トールが一切れ取る。


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口に入れる。


---


噛む。


---


肉がほどける。


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脂が広がる。


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香りが抜ける。


---


トール「……うまい」


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いつもの一言。


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だが、今日は違った。


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声が少しだけ深い。


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本当に、うまい時の声だった。


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リシアの喉が小さく鳴る。


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トールはもう一切れ取ろうとする。


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その前に。


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リシアの手が伸びた。


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一切れ。


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取る。


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トールは止めない。


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リシアは少しだけ肉を見る。


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魔物の肉。


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本来、人間は食べないもの。


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だが。


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目の前で焼けたそれは。


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ただの危険な肉には見えなかった。


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湯気。


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香り。


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肉汁。


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焼き色。


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何より——


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トールが、本当にうまそうに食べていた。


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リシア「……少しだけだ」


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そう言って。


---


口に入れる。


---


沈黙。


---


噛む。


---


一度。


---


二度。


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リシアの目が、わずかに開く。


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香草の香り。


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脂の甘み。


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噛むたびに出る肉汁。


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魔物肉特有の強さはある。


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だが、それが嫌な臭みではなく、力強い旨みに変わっていた。


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リシア「……うまい」


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低く。


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小さく。


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だが、はっきり。


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トール「うん」


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リシアはもう一切れ取る。


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今度は迷わない。


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噛む。


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飲み込む。


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その瞬間。


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リシアの呼吸が変わった。


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肩が少し揺れる。


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手が止まる。


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リシア「……来た」


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トール「大丈夫か?」


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リシアは拳を握る。


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指に力が入る。


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足を一歩動かす。


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軽い。


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次の一歩。


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速い。


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リシアはその場で剣の柄に手をかける。


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抜かない。


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だが、分かる。


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反応が速い。


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体が動きたがっている。


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リシア「……身体が軽い」


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トールは頷く。


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リシア「力も少し乗る」


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もう一度、足を動かす。


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リシア「一時的だな」


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トール「すごい、」


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リシアは肉を見る。


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さっきまでの警戒が少し薄れている。


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代わりに、戦士の目になっていた。


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リシア「これなら使える」


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トール「うん」


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リシアは肉をもう一切れ食べる。


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ゆっくり噛む。


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確かめるように。


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リシア「明日、森の奥に行く」


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トールは顔を上げる。


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リシア「Aランク帯がいる場所だ」


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少し間。


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リシア「これだけの実力があるなんて、思いもしなかった」


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トールは何も言わない。


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リシアはメタを見る。


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影を見る。


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ナイトがいる場所。


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それから、トールを見る。


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リシア「メタ、ナイト、お前」


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リシア「それに、この料理」


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短い沈黙。


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リシア「いけると思う」


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トール「Aランク」


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リシア「あぁ」


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リシアは肉を見た。


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そして、少しだけ笑う。


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リシア「正直、魔物肉を食う日が来るとは思わなかった」


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トール「うまい」


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リシア「……それは分かった」


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呆れたように言う。


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だが、また一切れ食べる。


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止まらない。


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トールは火を見る。


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メタが揺れる。


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ナイトは影の中で静かにしている。


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武器。


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解体。


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料理。


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連携。


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全部が繋がった。


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リシア「明日は本気で行く」


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トール「うん」


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リシア「準備しておけ」


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トール「うん」


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火が揺れる。


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香りがまだ残っている。


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リシアは最後の一切れを食べる。


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そして、小さく言った。


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リシア「……ありがとう」


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トールは少しだけ見る。


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トール「うん」


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短い。


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それだけ。


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だが、火の前の空気は。


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昨日までとは、少し違っていた。

■ 料理効果:香草焼きステーキ


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■ 対象

魔物肉(適切に処理・調理されたもの)


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■ 効果時間

約40分〜1時間(個体差あり)


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■ 一時的バフ効果


【筋力強化(中)】

・打撃・斬撃の威力が1.5倍上昇


【敏捷強化(小)】

・移動速度・反応速度が1.2倍上昇


【持久力強化(中)】

・スタミナ消費大幅軽減

・疲労耐性1.5倍上昇


【瞬発強化(微)】

・踏み込み・初動加速が1.1倍上昇


【感覚強化(微)】

・間合い把握・気配察知が1.1倍上昇


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■ 特徴

・正しく調理することで「毒性・臭み」を抑制

・食後すぐに効果発動

・効果は重複せず、時間経過で自然消失

・過剰摂取しても効果は上書きのみ


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■ リスク

・効果終了後、軽い疲労感

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