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18話 思い出

昼。


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火が揺れている。


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肉の焼ける音。


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静かだ。


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トールは手を動かす。


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肉を返す。


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火加減。


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位置。


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もう迷わない。


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(……これくらいか)


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香りが広がる。


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悪くない。


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リシアが座っている。


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何も言わない。


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だが、待っている。


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トール「食えるぞ」


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リシア「……ああ」


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短い返事。


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肉を渡す。


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リシアが受け取る。


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そのまま食べる。


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少しだけ、間。


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リシア「……うまいな」


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トールは少しだけ息を吐く。


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トール「そうか」


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それだけ。


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メタが足元で揺れる。


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トール「お前も食うか」


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小さく肉を落とす。


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メタが取り込む。


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ぷるん。


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リシアがそれを見る。


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リシア「……それも食うのか」


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トール「食うみたいだな」


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少しだけ沈黙。


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リシア「……変わってるな」


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トールは肉を食べる。


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トール「そうかもな」


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否定しない。


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■ 少しの会話


風が吹く。


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火が揺れる。


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リシア「……前からか」


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トール「?」


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リシア「そういうの」


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トールは少し止まる。


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考える。


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トール「……分からない」


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正直に言う。


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トール「気づいたら森にいた」


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リシアの目が少しだけ動く。


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トール「捨てられてたのか、分からない」


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淡々と。


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だが、止まらない。


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トール「そこで——」


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少しだけ、間。


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トール「バラガンに拾われた」


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リシア「……バラガン」


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トールは頷く。


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トール「育ての親だ」


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少しだけ、


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ほんの少しだけ。


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声が柔らかくなる。


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トール「飯くれて、戦い方教えて」


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思い出す。


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火。


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肉。


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背中。


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トール「……強かった」


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短く。


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だが、その一言に全部入っている。


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リシアは何も言わない。


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ただ聞いている。


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トール「……それだけだ」


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それ以上はない。


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沈黙。


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火の音だけが残る。


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リシア「……いいな」


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小さく言う。


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トールは少しだけ目を上げる。


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リシアは肉を見ている。


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リシア「そういうのがあるのは」


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トールは何も言わない。


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だが——


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分かる。


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少しだけ。


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距離が縮まった。


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■ 当たり前


食事が終わる。


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火が小さくなる。


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トールは空を見る。


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(……当たり前だな)


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狩って。


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解体して。


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食って。


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隣に誰かがいる。


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それが、当たり前になっている。


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メタが足元で揺れる。


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トール「……明日も行くか」


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リシア「ああ」


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短い。


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だが——


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迷いがない。


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それで十分だった。


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火が消える。


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静かな時間が、


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ゆっくりと続いていく。

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