第58話 精霊団団長の加護
前回のあらすじ
アーサー王はソシロア領に援軍の要請を申し込むのであった。
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精霊降臨祭から1週間が経ち、シエルたちはソシロア領で唯一被害が少なかった第1主都・ペテルブルクへと食客として招かれていた。
シエルの身体の傷は完治していたもの、心には大きな傷を残してしまい部屋から出てこない日々続いていた。
そんな中各地の被害状況も詳細にわかってきていた。
ソシロア領は完全に疲弊してしまっていた。
色欲が放った新成獣はソシロア領の9主都を襲い、壊滅した主都が8主都あった。
残ったのは第1主都・ペテルブルクだけとなり、生き残った人間たちはここに避難して来ているが、全ての民を受け入れる余裕はなかった。
同じく王族であるレイの母・アナスタシアは意識が無いことを知られてしまうも、ここでひっそりと匿われるように過ごすこととなった。
またマムルーク系も家を失い、アナスタシアと共に精霊教会本部で住むことになった。
【第1主都・ペテルブルク】
ここはソシロア領の中でも始まりの地とされる場所。
元は初代ロマノフ家が治めていた地で水の精霊・ディーネが舞い降りた地でもある。
街の中央には精霊教会の立派な本部があり、教会からは12本の大通りが伸びていて沿うように家が立ち並んでいる。
現在はエクソニム家が治めている。
【教会内部・玉座の間】
玉座に座るのは、現王であるドミトリーと聖女であるユーリだ。
その横には精霊教会の大司教であるイザールもいる。
そして精霊団の正装を見に纏うのは各地を守る騎士団長の面々だ。
王都騎士団団長:マルク・ノヴァコフ
精霊騎士団団長:セルゲイ・ネストル
水の精霊団団長:エヴァ・ミーシン
風の精霊団団長:ジャンヌ
火の精霊団団長:ラシッド
大地の精霊団団長:アブドゥル
「此度は…残念な報告が多かった。兄であるミハエルの死…そして多くの民を失ったこと。だがこうして生き残ってここにいる皆には感謝を述べる」
「えぇ。本当に皆さんが無事で良かったです」
「これより、貴殿らの活動を決定したいと思う。イザールから決定事項を説明してもらう」
「御意に」
ソシロア領の要である第1主都・ペテルブルクを失うわけにはいかない。
マルク団とセルゲイ団は引き続き、ここ第1主都・ペテルブルクの防衛を任されることになった。
そして各地の精霊団は担当の精霊の守護を任されることになったが、それは最少人数ということになった。
世界にいる精霊団に所属する現役の騎士や魔導士たちは1万人程度いた。
ソシロア領には5000人を超える兵士がいたのだが、今回の事件で1000人程度しか生き残っていない。
減ってしまった分は各地の団員から補充するしかなかった。
だがそれに反対する者も中にはいた。
「お待ち下さい。たったの200人弱ですか?それでは魔物が来たときに対処に無茶があります」
声を上げたのはジャンヌだった。
元よりソシロア領に半分以上の団員が存在していて、各地の精霊団の団員の数は1500人程度。
ジャンヌは過去に病魔エピデミルとの闘いで多くの犠牲者を出した経験もあれば、魔物脅威を改めて実感した経験もある。
これを機に街に置く精霊団員の数を増やしていた。
だが200人弱となると街に置く余裕などない。
「確かにジャンヌの言う事もわかるが、こちらとしても各地の主都の奪還もせねばならん。人手が必要になるのだ」
「しかし…」
「仕方ないじゃろ、ジャンヌ。精霊教を守るにはソシロア領が危機に扮していては意味がないじゃろ。精霊様のご加護もあることじゃ」
ジャンヌを慰めているのは、大地の精霊団団長のアブドゥルだ。
アブドゥルに続いて口を開いたのが、火の精霊団団長のラシッドだ。
「ピンチになった、俺がいつでも助けに行ってやるよ」
ラシッドはジャンヌと精霊団の同期で若手のスーパールーキーとして団長を任されている。
「ふむ。では決定で大丈夫だな。少人数でこれまで以上に辛い思いをするが任せたぞ。あとはエヴァだが、預かった精霊団を連れて主都奪還の任務に当たってもらうことになる」
「はっ!」
「ところでドミトリー様、今回の件で何かわかることはないのでしょうか?」
「この事件を起こした根源の者たちのことか?」
「はい」
「その事に関してだが、マルクの方から説明してもらう」
マルクは娘であるアレクサンドルから今回の襲撃事件について詳しく聞いていた。
色欲と呼ばれる変身する悪魔がいること。しかし色欲はレイの話によれば死んだと思うということ。
そして仲間であったルミエールは嫉妬となり、重力を操る悪魔であることがわかった。
「フリア領で暴食と呼ばれる人間が見つかっておるじゃろ?あやつも悪魔とみていいのじゃろか?」
「そうだな。フリア領では原因不明の記憶喪失が発生しているのだとすれば、暴食が悪魔とみて問題はないだろう」
「やはりアブドゥル殿の団員を減らしてしまうのは問題があるのでは?」
「ジャンヌは心配しすぎじゃろ?まだ大した大きな被害は出てはおらぬのじゃ。問題ないじゃろ」
「ジャンヌは心配しすぎですよ。ガイヤ様を守るのは最強の守り人と呼ばれる『トト』です。アブドゥルは暴食の対処に十分当れますよ」
「そういうことじゃて」
しかしジャンヌは不安しかしてなかった。
そして会議が終了した頃に、慌ただしく団員が入ってきた。
「会議中申し訳ありません!アーサー王から手紙です」
「用件はなんだ?」
手紙に書かれていたのは援軍の要請だった。
ブリテン連邦は長い間、1つの王国が反旗を翻してから戦争が絶えない領地になっていた。
「援軍か。しかし我々もこの状況では人員は裂けはできない」
ソシロア領とブリテン連邦は同盟の関係にあった。同盟を結んでいることで魔導具の供給もある。
「アーサー王の依頼は無視はできないな」
「では息子のイヴァンたちと旅の者を派遣してはどうでしょうか?」
「おぉ、その手があるな。よし直ちにここへ連れて来い!」
こうしてブリテン連邦への派遣の白羽の矢が立ったのがシエルたちであった。
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