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精霊の加護 〜Blessing of spirits〜  作者: 荒巻一
第1章 イウロ編〜風の精霊を求めて〜
31/71

第21話 ポーラ地区の加護

前回のあらすじ


 ルミエールの力については一旦見守ることとなった。しかしこれ以上他者にバレるわけにはいかなかった。

 ノストラダムスに新成獣ケロベロスの正体について話すとあばき草と呼ばれるハーブをポーラ地区のシャルシャワ街で貰ってくることになったのだが——

 


※※※※※※


 シャルシャワ街に到着したものの、街は既に死んでいた。建物は崩れ、至る所には死体が転がっていた。アレスがいう異臭とはこのことだ。

 死臭——。それは尋常ではないほどの悪臭を放ち、ガスマスクを着用し、少しでも臭いを抑えるようにしなければ立っていられないほどである。


「ダメ...オェェェェ」


 アレスが吐き気を感じる。


「吐いたらダメよ!我慢して!」


「長居は出来そうにないな。だがこれだと...エラブの爺さんも」


「魔物にやられたしまったのでしょう」


「ハーブだけでも探して急いで帰ろう!」


 街中に漂う死臭の中エラブの家を探し出した。ノストラダムスが言うには、家の庭には巨大なハーブ園があると聞いていたので、すぐにエラブの家を見つけることはできた。

 だが——ハーブ園は大半が枯れていた。


「世話されてなかったから枯れてやがる。どれがあばき草なのかわからないんだよな」


「私はアレスと一緒に中の方を探すわ」


「おう頼んだ!」


 ルミエールはアレスを休めて部屋の中を探すが、この部屋も死臭が漂っていた。


「正直キツいわ...私も吐きそう」


 ルミエールは嘔吐を我慢して部屋中を探し、ある部屋に入った時に嘔吐してしまった。


「オェェェェ...はぁはぁはぁ..こ、これはもしかしてエラブさん...?」


 部屋で横たわり腐敗しているこの男性はエラブだ。エラブの身体には蛆が湧き、蠅が飛び交っていた。

 机の上には一冊の本が置かれていた。ルミエールは手に取って中を覗くと、そこに書かれていたのは日記だった。


—3月25日—

 今日、アテン地区のパルテノ街から精霊教会の人たちや住人が避難してきた。精霊団は魔物の侵攻を止めるためにここを1つの拠点とするようだ。


—3月28日—

 アテン地区が魔物の手に落ちたと報告があった。各地の精霊団も召集されてこの街に止まっている。街の人々はすぐに避難の準備を始めるも私にはハーブ園があるから避難はできそうにない。


—3月29日—

 魔物がこの街に攻め込んできた。精霊団も街を守るために抵抗してくれているが魔物の猛攻が激しいようだ。


—3月31日—

 街は死んだ。ワシもここで死ぬことに決めた。


日記はここで止まっていた。


「アテン地区はもう魔の手に落ちたって...そんな!?」


 この街に来た日付は4月14日。

 目的地にしていたアテン地区が魔の手に落ちてから2週間以上経っている。


「でも私たちがまだ呼吸が出来るってことは風の精霊は死んでないってことなのよね」


 そう、アグライアが言っていたように風の精霊が死んでしまえば、人間の呼吸という機能の守護は無くなり全人類は呼吸不全で死ぬ。


「とりあえずこれは報告しないとダメだわ!」


 ルミエールは日記からアテン地区が既に魔の手に落ちってしまっていることを知る。しかし風の精霊は今のどこかで生きてる。

 一方、シエルはというと——


「とりあえず枯れてないハーブの葉を片っ端から摘んで帰るか?」


「枯らしてしまうには非常に勿体無いですね。枯れてない木の枝を持って帰りましょう。あの老人でしたら、このハーブを復活させる力を持ってそうですから」


 アグライアの言われた通りにシエルは枯れてない木の枝を持ち帰ろうとした。


「この中にあばき草があればいいんだけど」


「この街にもう用はありませんね。急ぎ出ましょう。魔物が出来てもおかしくないです」


「あぁ...そうだな」


 ルミエールがアレスを連れて家の中から出て来た。


「なんか見つかったか?」


「エラブさんは死んでたわ。あとアテン地区は魔の手に落ちてるの」


「なんだって!?」


「ですが、貴方たちが生きてるということはヴァンも生きてる証拠。これは急いだ方がいいですね」


 シエルたちはシャルシャワ街を後にし、レスト街に急ぎ向かった。

 日が暮れた頃にレスト街に着くとシエルたちはノストラダムスにシャルシャワ街の惨状を伝えた。


「惜しい男を亡くしたわい。この枝で苗木が作れるかわからんがやってみるしかないの」


「あばき草はどれかわかるのか?」


「これじゃ。この葉の匂いを嗅げば今は人間の姿をしていても、魔物に姿に戻りよるわ」


「でもどうやって嗅がせるつもりなんですか?」


「あばき草の香りだけを抽出した芳香剤を作って街中にばらまくのじゃ。明日にでも完成させる。今日は休んでくれてかまわん」


 ノストラダムスは芳香爆弾という街全体に匂いが行き渡る薬剤の作成に取りかかた。

 シエルたちは休みに入った。


「明日に魔物を討ったらすぐにアテン地区に行った方がいいな」


「でもアテン地区は魔物の手に落ちたのよ?危険よ」


「精霊が生きてんなら行くしかないだろ?


「ポーラ地区から行かないでよ」


「アレスがぐったりしても困るからな...ブルチョア地区を経由してアテン地区に行くか」


 アテン地区は西にポーラ地区、東にブルチョア地区、北にアニマ地区があるが、ポーラ地区とブルチョア地区からしか入れないようになっている。


「ポーラ地区があんなだったからブルチョア地区も心配ね」


「そこに精霊がいればいいんだけどな」


「その可能性はあると思います」


「どうして?」


「精霊教会の風の本部があるということはヴァンも守られてるはずです。いるとしたらまだ訪れていないブルチョア地区のどこかです」


「僕の加護もわかるのかな?」


「ヴァントの魂を持っていればヴァンは反応すると思いますよ」


「アレスが戦えると楽になるかもな」


「風の加護は攻撃型ですからね。さぁもう休みましょう」


 3人は深い眠りについた。

 


※※※※※※



〜ブルチョア地区・野営陣地〜


「姫様!どうすれば?」


「クソ!これ以上の進行を許すワケにはいかない。ソシロア領に侵入されては精霊団の恥だ。それにヴァン様も次こそはやられてしまう。死んでも食い止めろ!」


「了解した!」


 ブルチョア地区は今も激しい交戦が続いていた。


ご覧頂き、誠にありがとうございます。

評価やコメントなど頂けると嬉しいです。

改稿しておりますが引き続き『精霊の加護』を宜しくお願い致します。

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