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究極の防具って知ってますか?そうビキニアーマーですね。  作者: チラミン


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17/20

旅の新しい仲間

朝。

木々の隙間から差し込んできた光に、リーネアは目を細めながら目を覚ました。


「……ん……」


昨夜まで燃えていた焚き火はすっかり消えている。

隣では、すでにヴィーゴが起きていた。


「おはようございます、リーネア」

「おはよう……」


まだ少し眠そうな声で答えながら、リーネアは身体を起こした。

初めての野営。

地面はベッドとは比べものにならないくらい硬かったし、夜中には何度か物音もした。

それでも、不思議と嫌な感じはしなかった。

むしろ、昨日の夜に感じた「旅をしている」という実感が、朝になってさらに強くなっていた。


「よく眠れた?」

「それなりに」

「私は意外と寝られたかも」

「それならよかったです」


ヴィーゴはそう言いながら、火を起こした場所を片付けていた。

使った薪の残りや、食事の跡をまとめ、地面を軽く整えていく。


「野営って、後片付けもするんだね」

「当然ですよ」

「冒険者っぽい……」

「昨日からずっとそれですね」

「だって楽しいんだもん」


リーネアは笑いながら、自分の荷物を背負った。

二人で寝床を片付け、忘れ物がないか確認する。

それが終わると、二人は再び街道へ戻った。

朝の空は澄んでいて、昨日と同じように雲が少ない。

街道にはすでに何台かの荷車が行き交っていた。


「今日はどこまで行けるかな」


歩き出しながら、リーネアが前を見た。


「予定通りなら、フェルドドルフに向かって進みます。途中で水場が見つかったら、補給もしておきたいですね」

「うん」


昨日よりも、少しだけ旅の歩き方に慣れた気がする。

そんなことを思いながら歩いていた、そのときだった。


「……ん?」


前方から、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

リーネアが目を細める。


「何か揉めてる?」

「どうでしょう」


二人は歩く速度を少し上げた。

街道の先。

そこには数台の馬車と、困った様子で行き来する人たちがいた。

一台の馬車が道の脇で止まっている。

よく見ると、後輪の一つが大きく傾いていた。


「車輪が壊れてるみたいですね」


ヴィーゴが言った。

近づくと、行商人らしい男が頭を抱えていた。


「どうするんだよ、これ……」

「別の馬車に積み替えるにも荷物が多すぎるぞ」

「このままじゃ今日中に次の宿場まで行けない……」


二人が近づいていくと、商人の一人がこちらに気づいた。


「おや、旅人かい?」

「はい」


ヴィーゴが答える。


「何か困っているんですか?」

「見ての通り、車輪をやられちまってな」


商人は壊れた車輪を指差した。


「荷物を別の馬車に移そうにも、積みすぎててとてもじゃないが運びきれない。かといって、この場でどうにか修理するにも手がなくてな」

「……」


ヴィーゴは馬車をじっと見た。

それから、自分の背負っている大きな荷物を見る。


「もしかしたら、僕に手伝えることがあるかもしれません」

「え?」

「ちょっと見せてもらっていいですか?」

「もちろんだとも」


商人に案内され、ヴィーゴは馬車の車輪を調べ始めた。

しゃがみ込み、壊れた箇所を指で触れる。

木材の一部が割れ、固定具も外れている。

ヴィーゴはしばらく無言で状態を確認していた。


「完全に壊れたわけじゃないですね」

「本当か?」

「ええ。ちゃんとした修理は工房でやったほうがいいですけど、これなら応急処置はできます」


そう言うと、ヴィーゴは背中の荷物を降ろした。

リーネアは、その中身を見て納得する。

革、工具、金属部品、布、糸。

まるで小さな工房を丸ごと持ち歩いているようだった。


「そんなものまで持ってるのか……」


商人たちが驚いた声を上げる。


「こんな道具を持って旅してる人なんて、なかなかいないぞ」

「職業柄、必要なので」


ヴィーゴはそれだけ答えると、工具を取り出した。

小さな金槌。

やすり。

穴あけ用の道具。

それから予備の金具。

手慣れた動きで割れた部分を整え、壊れた金具を外す。

木材に新しい穴を開け、そこへ補強用の部品を取り付けていく。

時折、車輪を回しながら位置を確認し、ほんの少しだけ締め直す。

リーネアは少し離れた場所から、その様子を眺めていた。

剣を振っているときとは、まるで違う。

けれど、どちらのときもヴィーゴの動きには無駄がない。


「……こういうときのヴィーゴ、かっこいいかも」

「何か言いました?」

「何でもない」

「そうですか」


作業を続けることしばらく。

最後にヴィーゴが車輪を軽く叩いた。


「これで大丈夫です」

「本当か?」

「走れる程度には。あくまで応急処置ですから、フェルドドルフに着いたらちゃんとした修理をしてください」

「おお……!」


商人たちはさっそく車輪を確認する。

馬車を少し動かしてみると、先ほどまで大きく傾いていた車輪が、しっかりと回った。


「助かった!」

「これなら荷物を運べる!」

「ありがとう! 本当に助かったよ!」


商人の一人が何度もヴィーゴの肩を叩いた。


「修理代はいくらだ?」

「いえ、いりません」

「え?」

「お互い助け合いですから」


ヴィーゴは使い終わった工具をしまいながら答えた。


「僕たちも旅の途中ですし、こういうことで誰かの役に立てるなら、それで十分ですよ」

「いやいや、さすがにタダってわけにはいかんだろう」

「でも本当に――」

「なら、昼飯を一緒に食べていかないか?」


商人がにっと笑った。


「もうすぐ昼飯の時間だ。ちょうど支度を始めるところなんだ。修理代の代わりってことでどうだ?」


ヴィーゴは少し考えた。


「……そこまで言っていただけるなら」

「決まりだな!」


それからしばらくして、昼が近づいてきた。

馬車の周りでは商人たちが昼食の準備を始めていた。

薪に火がくべられ、鍋が置かれる。

肉が焼ける香ばしい匂い。

炒めた野菜の匂い。

そして、焼いたベーコンの香り。

リーネアが鼻を動かす。


「おいしそう……」

「昨日よりしっかりした食事になりそうですね」

「修理してよかったね、ヴィーゴ」

「食事が目的じゃないですよ」

「分かってるって」


やがて料理が出来上がり、二人の前にも皿が置かれた。


「じゃあ、いただこうか」

「いただきます」


二人が食事に手を伸ばそうとした、そのときだった。

草むらが、がさりと揺れた。


「……?」


リーネアが振り向く。

がさっ、がさっ。

今度はもっと近い。


「ヴィーゴ」

「はい」


二人はすぐに反応した。

リーネアが椅子から立ち上がり、剣に手を伸ばす。

ヴィーゴも素早く腰の剣を抜いた。

草むらが大きく揺れた。

そして――

「ぴょんっ!」


「……え?」


飛び出してきたのは、一匹の小さなモンスターだった。

体長は二十センチもない。

丸く大きな耳。

細長い尻尾。

柔らかそうな毛並みは、陽の光を受けてわずかに艶めいている。

小さな身体で地面を駆けてきたそれは――

ヴィーゴの横を素通りした。


「……」

「……」


二人は固まった。

小さなモンスターは、そのまま一直線に料理のほうへ向かっている。


「……えっと」


リーネアが剣を構えたまま呟いた。


「こっち来ないんだけど」

「そのようですね……」


モンスターは料理の匂いに夢中なのか、ヴィーゴたちには目もくれない。

そして、焼いた肉の置かれた皿の前で立ち止まった。


「おい、お前さん!」


商人が声を上げる。


「そいつはイトネズミだな」

「イトネズミ?」


リーネアが聞き返す。


「小さなネズミ型のモンスターだよ。布や糸、革なんかを巣材にするんだ。食べるわけじゃない」


商人は笑った。


「魔力のこもった素材なんかは特に好きらしい。まあ、基本的に人を襲ったりするようなモンスターじゃない。危険を感じると毛を逆立てるくらいだ」

「へえ……」


リーネアが剣を下ろす。

イトネズミはというと、料理の皿をじっと見つめたままだった。

ヴィーゴは少し考える。


「食べ物に興味があるんでしょうか」

「匂いにつられたんだろうな」

「なるほど」


ヴィーゴは皿の中のベーコンを一切れ見た。

そしてそれを小さく切る。


「これならどうかな」


そっとイトネズミの前に置いた。

イトネズミが鼻をひくひくさせる。

くんくん。

そして――


「ぴゅいっ!」


嬉しそうな声を上げて、ベーコンへ飛びついた。

小さな前足で押さえながら、夢中で食べ始める。


「……かわいい」


リーネアの顔が一気に緩んだ。


「すごい勢いで食べてる」

「よっぽどお腹が空いてたんでしょうね」


ヴィーゴも思わず笑う。

一切れを食べ終えたイトネズミは、今度はヴィーゴの手元を見つめる。


「……」

「もう一枚ですか?」

「ぴゅい」

「意思疎通できてる……」


リーネアが笑い出す。

ヴィーゴはもう一切れだけベーコンを分けてやった。

それを食べ終えると、イトネズミは満足そうに身体を丸めた。

そして、まるで当然のようにヴィーゴへ近づいてくる。


「ん?」


ヴィーゴが手を差し出す。

イトネズミはその手に前足を乗せ、そのまま腕を登っていく。

肩まで登ると、くるりと丸まった。


「……懐かれましたね」

「どうして私じゃなくてヴィーゴなの?」

「さあ……」


次の瞬間、イトネズミはヴィーゴの荷物へ向かって身体を伸ばした。

布。

革。

糸。

そこから漂う、さまざまな素材の匂い。

イトネズミは鼻を動かしながら、荷物の中へ入り込んでいく。


「ちょっと待ってください」


ヴィーゴが慌てて止めようとする。

しかしイトネズミは、柔らかな布の間へ潜り込むと、そのまま丸くなった。


「……寝た」


リーネアが覗き込む。


「本当に寝てる」

「なんで僕の荷物なんですか……」


ヴィーゴが困ったように呟く。

商人たちはその様子を見て笑っていた。


「イトネズミは気に入った場所を見つけると、なかなか離れないぞ」

「布や革が好きなんでしたっけ」

「そうそう。あんたの荷物、あいつからしたら宝箱みたいなもんだろ」

「……困りましたね」


そう言いながらも、ヴィーゴの声にはそれほど嫌そうな響きはなかった。

むしろ、眠っているイトネズミを起こさないように、荷物の中の布を少し整えている。


「ヴィーゴ」

「何です?」

「飼うの?」

「飼うっていうか……」


ヴィーゴは荷物の中で丸くなったイトネズミを見る。


「もう勝手に住みついてますよね、これ」

「ふふっ」


リーネアが肩を揺らして笑った。


「じゃあ決まりだね」

「何がですか」

「かわいい旅のお供ができちゃった」


ヴィーゴは返事をせず、荷物の中から小さな頭だけを出して眠っているイトネズミを見つめた。


「……まあ」


小さく息を吐く。


「旅の邪魔をしないなら、いてもいいですけど」


その言葉を聞いたように、イトネズミが小さく鼻を鳴らした。


「ぴゅい……」

「ほら、返事した」

「たまたまですよ」

「絶対分かってるって」


昼食の途中に始まった小さな騒動は、それからしばらく続いた。

そして、食事を終える頃には、イトネズミは完全にヴィーゴの荷物を寝床にしていた。

二人は商人たちに別れを告げ、再びフェルドドルフへ向かって歩き始める。

街道の先。

南へ続く道。

そして、ヴィーゴの荷物の中には、新たな小さな旅の仲間。

ヴィーゴは歩きながら、背中に感じる荷物の重みを少しだけ気にしていた。


「……どう考えても、これから荷物が増えますよね」

「うん」


リーネアは楽しそうに笑った。


「でも、ちょっと楽しみじゃない?」


ヴィーゴは少しだけ考えてから、苦笑する。


「……まあ、そうですね」


二人と一匹は、ゆっくりと街道を進んでいった。


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