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第一章 王を喰う
処刑兵たち全員の体が、同時に強張る。
肩を押さえるやつ。腕を抱くやつ。膝をつくやつ。
体内の骨が、その声に引かれて軋んでいた。
レグも右脚に熱を感じた。
灰喰いの脛骨が、これまでにないほど強く震えている。
前だ。
来る。
闇の奥で、白いものが二つ浮いた。
目じゃない。
角だ。
夜より黒い巨体が、ゆっくりと谷へ頭を差し入れてくる。
背に並んだ脊椎だけが、月もないのに白く光っていた。
その姿を見た瞬間、ジンの笑みが消えた。
バドが槍を下ろす。
ドグが顎を噛み締める。
ガロウだけが、大剣を握り直した。
ロアが、初めて一歩後ろへ下がった。
黒角王獣。
まだ遠い。
それなのに、谷の空気がもう、あいつの喉の中みたいだった。
レグは喉の奥に鉄の味を感じながら、死んだ骨鳴針を見下ろした。
王ではない。
そんなもので済む相手じゃない。
それでも、命令は変わらない。
前へ出ろ。削れ。死ね。
ガロウが低く言った。
「行くぞ」
その一言で、部隊は動いた。
レグも足を出す。
自分の右脚の骨が、誰より先に、あの化け物のズレを拾っているのを感じながら。
白い谷の奥で、黒角王獣がもう一度鳴いた。
今度は、少し笑った声に聞こえた。




