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第一章 王を喰う
ガロウの両肩は歩くたびわずかに軋んでいる。
革鎧の下、肩口だけが不自然に膨らんでいた。岩砕骨が熱を持っている証拠だ。今日の体調は良くない。左肩の方が特に悪い。踏み込みの直前、ほんのわずかに左が遅れる。
レグは目を逸らした。
見ても意味はない。知ったところで、自分がどうにかできる話でもない。
「おい、レグ」
横を歩いていたジンが、にやついた顔で覗き込んできた。
頬の細い傷跡が、笑うたび引きつる。
「足骨ひとつのハズレ野郎。おまえの針はどう鳴ってる?」
「いつも通りだ」
「屑のままか」
「そうだな」
ジンは喉で笑った。
両前腕に埋め込まれた裂腕骨のせいで、こいつの腕はぶら下がっている時ほど怖い。力んだ瞬間にだけ、急に切れる。今も指先はぴくりとも揺れていないのに、肘から先だけ妙に静かだった。感覚が死に始めている。
「今回の相手、王反応だぞ。屑骨のおまえじゃ、鳴き声だけで膝つくかもな」
「おまえはその前に腕がもげる」
「は。言うようになった」
横から黒い影が抜けた。
バドだ。
槍を担いだまま、列を追い越して前へ出る。
胸の奥が笛みたいに鳴っていた。吸う息が浅い。貫鳥骨の加速を何度も使いすぎた時の音だった。
「前」
それだけ言って、バドは谷壁へ視線を走らせた。
次の瞬間だった。
右の斜面から、白い塊が三つ落ちてきた。




