66:双子の妹は自責の念に駆られる
寝室から遠ざかっていく、小さな足音。
扉から離れるにつれて、その足音は次第に速まり、荒々しさを増していく。
最後には荒い息づかいと共に、全力で駆けて行った。
そうして自分の部屋に飛び込んでは、閉めた扉に寄り掛かる。
「はぁ……っ」
荒く息を吐いたコーデリアは、うるさく鳴り響く鼓動を抑えるので精一杯だった。
ディアナの泣き声が、今も耳にこびり付いて離れない。
いつも落ち着いていた、頼れる姉。
誰よりも強い女性だと思っていた。
そんな姉が、子供のように泣きじゃくっていた。
それ全て──コーデリア自身がもたらしたことだったのだ。
(私が……私が、ディアナを流産させて、そして殺したというの……?)
今のコーデリアにとっては、とても信じがたいことだ。
長年一緒に居た、魂の片割れ。
共に育ってきた、大事な姉。
(嘘よ、私が──私が、ディアナをそんな目に遭わせるはずがない!)
否定したかった。
違うと叫びたかった。
しかし──それ全て、エルドレッド公爵クライドによって洗脳が解けた今だからこそ言えることだ。
正気を取り戻す前の自分であれば、何をしでかすか分からなかった。
そのことは、操られていたコーデリア自身が、一番よく知っている。
曖昧な記憶の中、ぼんやりと浮かぶのは、悍ましい感情ばかり。
良く出来た姉が、憎かった。
何でも出来る彼女が、疎ましかった。
一人、幸せを手に入れた姉が──羨ましかった。
「あぁ……」
自分の醜さを、まざまざと見せつけられた気分だった。
操られていたのは、確かなのだろう。
でも……本当に、洗脳されていただけだったのか。
心の奥底に、姉を妬ましく思う気持ちがなかったとは言い切れない。
何より──己の行いによって、姉を傷付けてしまったことは間違いようのない事実だ。
「あああああぁぁぁぁ!!」
コーデリアの唇から、言葉にならぬ声が迸る。
思い出すのは、洗脳が解けた後の、姉の言葉。
『酷いことなんて、されてないわ……今の貴女には、ね』
あの時は理解出来なかった言葉が、今なら分かる。
卒業式典以来、ディアナに避けられている気がして、面白くなかった。
内心、拗ねてもいた。
でも、そうではない──ディアナは、自らの身を守る為に必死だったのだと、理解してしまった。
回帰前のコーデリアにそれほどの目に遭わされたから、ずっと自分を敬遠し続けてきた。
警戒し、敵視していた。
水臭いなどと言う資格はない。
クライドから治療を受けなければ──行為は、もっとエスカレートしていただろうから。
扉の前で、力なく頽れる。
(ディアナのあんな姿、初めて見た……)
同じ時を過ごしてきた双子の自分でさえ、見たことのない姿。
狼狽し、声を荒らげ、泣きじゃくるディアナ。
彼女をそうまで傷付けたのは──コーデリア自身なのだ。
(私は……私は、一体どうしたら……)
誰に問うでもなく、コーデリアは一人自らの肩を抱いて蹲った。









