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1/2のプリンス&プリンセス  作者: マツモトコ
森羅の國編
60/98

60、被害発生

 私のせいでフリケルの恋バナが中断されてしまった事にいすずが憤慨する。


「もう終わりですか!?もっと聞きたかったー!」

「いや、聞き苦しい話をしてしてしまったな。悪い」

「せめて何で【終極の願い】をその人との恋の成就のために使わなかったのか理由を教えてください!また会いたいって思わないんですか?ねぇナノノ、ナノノも気になるよね!?」


 同意を求めていすずはナノノに声を掛ける。


「……」

「何?よく聴こえないや。同時通話のせいかな?ごめんけど、もう1回教えて?」

「…待って。なんか音声がさっきより良くなってねーか?」

「え?」


 それが一体どうしたと言うのだろうか。

 マリルドの言葉に私といすずは顔を見合せ首を傾げる。


「もしかしてナノノとの通話が切れてしまってるんじゃねーか…?」


 ナスポクが同時通話は多く繋ぐ程、音声は悪くなると言っていたような。

 しかし微々たる差で私にはその違いは分からない。


「…おい!ナノノ!寝たのか!?」

「おっさんナノノに通話を繋ぎ直してくれ。それからモウに連絡が付くか試して」

「あぁ」

「嘘だろ!?モウも眠らされてるかも知れねーのか!?師匠俺も2人に連絡する!」


 突然の事態にいすずと私はぽかんとする。


「ダメだ。何度やっても魔法が途切れる。モウにもナノノにも繋がらないな」


 現在時刻は午前11時30分。


「それって…」

「フリケルより各員!東北東、及び南東ポイントに配置の2名が黒マジョさん影響下にあることを確認!予測されていた地点より東南東に黒マジョさんは居る模様!動ける者は全員N地帯(ノベンバーライン)へ向かえ!」

「お、黒マジョさんの所在地が絞れたってことはワタ達は解放されるってことだな?」


 非常事態を全ての仲間に伝えるフリケルの様子を一切汲み取る事なく、うきうきとマリルドは出國の星を寄越すように催促する。


『おめでとうございます。まともに眠れない日々から遂に解放されますね』


 あ、そか。

 それは嬉しいな。

 私もいすずと喜びを分かち合おうとするが、いすずは顔を青くしている。


「モウとナノノ…眠らされたと…?ねぇ、大丈夫とかいな!?」

「だいじょーぶだって。後の処置はおっさんとおっさんの仲間に任せておけばいいって言ってたじゃねーか。お、約束通り出國の星も宿ったな。やった、(ようや)く解放されたぁ。なぁ、どうする?すぐに移動を開始したい?ワタはとりあえずガッツリ寝たい」

「私も」

「…それはわたもそうやけど…」


 モウとナノノには申し訳ないが、私にもいすずにも出来る事はもう何1つ無い。

 私達が出向いてもフリケル達の作戦の足並みを乱すだけだ。

 一観光客である私達は指示に従い、規律を乱さない事に従事するのがベストだ。

 こういう場面で作戦の意図や全容が理解出来ていない者が出娑張(でしゃば)ると作戦が失敗に終わるものだもん。

 まぁ、私が過去に観た映画で得た知見に過ぎないけど。

 映画では足を引っ張る駄目キャラが存在するお陰で物語は盛り上がる訳だからその存在は好きではあるけれど…私自身は波風立てず、平穏に生きることに専念したい。

 それにもう私達が起きている必要性はないのだから()にも(かく)にも今は思う存分熟睡してしまいたい。

 フリケルもそれで良いと考えているのだろう。

 私達との通話は切ってはいない様子だが何も口出しはしない。


「お前ら本当に人でなしだな!もういい!俺は1人ででも助けに向かうからな!」

「あら?ナスポクは助けに行くの?黒マジョさんが近くに居るかもしれないんだよ?黒マジョさんの正体が人間かどうかも分からないって言うのに大丈夫なの?」


 引き止めるつもりはないけれど、忠告だけはしておく。


「ほっとけよイサナ。茄子は本当に人間が浅いなぁ」

「うるせぇブス!」

「いすずはどう思う?助けに行こうとするナスポクは勇気ある者か、それとも愚か者か」

「えーと…おろか」

「だよな」

「こらこら。あんまり煽るとナスポクが身の危険を感じても逃げ出しにくくなっちゃうよ」

「そっか、ごめんね。ナスポクは普通の人やもんね」

「『普通』ってどういう意味だよ。お前ら、俺の事舐め腐ってるよな。俺は3年間戦闘の國に居たんだぞ」

「それがどうしたってんだよ。今はモウの尻を追いかけ回してるただのクソヤローだろうが。まぁ黒マジョさんから助け出せたらお前は間違いなくヒーローだろうな。期待してないけどがんばれよ」

「マリルドてめぇ、次会ったら一発殴らせろ」

「殴り返してもいいならいいよ」


 侠気(おとこぎ)を見せようと気合いの入るナスポクにモウとナノノの事はお任せする事にして私達3人は薄情ながらも昼寝をする事に決めた。


 しかし、好きなだけ寝られるという喜びで私の目は冴えてしまっていた。

 布団に入ってもうすぐ1時間が経つと言うのに未だに眠れない。

 遠足の前日に眠れない子供の様だ。

 念のために繋いだままにしている通話魔法からはマリルドといすずの寝息と森を抜けようとするナスポクの暑苦しい息切れが聴こえる。


『遠足前日症候群ですね』

「そんなのがあるの?」

『眠れない時にはストレッチが効果的だそうですよ。試しますか?』


 うん、とワルサーに返事をしようとした時。

 小指の通話魔法からマリルドの叫び声が聴こえてきた。


「何なんだよ!?離せ!何するんだよおっさん!!」

「…えっ?何?どうしたのマリルド」

「悪いな。前にも言っただろう?君の身体能力は使える。今暫く協力して貰いたい」


 どうやらフリケルはマリルドの監視エリアの直ぐ側に控えて居たらしい。

 フリケルはマリルドから家付き虫の召喚許可を剥奪して熟睡中のマリルドを家から吐き出させ、縄で捕縛して風の絨毯で連れ去っているようだ。


「約束と違うだろうが!離せよ!」

「約束は守ったさ。出國の星は全員に与えただろう?悪いが手を貸して欲しい。これは依頼だ。君の言い値で対価もきちんと払う」

「ふざけんな。だったらちゃんと正式な手順を踏んで依頼しろよ」

「君はモウが心配ではないのか?黒マジョさんから半径50㎞圏内に居る者は24時間眠らされると言ったが、目が覚める時間にはばらつきがあるんだよ。魔法発動時により黒マジョさんの近くに居たものから先に目が覚める。モウより先に猛獣が目覚めるかもしれないんだ。君にあの子の事を守って貰えると助かる」

「…なんだそれ。もしワタ達全員が眠らされていたらどうするつもりだったんだよ」

「各員各々に1人ずつ、各エリア外に吾の仲間を付けていたんだよ。ナスポクも今頃俺の仲間が確保しているさ。アイツの体力と実力では闇雲にジャングルを動き回って遭難するだけだからな。ナノノとモウの2人を守る(フォロー)予定だった吾の仲間は眠らされている様子でな、イサナ達に付いていた仲間をナノノの元に向かわせている。モウの保護には吾が向かうことになったが吾はこの國の数少ない戦闘要員でもある。眠るモウを連れて黒マジョさんの元に向かうより、君に護衛を任せた方が安心だと思ってな」

「…しゃーねーな。おっさんの魔力の全てを対価に引き受けてやるよ」

「マリルドそれはぼったくり過ぎじゃない?」


 マリルドとフリケルのやり取りを静かに聴いていた私だったが、マリルドの容赦の無さに思わずツッコミを入れてしまう。


「構わないよ。吾の準備不足のせいで若者を巻き込むんだ。それが筋だろ」

「フリケルさんって割りと任侠を貫く人ですよね。義理人情に厚いと言うか…弱い者に優しい」

「ははは!買い被りだな。吾は本当はイサナも道連れにしたかったんだよ。けれど時間がないし、持病があるいすずを1人にする訳にはいかないんだろ?」

「そうだよイサナ。今だってワタは簀巻(すま)き状態にされてんだよ。人情があるヤツがする事じゃねーよ」

「文句言うなよ。あと75分もすればモウの居場所に辿り着く。頼むから大人しくしていろよ」


 フリケルはそう言っていたけれど、約束した時間に辿り着いた地にモウの姿はなかった。

 この地点に辿り着く道中、近隣に住む生物が軒並み眠らされているのを見てきたので当然モウもここで眠りに就いていると考えていたフリケルに焦りが見える。


「アイツ1人で先に逃げ出したんじゃねーの?」

「いや、見張りも付けていたからそれはない」

「しゃーねーなぁ。探してやるか。だからこの縄を(ほど)いてワタの脚力向上魔法の使用許可を出せよ。自分(ワタ)の足で走った方が速い」

「あぁ、わかっ」

「あ、だめです。マリルドの脚力は地形を壊します」


 危うくフリケルが脚力向上魔法の使用許可を出そうとするが、それを私が止める。

 地形を変えてしまったら折角手に入れた出國の星を剥奪されてしまう。


「…チッ。じゃあ魔法は使わねぇよ。地面を削り飛ばさないように手加減して走る。おっさんは黒マジョさん対策に向かえよ」

「…信じていいのか?」

「うはは!おっさんがワタを信用できない気持ちはわかるけどな。ワタは絶対報酬を貰っておっさんを丸坊主にしてやるつもりだから楽しみにしてなよ」


 フリケルは呆れ笑いながらマリルドの拘束を解く。

 自由になったマリルド笑みを浮かべて風の絨毯から飛び降りる。

 しかし──…マリルドはまたしても拘束されてしまう。


「はぁ!?」


 意味が分からないと憤慨し、マリルドは風の絨毯に乗るフリケルを(かえり)みた。

 しかしそこに風の絨毯はなく、マリルドと同様に宙で黒く丈夫な長繊維の束に絡め取られているフリケルの姿があった。

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