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鳥目シアンと、あのVTuberかもしれない彼女たち  作者: 群青アイ


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5/13

a stray cat

一話完結の連作短編です。

鳥目シアンから始まる、彼女たちの世界をお楽しみください。

 昨日の「英雄の旅路Sky(RPG)」のエンディングは泣けた。今朝の夢に出てくるくらいには。


 起きてからもしばらく、最後の場面が頭から離れなかった。主人公が女の子だったこともあって、余計に感情移入してしまったのかもしれない。


 でも、クリアした。


 ということは――ようやく検索できる。


 私は布団に入ったままスマホでSNSを開き、検索窓に履歴のないゲーム名を打ち込んだ。


 発売したばかりの話題作だけあって、他のVTuberさんの感想が次々と出てくる。


「やっぱりここで泣いてる人多い」

「このキャラ、そんな伏線あったの? それであの発言は重い」

「最後の告白シーンは、音楽もずるいよね」


 掛け布団を抱えたまま寝返りを打つ。昨日まで避けていたゲームの考察も、ファンアートも、関連動画のサムネイルも、今日は怖くない。


 しばらく眺めて満足し、タイムラインに戻ると、今度は私のファンアートが流れてきた。


 少し巻きのある長髪。分かりやすい猫耳。ふわっと広がる華やかな衣装に、胸元の大きなリボン。自分の「可愛い」を詰め込んだ姿が、色々な人の手によって絵になっている。


「あ、この人前も描いてくれてた人だ」


 昨日の配信の一場面。終盤、主人公たちが横一列に並ぶ中に、私も混ざって戦っている。配信からまだ一日も経っていないのに、細かいところまで描き込まれていた。


 自然と頬が緩む。


 ゆっくりと画面をスクロールさせながら、感謝のいいねをつけていく。


 ファンアートに混じって昨日の配信への感想も増えてきた。一通り見終えたところで、今度は「#えねころ感想会」を開いた。


 昨日の配信は、みんなにはどう見えていたんだろう。


 流れてきた感想の大半は、私の中でも印象に残っている場面についてだった。話が大きく動いて言葉が出なくなったところや、最後に泣いてしまったところ。


 一人で盛り上がっていたわけではなかったことに安堵し、そろそろ朝の支度をしようと思ったとき、いくつか似た内容の投稿が目に入った。


「このシーンの切り抜き見たけど、うみちゃんらしくて笑ったw」


 その下には、動画が表示されていた。


『【切り抜き】予定通りに進まない 恵猫路(えねころ)うみ』


 どの場面のことだろう。


 振り返ってみても、そんな場面は思い当たらない。私は真剣にプレイしていたはずなのに。


 少し考えるだけのつもりが、指はもう動画を開いていた。


 切り抜きには、前日のゲーム配信からいくつかの場面がつなげられていた。


 最初は、目的地とは逆方向へ歩いていく私。道の先に何かありそうだったから覗いただけなのだけれど、どうやら普通ならもう少し後で見つけるイベントを先に踏んでいたらしい。


 攻略中は極力コメントを見ないようにしていたので、そのときは知らなかった。


 次は、ストーリーがかなり盛り上がっているところ。少し前までいなかったNPCを見つけて話しかけている。そこからまた別の道へ。結果として、初見では少し珍しいルートへ入る。


 また別の場所でも、誰も勧めていない方向へ進む私。短く切られて並ぶと、自分でも少し笑えてくる。


「見たかったから行っただけなんだけどな」


 誰に言うでもなく反論してみる。


 おかげで予定していた配信時間を大幅に超えたし、予定外の展開に何度も肝を冷やしたのも事実だった。


 普段の私の切り抜きより再生数が伸びていて、コメント欄もかなり活気があった。


 《指示厨涙目》

 《猫を散歩させるとこうなる》

 《自由すぎるVTuber》

 《このルート初見で行く人いるんだ》


 そのままコメント欄を読み進める。ゲームの話をしているものもあれば、私の猫耳まで含めて話しているものもある。


 しばらく読み進めたところで、私の中ではラインを越えているコメントが目に入り始めた。朝からわざわざ嫌な気分になる必要もない。


 コメント欄を閉じると、画面には関連動画が並んでいた。別の日の私の配信だった。


 その動画でも、予定から外れた場面がいくつか拾われていた。一本目とは別の配信なのに、場面の選び方や並べ方が似ている気がする。


 動画の要所に目を通していくと、字幕の入る間や場面を切り替えるテンポにも見覚えがあった。投稿者は先ほどの切り抜きと同じみかんのアイコンの人。


 一人を専門に追っている人ではないらしい。投稿一覧には、鳥目シアンをはじめ、何人かの個人勢VTuberの切り抜きも並んでいる。


 その中から、自分の動画をもう一本開いてみた。


 ゲームも配信日も違う。それでも、私を切り抜くときは、似た場面をよく拾っている。


「こういうところも、ありなんだ」


 同じ配信を全部見ても、私ならそこを選ばなかったかもしれない。何本か続けて見ると、どの動画にも似た私がいる。


 しみじみしていると、セットしていたアラームが鳴った。思ったより時間が経っていたようだ。


 このまま布団の中で過ごしていたいけれど、昨夜からつけ置きしていた洗い物は待ってくれない。スマホを置いて、布団をきっちりと畳む。


 背伸びをひとつして、台所に向かった。


 午後。


 パソコンの前で来週の配信スケジュールを組みながら、次に遊ぶゲーム候補を探す。


 SNSや動画サイトで一度検索すると、何が飛んでくるか分からない。私は公式サイトとストアページだけを開いた。


 紹介文は必要なところだけ。レビュー欄には触れない。プレイ時間の目安と配信ガイドラインを確認する。問題なし。


 これなら、五回くらいで終わりそうだ。


 新しい配信メモを作り、だいたいの配信時間を書き込む。最後に、いつものように注意書きを足した。


『進行優先』


 朝見た切り抜きが頭に浮かぶ。少し考えてから文字を足す。


『進行優先。ただし、面白そうなら確かめる』


 検索履歴には、昨日クリアしたゲームと、次に始める物語の名前が並んでいた。


 私はそのままブラウザを閉じた。

ここでしか見えなかった時間は、別の話に続いているかもしれません。

気になったことがあれば、もう一話だけいかがでしょうか。


関連作品:『吾輩はオタクである。』

配信を見る側から描く、また別の日常を描いた一編です。

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