第3章2 奇縁
ナビアの世界、女性の世界、時間がおなじとは限りませんからね
異世界だからといって洗濯もしなければなりませんし掃除もします、料理の片付けもします
ナビアはあの女性が再度来た時に向けて考えていた、前回は身近にあるものとして「みず」を覚えたがどのようにして言語を習得していこうかという悩みがある、言語が統一されてから少なからず時間の経ったこの世界、他言語の習得方法をナビアも知らない、もちろんこの世界地域それぞれの訛りはあるが元は同じなのだ、みずをもとに類する物またはどちらかの文字から派生していくべきだろう、そして身近にあるものといえば、「ハサミ」と「紙」だろう、「雨」は降ってないと意味が無い、このように次を考えるのは久方ぶりだった、冬が近づき朝晩は少し肌寒い季節、寒さには強いが身体が資本である、火鉢くらいで寒さはまだ和らぐため炭と灰を焚べ、少し早めに風呂を済ませるようになった、昼間はまだ暖かいが体を動かしておかねばならない
薄らと冬の香りがする早朝、扉を叩く音が聞こえる、そろそろ獣が冬眠のために食べ物を蓄える時期でこの辺りには基本的には来ないが例外は時折あるもので警戒する、しかし再度同じ間隔で扉が叩かれ人であると考え扉を開くと、あの女性が立っていた、女性はこちらの姿を認めると頭を下げ扉を戻そうとした、確かにこの寝衣では年頃の女性に失礼であろう、女性が扉を閉めるのに抗わず、室内に戻り畳んであった着替えを済ませ寝具を片付け再度扉を開く
「入って良い」
通じるかは分からないので扉を抑えておくと
「ぜぬんろぬろに」
と声がして女性が入ってきた、前回と同様に水を用意すると女性は同じ場所に座っていた、物の少ない小屋の中だがやはりまだ物珍しいようで色々と女性は見回していた、ナビアは机をずらしハサミと紙、筆を持ち女性の前に座る、まずはハサミを指さし
「ハサミ」
「ハ、サミ」
女性は復唱し服から四角い箱と細長い物を取りだし書いていた、四角い箱は前回よりも分厚いように見える、向こうの世界ではハサミは何と言うのだろうか
「とのる」
「とのる」
なるほど、「ハサミはとのる」か、とナビアは手にしていた紙に書いていく、そしてその書いた紙を指さし
「紙」
「かみ…」
同じように四角い箱に書いていた、意味は通じたようだ
「もる」
「モル」
ナビアの予想通りやはり文字がどこか共通しているらしい、女性は少しやなんでいる様子だが少しした後思いついた顔で再度服を探る、少し薄い四角い箱から1枚取りだし、ナビアの持っているハサミに似たものを取り出し
「はさみ、かみ」
と指さしで教えてくれた、ハサミも紙もこの女性の世界にもこちらにもある物らしい、しかし素材が違うようでハサミはとても軽く取り回しがしやすい、紙はサラサラしておりナビアが持っているものよりも分厚い、どちらも女性に返しナビアは持っている紙に書き留めておく、書き終えたと同時に気付いた、思考している女性の周りに光が舞っているのに、その光は強くはないが儚くもない、しかし火を起こすときのような鮮烈さでもなかった、その時ナビアは昔、ナビアの親がまだ生きていた時に聞いた話を思い出した、【昔々、精霊に愛された人間がいた、その周りには光が散って見え、だれも精霊に愛された人間を拒んではならない、その者が幸せに過ごすことこそこの世界の安寧である】という話、今では古文書に書いてあるくらいらしいがこの女性の周りの光はそうとしか思えない、ナビア自身が病にかかっているのでなければ、だが、この事について書物を読んでみたいが国の古文書くらいにしか書いてないだろうし、近くのあの村にその様な書物は無さそうだった、確かめる方法は無いもののそれでも良いと思えたのはこの女性がこの世界に縛られて欲しくないという偽善なのだろう
そうして思考しているとお腹がすいてきた、朝起きてから何も口にせずに勉強をしているのだ、女性もお腹がすいているかもしれない
立ち上がり比較的作りやすいクォリアを作ることにした、この土間には2つ井戸が掘られており右は普通の井戸、左はさらに深く水源が更に下で氷室とする食料保管庫、中央に掘られているのは燻製や塩漬けをしたような保存のきく食料保管庫だ、必要なものを取り出し先に芋類を煮ておく、後ろから視線を感じるが恐らくここの勝手が分からなければどうしようもないのだろう、動く様子はなかった、女性にどのくらい食べるか聞こうと振り向いたがどう伝えれば良いかと思案していたら人差し指と親指で困った顔で合図をした、恐らくあまり食べられないのだろう、それにここの料理が合うとも限らないため持っている中でいちばん小さい器とさじを持って野菜はほぼ入れずにクォリアをよそう
「そふもえしめのすろに、すおぉむろに」
感謝を述べているようであった、それを確認してクォリアを食べ始める、女性も口を付けた時緊張の糸が解けたようで雰囲気がさらに暖かくなった、苦手な味では無かったようだ、これから言葉を学ぶ上でこの小屋には何も無さすぎる、そうか小物でなくてもよいのか、鍋や机や布団など色々ある、そう考えていると目の前の女性の姿が乱れ、器とさじを残して消えた、このように帰っていたのか、器の中は空で前回と同じように満足感を覚えながら片付けをする
クォリアとはこの世界で言うシチューのようなものです
必要そうなら設定集ありますが世界観独特なのでまだまだ増える予定です
ここから精霊的な話も入ってきます




