Re:sou 第三十二話「初めての」
三日、空けた。
鉄を、揃えるためだ。ツムグが鍛冶場に籠もって、ジェスの大槌の頭を打ち直し、ヤンの斧槍の刃を研ぎ、クーリの矢を数えた。
四千二百本は、まだ数本しか減っていない。
練習には普通の矢使った。
俺は、剣を見ていた。ヤンさんから受け継いだ黒い柄のロングソード。
何度も真空を纏わせてきた刀身は、光にかざしても、いつも通りだった。傷ひとつない。
「なに見てんの」
ツムグが、炭で汚れた手で覗き込んだ。
「いや。……丈夫だな、と思って」
「いい鉄だよ。どこで打ったか知らないけど、相当な腕だ」
彼女は刀身を指の背で撫でて、少し、首を傾げた。
「……ちょっと、疲れてるかもね」
「鉄が?」
「鉄も、疲れるんだよ。叩かれ続けたら。……まあ、まだ平気」
まだ平気か……。
*
3日で作戦をたて練習した。
10階を想定すれば、20階も体力はそこまでな気がする。
ゲームなら攻略されることが前提だからだ。
ゲームなら、攻略できるように出来てるはずだ。柾が、作った穴だ。……こんな時だが、そう信じてる。
入り口のポータルから入り十階まで、飛んだ。
そこからは敵を倒しながらもナナのマップ頼りに最短距離で二十階まで、下りる。
道中の骨も影も、もう危なげなかった。ジェスが前で大槌を振り、ヤンが要所を薙ぎ、クーリが後ろから遊撃の矢を落とす。
クラインが罠を読み、ナナがマップで案内し光を灯す。
半月前とは、別の隊列になっていた。
毎回違う階層じゃなくてよかった。
ダンジョン最奥ボスを倒せば変わるかもだけど。
何階まであるんだろう。
強さ的には最下層でもいい気がするが。
二十階の、あの石の扉の前で、一度止まった。
「作戦、確認するよ」
クラインが、帳面を広げた。
「アダマンタイトは物理無効。オリハルコンは魔法無効。……単純だ。だから、二手に割る」
彼が、指で線を引く。
「アダマンには、カイと僕。例の技と、魔法。オリハルコンには、ヤンさんとジェスとツムグで力づくだ。」
「あたしは?」
クーリが、弓を立てた。
「クーは、遊撃。……連射はまだきついだろう。固定で入れない。おそらくだが連携してくるとしたら片方が、もう片方を助けに割り込んでくる。」
「それを、邪魔する感じで射てくれ」
「割り込みを、邪魔する係」
「そう。あと」
クラインが、ナナを見た。
「ナナ。……蜘蛛の糸、まだあるね」
『あります。……大量に、あります』
ナナが、指を立てた。宙に、白い束が現れる。あの、切っても切っても出てきた糸だ。格納の中で、太い縄に縒られていた。
「作戦の通りに片方の足に、絡める。動きを、鈍らせる。……ナナ、持てるか」
『持てます』
ナナは、あっさり言った。
「重いぞ。岩の巨人を、縛るんだ」
『問題、ありません』
その返事に、迷いはなかった。俺は、少しだけ、その横顔を見た。いつも通り、静かだった。後ろで座標を支えているだけの、あの位置じゃない。
「ツムグは完全な戦士じゃない、頃合いを見てナナの補助に行って欲しい」
「確かにね、旦那はともかくジェスがしっかりしてればナナの補助にすぐ行くわ」
「一言多いんだよなぁ」
ナナも無表情だが心なしか気合いの入った顔をしている。
蜘蛛の糸で作った荒縄を持って、前に出る気だ。
「よし、皆無理はするな。いざとなったら帰還石もある。撤退の時はなるべく一箇所に集まるんだ。ジェスは帰還石をナナへ預けてくれ。前衛が持って壊れても困る。格納魔法で保管が良いだろう。」
ジェスがうなづきナナに渡しナナはアイテムボックス内に石を入れた。
「いざとなったらナナの近くに行くぞ」
クラインが、帳面を閉じた。
「一体ずつ、丁寧に。……庇い合いを、崩す」
*
扉を、押した。
二体の巨人が、目を開けた。
黒と白金が同時に、こちらを見た。
一歩。
床が、揺れた。
「来た!」
ジェスが、笑った。この状況で、笑うのがこいつだ。
ツムグも取れそうな素材を想像してか頬が緩んでる。
似た者同士だな。
「役割どおりに! アダマンの方は任せろ!」
俺とクラインが、右へ走る。黒い巨人が、こちらへ腕を振り上げた。鈍い。三倍の背丈のわりに、動きが、鈍い。
「〈虚鞘〉」
刀身へ、真空を薄く重ねる。
殴ってきた右腕が伸び切ったところを踏み込んで、振り抜く。
黒い腕の、関節のあたり。
手応えあり。
真空は、物理無効の外側を通る。装甲を無視して、内側の——間接構造の一点を、薄く裂いた。
だが、まだ浅い。
『装甲、深部。……真空層の深度が、不足しています。虚空かその境界を使われますか?』
ナナの声が、頭に届く。もっと深く。もっと鋭く。真空を、厚くすれば——器が、軋む。虚空へ繋げば、届く。
だが。
「真空だけで、行こう」
権限は多少上がり虚空の負担も減ったかもしれないが確実に打てるかわからない。
真空でも、虚空でもない、あの境界の感触。悲哀の悪魔を斬った、あの一撃。……まだ、呼び名もない。あれも、調節が、難しい。
何よりナナの負担もでかい。
治る見込みができるまでナナを、…削らせたくない。
浅くていい。何度も、通せばいい。俺は、踏み込み直した。
「クラインさん!」
「ああ」
クラインが、杖を掲げた。
マナが貯まり彼の詠唱が、始まる。
「我が前に、凍てつく野を——」
声が、伸びる。四つに分かれた言葉が、順に組み上がっていく。彼の指先が、震えていた。
「——遍く、覆え。留めよ。……《氷原》!」
床が、白く走った。
黒い巨人の足元、その一帯が、一息に凍る。踏み出しかけた足が、滑った。三倍の背丈が、ぐらり、と傾ぐ。
「今!」
俺は、傾いだ関節へ、真空を通した。さっきより、深く入った。体勢が崩れたぶん、装甲の合わせ目が、開いていた。
黒い巨人の、膝が、砕けた。
片膝を、氷の床へつく。地響き。
「効いてる! そのまま——」
言いかけて、俺は、剣を見た。
真空を纏わせた刀身。振り抜いた、その切っ先から、三分の一のあたり。何も、変わらない。傷はない。
いつも通りだ。
なのに。手の中で、何か音が鳴った気がした。ごく、かすかに。
奥の方で。
(……気のせいか)
考えている暇は、なかった。
「カイ! 白が行った!」
ジェスの声。振り向くと、白い巨人が——オリハルコンが、こちらへ、腕を伸ばしていた。膝をついた黒を、庇うように。割り込んで、きた。
ヤンが、吼えた。
「やはり連携するか!だがそれも隙だ。間接狙いで囲め!」
白が、前に出た。庇うために。その瞬間だけ、こちらへ胴を晒す。
魔法無効の巨人。
オリハルコン巨人が近づくとクラインの魔法の氷が冗談のように剥がれて行く。
だが——物理なら、通る。
「もらった」
ヤンの斧槍が、唸った。踏み込みが、床を割る。斧刃が、白い胴の合わせ目へ、吸い込まれた。
鈍い、重い音。白い巨人が、たたらを踏む。
併せてジェスとツムグの槌も膝に合わせて叩き込まれる。
白い方も傾き倒れかけが踏ん張り黒い方へ歩み寄ろうとする。
「クーリ! 追い打ち!」
「——っ、任せて!」
クーリの矢が、鳴った。ぱん、と乾いた音。白い巨人の、顔のあたり。鏃が、火花を散らす。
聖属性は乗らない——相手は不死じゃない——が、物理の矢だ。硬い装甲を、削る。
もう一射。もう一射。
「うわ、連射きっつ……! でも……!今回は撃てる!」
白い巨人が、クーリの矢の連なりと集まった近接の猛攻にたじろぐ。
庇うのを、やめた。
黒から、離れる。引き剥がされた。
「よし、離れた! クライン、黒は任せた! 白金に止め刺す!」
ジェスが、大槌を担いで、白へ追撃。ヤンとオリハルコンを挟む。
腕と腕で、白い巨人を、削り始めた。
俺とクラインは、膝をついた黒へ、向き直る。
「ナナ! 今だ! 動けない足に、縄を!ツムグも補助へ!」
『はい』
「あいよ!」
ナナとツムグが、走った。
前へ。俺たちより、前へ。白い外殻の下で、あの縄を、両腕で抱えて。
膝をつき氷で立ち上がりにくい黒い巨人の、その軸足へ。
ぐるり、と一巻き。二巻き。
黒が、気づいた。残った腕を、ナナへ振り下ろす。
「ナナ!!」
俺は、叫んだ。届かない。間に合わない。あの腕が、ナナを——
「させないよ」
ツムグが大槌で手を払う。
物理無効とはいえ軌道くらいは変えられる。
ナナは、その隙に縄を巻き終えた。
そして足を踏み締め外骨格が、跳ねる。
人の体では、あり得ない強さ速さで、真横へ。
黒い腕が、床を打った。破片が、飛ぶ。
「なんて動きだい、たまげたね」
ツムグもお口あんぐりだ。
ナナは、その破片の中を、もう一度跳んで、俺の隣まで戻ってきた。
縄の端を、握ったまま。
『固定点、確保します』
彼女は、縄の端を、近くの崩れた石柱へ、二重に巻いた。外骨格の指が、石へ食い込む。ぎち、と縄が張る。
「……無茶、するな」
俺は、言った。声が、掠れた。
『無茶では、ありません』
ナナは、俺を見た。
『計算どおりです。……わたしは、護られる存在ではありません。創世人をカイさまを護り補助するために生まれたのです』
その一言が、胸を突いた。
あとで、ちゃんと考えよう。今は。
「——引くぞ! 縄!」
俺とツムグとナナ、三人で、縄を引いた。石柱を支点に、黒い巨人の軸足が、後ろへ滑る。膝をついたまま、体勢を、崩す。
「クライン! もう一回、魔法!」
「よし追撃する!——!」
後方で魔力を練っていたクラインの二度目の魔法が、黒の上に落ちた。
黒い巨人が、煙を上げて横倒しに、倒れた。
地響きが、部屋を揺らした。
「今だ、カイ! 頭!」
倒れた黒い巨人の、頭部。装甲の、最も薄いところ。合わせ目が、露出している。
俺は、跳んだ。刀身へ、真空を、ありったけ薄く、鋭く。
膝を砕いた時より、深く。
振り、下ろす。
黒い巨人の、頭の中の——赤い、小さな光へ。真空が、届いた。
核が、砕けた。
黒い巨人の全身から、力が抜ける。がくり、と、装甲が崩れ落ちた。動かなく、なる。
「一体!」
ジェスの歓声。振り向けば、白い巨人も、ヤンの斧槍が、ちょうど胴を割ったところだった。露わになった核を、ジェスの大槌が、打ち砕く。
白い巨人も、崩れ落ちた。
二体とも、倒した。
静寂が、落ちた。誰かの、荒い息だけが、聞こえる。
「……勝った?」
クーリが、弓を下ろした。
腕を、押さえている。
連射で、限界だったのだろう。
「ふぅ、まだ油断するな」
ヤンが、斧槍を、肩に担ぎ一息入れる。
この人でも疲れるんだな。
「二体、同時は……骨だったぜ」
ジェスが、大槌を地面に置いて、その場に座り込んだ。
「でも、やったろ! おれたち、強くね!?」
俺は、剣を鞘へ戻そうとして——手を、止めた。
刀身の、三分の一のあたり。真空を、幾度も通したところ。やはり、傷はない。外からは、何も見えない。
だが、鳴っていた。手の中で、確かに。金属の奥で、細く、細く。
(……剣も、疲れてるのか)
ツムグの言葉が、蘇る。鉄も、疲れる。
「まだ、平気か」
俺は、小さく呟いて、剣を鞘へ納めた。今は、それでいい。二体、倒したんだ。今日は、勝った。
そう、思った時だった。
*
倒れた、二体の巨人が。
黒と、白が。
動いた。
「……え」
クーリの声。
崩れ落ちたはずの装甲が、床の上を、這った。黒い破片と、白い破片が、互いへ、寄っていく。引き合う。磁石のように。真ん中で、混ざり、始める。
「なんだ、あれ」
「立つな……立つなよ……!」
ジェスが、立ち上がる。大槌を、握り直す。
黒と白が、一つの塊になって、せり上がった。人の形を、組み直していく。さっきより、大きい。四倍。五倍。天井近くまで。
そして、その体が——赤く光っていた。
黒でも、白でもない。深い、緋色。磨いた赤金みたいに、鈍く光る。全身から、湯気のような、熱が立っていた。
「合体、しやがった……!」
部屋の空気が、変わった。重い。肌が、ひりつく。
膝をついたクーリが、思わず後ずさる。
『鑑定、します』
ナナの声が、低くなった。
『——』
間が、あった。長い。ナナの鑑定が、こんなに詰まるのは、初めてだった。
『……ヒヒイロカネゴーレム』
「ヒヒイロ……?」
『名前しか、映りません。……レベルも、耐性も、弱点も。何も、表示されません。名前だけが、見えます』
クラインの手が、止まった。帳面の上で。彼は、その赤い巨体を、見上げた。
「……名前しか、読めない。鑑定が、通らない。弱点も、耐性も——ダンジョンが、僕たちに情報を渡すのを、拒んでる。そうとしか、思えない」
赤い巨人が、腕を、上げた。ゆっくりと。まるで、こちらの出方を、待つように。
「試すぞ」
ヤンが、前に出た。
「……どこまで通るか、確かめる」
斧槍が、唸った。踏み込みが、床を割る。全力の一撃が、赤い胴へ、吸い込まれた。
鈍い、音。
斧刃が、赤い装甲へ、食い込んだ。食い込んで——そこで、止まった。
「……これは硬ぇな」
ヤンが、斧槍を引き戻した。
「入るには、入る。だが……大分力が殺されてる。かなりの物理耐性だな」
「クーリ、矢を!」
クーリが、震える腕で、一射した。赤い巨人の、肩口。鏃が、当たる。火花。だが、弾かれた。深く、入らない。
「嘘……属性矢でもあんだけなの!?」
「魔法も、試すぞ」
クラインが、杖を上げた。雷を、放つ。赤い巨体へ、白い光が、走った。
通った。だが——受けた巨人は多少煙は上げるがそこまで効いてる風でもない。
というかこのゴーレム、効かんとばかりに攻撃を仕掛けて来ない。
「……魔法も、同じだ。かなり耐性がある感じだ。物理も、魔法も。両方に、効きにくい。どちらかじゃない。……両方だ」
俺は、剣を、握り直した。真空なら。真空なら、装甲の外側を通れる。俺は、踏み込んだ。
「〈虚鞘〉!」
刀身へ、真空を、薄く。赤い脚の、関節へ。
真空が、届いた。届いて——削れた。だが、浅い。さっきの黒ほどいかない。
もっと、深く。——あの、悪魔を斬った一撃が、出せれば。
『カイさま』
ナナの声が、割り込んだ。
『虚空もしくは境界の一撃へ接続の許容深度、この装甲に対して……推奨、しません。接続すれば、削れる可能性はあります。ですが——』
「うん、わかってる」
俺は、剣を、引き戻した。
虚空を繋げば、届くかもしれない。だが、その代金は、ナナのコアだ。
戻らない、一割が、積もる。
今日、一か八かはできない。
「一通り、確かめたな」
ヤンが、俺の隣に、並んだ。
「物理、魔法、大幅減。お前の技でも効きが悪いか。……こいつは、今の俺たちには荷が重いな。」
赤い巨人は、まだ、動かなかった。
仁王立ちで動かない。
表情などないがまるで煽ってるかのようだった。
僕の考えた最強ゴーレムとでも言わんばかりだ。
……ゲームだ。やっぱり。
だが、今は——これは、勝てない。
「引きます」
俺は、言った。
「傾向は、掴めました。物理も魔法も減衰、真空も浅い。……対策が、要ります。今日は、無理です」
「帰還石、使うか?」
ジェスが、懐に手を当てた。
「どこからでも、帰れるって。あれ、今だろ」
俺は、首を振った。
「まだ。……あれは、本当に動けなくなった時の、一回きりかもしれない。今は、まだ、足が動く。歩いて、十階まで戻れる。……帰還石は、取っておきましょう。」
赤い巨人から、目を離さないまま、後ずさる。全員で、扉の方へ。
赤い巨人は、追ってこなかった。仁王立ちのままこちらを、見送るように、立っていた。
俺たちがボス部屋を出ると扉が、閉じた。
*
十階のポータルまで、誰も、多くは喋らなかった。
勝ったはずだった。二体を、工夫して、倒した。連携も、決まった。ナナが、前に出た。クーリの矢が、引き剥がした。クラインの氷が、崩した。
前衛物理組も見事に倒した。
全部、噛み合っていた。
なのに、あの赤いのが、立った。
勝った、その先で。まるで、二体を倒すことが、あれを起こす鍵だったみたいに。
「初めてだね」
クーリが、ぽつりと言った。
「引き返すの。……勝てなくて」
「戦場では引き際が大切だ」
ヤンが、言った。
「相手の情報を掴んだ。……戦果はそれだけだが、死なずに退けたのが、何よりの手柄だ。」
クーリは、少し、笑った。まだ、腕を押さえていた。
ツムグとジェスは話し合っていた
「あいつの素材を使えばやばい武器が作れそうね」
「俺にも作ってくれよ!」
「アタシは刀鍛治だよ…まぁ父さんにも聞いて考えてみないとね」
「やりぃ!でもここの敵には打撃武器だよなー剣はあいつ倒してからだな」
俺は、一番後ろを歩きながら、剣の柄に、手を当てていた。
鞘の中で、鳴っている気がした。まだ、細く。まだ、平気だと自分のことのように言い聞かせた。
柾。……お前の作った世界、底が抜けてないか。
いや。きっと、意味がある。あの穴は、攻略できるように出来ている。
あの赤いのを、次に倒すには。真空を超えた境界の一撃、あの悪魔を倒した一撃がいる。
あるいは、権限が上がったことにより虚空が撃てるかもしてない。
虚空を放てれば、届く。
だが、ナナが削れる。
どっちに転んでも、俺は、誰かを、削らせることになる。
……ナナの言葉が、また、蘇った。
『わたしは、護られる存在ではありません。』
ナナは護られたいんじゃない。
あいつは、隣で戦いたいんだ。
俺を、護れる場所に、立ちたいんだ。
それが、嬉しくて。それが、少しだけ、怖かった。
ポータルの光が、見えてきた。
「帰ろう」
俺は、言った。
「飯にしよう。ツムグの飯、食いたい」
「賛成!」
「えっアタシの休憩はないの?!」
「ちゃんと皆で手伝うよ〜」
「ジェス…しっかりこき使うからね」
「いいぞ!俺もめっちゃ腹減った! 頑張ってツムグの美味い飯早く食おうぜ」
「あんた!?」
「どうした?顔が赤いぞ?」
「うるさいわね、早く準備するわよ」
クーリが、横で笑った。
「…いいコンビね」
クラインが、帳面に何か書きながら、口の端を上げた。ヤンが、斧槍を担ぎ直した。ナナが、光を、灯し続けていた。
赤い巨人のことは対策を考えよう。
ただまずは皆のレベルアップや武器の調節調達だ。
俺たちは、光の中へ、足を踏み入れた。
(第三十二話「初めての」・了)




