第7話 闇の妖精と出会う少女ルナーラ
目の前に現れた存在を私は驚きながら見つめる。
「ほんとにいたんだ」
初めて見る妖精は、なんというかデフォルメされたマスコットの人形のようだった。
全体的に黒く柔らかそうな体毛に覆われ、顔は犬っぽくて目は▼の形をしていて、いかにも闇の妖精だといった風体だ。あくどい顔付きだが、あまり悪い子の印象は感じない。何だかのほほんとした雰囲気を持つ妖精だった。
『くー?』
不思議そうな顔で私を見上げる妖精。
私は思い出したように妖精の前にしゃがみ込み、妖精さんに挨拶をした。
「妖精さん! 私、ルナーラ・クライデスです。お名前はなんていうんですか?」
『くー、しぃー』
「クーシィ?」
『くっ!』
クーシィで合っているらしい。
妖精さんは言葉は話せないようだが、身ぶり手ぶりや鳴き声で、私に快く応じてくれている。
……仲良くなったら、もしかしたら畑に力を分けてくれるかも。
俗物的な理由だが、せっかく来てくれた妖精なのだ。協力してもらいたいし、どちらにしろ理由がなくても仲良くなってみたいのは事実だ。
「クーちゃんって呼んでもいいですか?」
『くっ』
OKらしい。
『クーちゃんのお仲間は近くにいますか?』
『くうー』
いないらしい。
『1人なんですか?』
『くっ』
1人らしい。なんだか寂しそうな返事だった。
しかし、それが本当ならば、闇の国に妖精はほぼいないということになる。
“妖精と畑”には妖精は全部で54匹いるとあった。ならば残りの53匹全部が光の国に行ってしまっているということだろう。これは均衡というレベルを超えた偏重だ。クーちゃんには是非闇の国にとどまってもらわないと困る。
『クーちゃん、私とお友達になってくれませんか?』
『くっ!』
クーちゃんは嬉しそうに返事をしてくれた。
こうやって、私はクーちゃんと友人になった。やったね。
◯◯◯
その後もクーちゃんとお話した私は、クーちゃんを連れて村長さんのもとへ走った。
「村長さーん!」
「なんじゃルナーラ。儂らは今大事な話し合いをしておるんじゃぞ」
困ったような目で私に視線を向ける村長に、私は手のひらの上に乗せたクーちゃんを見せた。
「村長さん見てください! 妖精のクーちゃんです! さっきお友達になったんです!」
「ほお、妖精なぞ最近はとんと見かけなくなったが、確かに妖精じゃな」
村長さんは珍しそうな反応をするが、それがどうしたのだという態度だ。もしかして妖精の力のことを知らないのだろうか。
「クーちゃん、最近ずっと1人らしいんです。妖精には凄い力があって、でもそれがいなくなったから闇の国が大変になってるんじゃないかって思ったんです!」
私の言葉に、村長を含めた村の上役たちは顔を見合わせる。
「どう思う?」
「確かに妖精を見かけなくなったのは事実ですな。いるのが当たり前でその考えに至らなかったのは盲点でしたが」
村長さんの問いかけに、まず反応したのは狐老人のフーシーさんだった。
「それなら、特に策を考えなくてもじきに妖精たちが戻ってくるんじゃないのか?」
次に声をあげたのは豹熟女のゲパルトさんだ。彼女は村一番の狩りの名人だ。
「ですが上役の我々が何もしないで時を待つだけというのは下策ですぞ。何かしらの対策は立てるべきでしょう」
ゲパルトさんの楽観的な物言いにフーシーさんが異を唱える。
「うーむ。気まぐれな妖精たちの数を正確に把握するなど無理な話じゃからなあ。本当に数が減っているかも確証が取れぬし、どうしたものかのう」
村長さんが困ったように腕を組んで唸る。
会議は何故かいっそう暗雲が立ち込み始めるが、私は意を決して自分の考えを述べてみた。
「――あの、クーちゃんが協力してくれたならなんですけど、クーちゃんに村の畑に力を込めてもらったらなんとかなるかなって、私考えてるんです」
私の提案に、村長さんたちは顔を見合わせた。
ルナーラ「どうです村長さん?」
村長「うーん、採用」
クーちゃん『くー』zzz




