第6話 不思議なものに手を出す少女ルナーラ 8歳
ルナーラ「がんばれわたし!」
森の木が幾本か枯れた。川の水量も目に見えて減ってきている。
流石におかしい。村の人たちも、この異常な事態に疑問を抱き始めた。
畑の野菜たちも年を重ねるごとに収穫量が落ちており、皆表立って口にはしないが食糧不安が起き始めている。連日のように村長を含めた村の上役たちが会議をしているものの、有効な対策は打てていないのが実情だ。何となくだが、皆から覇気が薄れているような気がする。
そんな中で私がどうしているかというと、連日会議をしている村長に対して図書館の鍵をせびる空気の読めない娘になっていた。
最近村長の目が険しくなっているような気がするけど、気にしたらいけない。村長は私やタッソさんがする対策の効果がほとんど見られなくなった段階で、興味を失ったようで図書館に目を向けることはなくなった。
おかげで図書館の鍵をもらいづらい。いっそのこと鍵を預かってしまってもいいのだが、なくした時が怖いので、今までどおりの状況に甘んじている。
「と言っても、最近私ももう意味ないのかなって思い始めてるんだよねえ」
私自身、何というか気力が薄まっているような感じがする。今はまだ何とかやる気を踏ん張って、母のため村のためと思い、こうやって来ているが、もう読む本もなくなってきており、潮時かもと考える時がある。
「……“妖精と畑”。畑って書いてあるだけマシかな?」
何の本かすらよく分からないタイトルを見て、私はそのまま読書机に足を向けた。
椅子に座り、惰性で取り敢えず表紙を捲って文頭を読んだ。
「……畑と妖精には密接な関わりがある。妖精とは全ての力の根源である―――」
その一文を読んだ瞬間、私は内心で雷に打たれたような衝撃を感じた。思わず目を見開き、先を読み進める。
「妖精は闇と光の世界を渡る存在。妖精たちの数が両世界で均衡を保つことによって、自然は充足した環境に至る」
これだ! これに違いない!
私は自分が探し求めていたものをついに見つけたのだと確信した。同時に、こんな重要な内容を書いた本なのに曖昧なタイトルを書いた著者をなじりたい気持ちになった。
「妖精が多い世界は自然が豊かになり、逆に少なくなれば痩せていく。この均衡を保つためにも、妖精の数には常に注視しなければならない」
なるほど。昔読んだ本でも妖精には触れていたけど、今まで見たことなかったし半信半疑だったのだが、この理屈で言えば確かに妖精が見当たらないことと村が痩せてきていることとの辻褄は合う。
――妖精は闇と光を渡る。彼らは気まぐれな存在なので、常に均衡を保ってくれるとは限らない。もし妖精が少なくなった時は、妖精に呼びかけて仲良くなり、少しでも世界に居着いてもらおう。いつかは妖精が多くなり均衡が整うはずだ。加えて、妖精と仲良くなれば、気まぐれで畑に力を与えてくれることもある。力を与えられた畑は大きく成長し、とても美味しいものができあがる。
本の続きには、著者がどうやって妖精を呼んだのか、仲良くなった方法などを記録して書いているようだった。
私は実践あるのみだと思い、さっそく本に書いてある妖精を呼ぶ踊りなるものをやってみることにした。
「ええと、両手を縦に振って右右左左、くるっと回ってにっこりスマイル?」
よく分からないけど頭のおかしい動きなのは分かった。何度か練習して、私は真剣な心持ちでこれを再現してみせた。
だが、妖精は一向に現れなかった。踊る量が足りないのかと思い、もう何度か試してみるが効果はない。
何かが間違っているのかと考え、私は再度本の内容を確かめた。その時なんとなく次のページを捲ると、
「この頭のおかしい動きに意味はない!? 頭のおかしい動きをすることで近くにいる妖精が引き寄せられるから、他で引き寄せる手段があればそれを行うとよし!?」
何故それをもっと前に書かないのだ。この著者、もしかしてわざとこういうふうに書いているわけじゃないだろうか。非常に疑わしい。
私は顔が真っ赤になるのを自覚しつつも、もう騙されてたまるもんかと先に全てを読むことにした。だが、あのひっかけのような下りは先ほどの一箇所のみで他は真面目なことしか書いていなかった。
絶対に確信犯だと思う。
私は憤りを覚えながらも、遠くにいる妖精を呼ぶ方法として記されていたことを試してみることにした。やり方は単純でひたすら妖精を心の中で呼びかける、だった。
そんなことで妖精が呼べるのか甚だ疑問だが。変な踊りをするよりかはよほどまともなやり方だと思う。
……妖精さん来てください! ちょー来てほしいです! めちゃ来てほしいです!
念仏を唱えるがごとく私は一心に念じるが、待てど暮らせど、目の前には何も現れなかった。
「……これも嘘だったの?」
何という期待外れな本だったのだろうか。私は肩を落としてため息を吐いた。無条件で信じてしまったが、やはりこんな都合のいい話はないのだとよく分かった。
『くー?』
その時だった。
唐突に、私の足元から鳴き声が聞こえた。
私は驚きながらも急停止して、ゆっくりと声がした方向に顔を向けた。それは私の足元にあり、
『くう!』
そこには、手のひらサイズの小さな妖精さんがいたのだ。
頭のおかしい踊りの参考
ドラゴンボールGTに登場する催眠ダンスを得意とするパラパラブラザーズ。




