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第33話 それゆけ、カラス怪人ウーヤさま


Side:ウーヤwithイエチェーとオッソ


 この日、俺たちはかねてより希望していた闇国真拳を習うことになっていた。


 ドリルなんかより闇国真拳の方がよっぽど役に立つというのに、ルナーラは最後までドリルができたらと言って聞かなかった。


 ドリルをやりきった俺たちを褒めてほしい。


 しかし、闇の国に伝わる必殺技の数々が、やっと使えるようになると思うとワクワクが止まらない。イエチェーなんかは昨日からほとんど眠れなかったみたいだ。


 俺たちは動きやすい服装に着替えて、ルナーラの前に並んだ。


「はい、じゃあまずは準備体操ね。体を動かす準備から始めるよ」


 早く必殺技を教えろと思うが我慢だ。ルナーラにへそを曲げられたら、俺たちがやり遂げたドリルの努力が水の泡だ。


「よーし。次は型、套路っていうんだけど、この動きを真似してね。ゆっくりやるから、ゆっくりついてきてね」


 俺たちは我慢した。何の動きか分からないヘンテコな動きを頑張って真似する。


「よーし、じゃあ次の型だけど―――」


 俺たちはキレた。話が違うと。闇国真拳はどこに行ったんだと。


「ええ! 今やってるじゃん!?」


 俺たちは抗議した。これのどこが闇国真拳なんだ。ただの体操じゃないか。


「いやいや、これ闇国真拳ですよ!?」


 嘘だ。早く闇国真拳の必殺技を教えろ。


「だから教えてるじゃん! 体作りとか呼吸法とかすっ飛ばして型教えてるんだよ!? 何が不満なわけ!?」


 俺たちは騙されないぞ。俺たちは闇国真拳で岩とか砕きたいんだ。


「これがその動きだって! ルナーラさん、嘘つかないよ!」


 俺たちは理解した。ルナーラは俺たちにドリルをやらせたくて嘘を教えてるんだ。

 

 俺たちはルナーラをとっちめようと3人で飛び掛かった。


 数分後、


「ウィナー、私!」


 右手を突き上げるルナーラに対して、俺たちは綺麗に地面に転がされていた。

 

 くそう。やっぱりルナーラは強すぎる。


 何がどうなっているか分からないけど、ただただ美しい動きで俺たちはボコボコにされた。


「まったく。闇国真拳は体を連動させて技の威力を高めるの。型はそれを分かりやすくしたものなんだから、ごちゃごちゃ言わないで真似しなさい。分かった?」


 俺たちは大人しく従った。


 クソ。マジで分からない。この動きがどうなったら必殺技になるんだ。動きを繋げるってなんなんだよ。


「よし。じゃあ、今日はここまでにしようか。続きは次のドリルができたらね!」


 俺たちはキレた。そして、またボコボコにされた。


    ◯◯◯


 闇国真拳の壮絶な修行から数日。


 俺は屋敷の廊下を当てもなく歩いていた。


 ちなみに次のドリルはまだできていない。


「どうやったらルナーラに勝てるんだ?」


 俺はぼやきながら、ため息をつく。ぶっちゃけ暇だった。


 イエチェーとオッソは最近テレビにご執心なようで、暇な時はいつも食堂のテレビにかじりついている。俺もたまになら見るけど、ずっと見ているのも飽きる。


 ……外に出たいな。


 廊下の窓から、俺は外を眺める。


 俺たちは、見た目が人間たちとはだいぶ違う。

 ダークネスさまのオトナ化の魔法でも、身体が大きくなるだけで人間とは似ても似つかない姿になる。


 だから、騒ぎになるからと、ルナーラには不用意に外へ出ないよう言い含められている。

 大人になれたら、自由に色んな場所に行けて、遊べて、妖精集めも捗るのに。

 

 やるせない気持ちを鎮めようと、俺は目を伏せ、小さく息を吐いた。


『くー!』


「? どうしたんだクー助」


 廊下の向こうから、クー助が飛んできた。いつもは昼寝ばかりしているのに、今日はやけに元気そうだ。


 クー助という呼び方は俺たちが付けた。ルナーラはクーちゃんと呼んでいるけど、なんか気恥ずかしいので、クー助と呼んでいる。


『くくー、くーく、クッ!』


 俺に向かって、クー助は身振り手振りで何か伝えようとしているけど、てんで分からない。


 ……ルナーラはなんでこれで分かるんだ?


 とりあえず、外を指しているのは、なんとか分かった。


『くう!』


 次いで、クー助が宙で腕を羽根のようにパタパタと振る動きを見せた。この動き、見覚えがある。俺たちの部屋にいるアイツ(シマエナガ)の動きだ。


「もしかして、妖精って言いたいのか?」


 そう、と言うようにクー助が鳴いた。つまり、


「妖精を見つけたんだな!?」


『く!』


 思わず声を荒げる俺。クー助は頷いた。

 

「イエチェーとオッソにも声をかけて行くか……?」


 俺は腕である羽根を組んで思案する。皆で行った方が戦力も多いし確実だ。

 しかし、あの2人がいると煩いし、妖精がどんな場所にいるかも分からない。飛べる俺だけの方が、機動性は高いだろう。それに、


 ……うまくいけば、俺が2匹目を捕れる。


 心の隙に生まれた小さな欲求を、俺は我慢できなかった。ルナーラに怒られるかもしれない。だけど、妖精を捕まえたら、きっと許してくれるはずだ。


「クー助。妖精がいるところまで案内してくれ!」


 俺は急いで部屋に戻り、虫かごを肩にかけてクー助と一緒に窓から飛び出した。


 妖精を探しに、外へ出た。


    ◯◯◯


「おーい、ウーヤ? ウーヤが好きな“つくってこわそう”のテレビ始まるでぇ。どこにいるん?」


 屋敷の廊下で、オッソは友人を探して声をかけていた。が、返事はどこからも返ってこなかった。

 

「あ、窓開いてるやん。閉めとかな。またルナーラに怒られる」


 オッソは窓を閉めて、ウーヤを探すのを止めた。そのうち帰ってくるだろうと思ったからだ。





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