第31話 妖精を見る子分ウーヤ
Side:ウーヤ
ルナーラが、とうとう妖精を捕まえた。
俺たちの部屋に置かれた籠の中で、呑気にさえずる妖精。その鳴き声を聞いて、俺は不愉快な気持ちになる。
……先を越された!
夕方、急に帰ってきたと思ったら、その手には鳥かごと妖精が握られていたのだ。まるで土産物を渡すように、ルナーラは俺たちに管理しろと言う。
悔しい。最初に妖精を捕まえるのは自分だと思っていたのに。
闇の国の大人たちは、ダークネスさまも含めて皆、妖精を欲している。妖精がいれば、闇の国は元の美しい世界に戻ると言うのだ。
正直、あんまり興味がない。
俺は乾いた闇の国しか知らないけど、そのままでも別に問題ないと思う。
食べ物は、ダークネスさまに頼めば出してくれるし、一日中遊んでていいのなら、そっちの方がいいと思うのだ。
何故、みんながそんなに妖精を求めて昔を懐かしんでいるのか、俺にはよく分からない。綺麗な場所がいいのなら、もっと住みやすい場所に移動すれば良いのにと思う。
ただ、ルナーラに先を越されたことだけが悔しい。
ルナーラにだけは負けたくなかった。
「お前たちは悔しくないのか? ルナーラに先を越されて」
俺の言葉に、妖精を眺めていたオッソとイエチェーが顔を向けてくる。
「うーん、悔しいけどルナーラだしなあ。そのうち勝てばいいだろ」
「そうそう。今は流石に勝てへんやろ。いつか絶対ギャフン言わせるけど」
イエチェーもオッソもルナーラに負けたことが悔しくないらしい。悔しくないから、そんな平然としていられるんだ。
俺だけなのか、こんなに悔しいのは。
この前のクー助の時のことだってそうだ。
何だよ前から友だちだったって。だからノーカンって。ルナーラはどこまで俺たちの先回りをしたら気が済むんだ。
イエチェーと裏庭で遊んでいた時、寝ているクー助を見つけた俺の喜びを返してほしい。
俺はルナーラが憎い。憎くてたまらない。
俺はルナーラに勝ちたいのだ。
ルナーラはおかしい。
村の大人たちは言葉を濁すけど、誰もがルナーラは天才だとこぼしていた。
5歳で読み書きを覚え、8歳から村の上役に混じって動き回り、12歳で闇国真拳の達人級に到達した。闇の国きっての天才だと。
ルナーラは絶対におかしい。
俺たちが地球にやってきた頃、俺たちはご飯を食べるにはお金というのが必要なことすら知らなかった。
それだというのに、同じく初めて来たはずのルナーラは、まるで知っているかのようにお金を稼ぎ、住む場所を見つけ、俺たちの世話をしている。
一番頑張っているのはルナーラで、全てをやっているのもルナーラだ。
その上、最初の妖精すら、ルナーラにとられてしまった。
妖精を一番最初に捕まえるのは自分だと、一番沢山捕まえるのは自分だと思っていたのに。
俺は悔しくてたまらない。
でも、嫌いじゃない。
ルナーラのことは、嫌いじゃない。
親たちすら忘れた俺たちの誕生日を、毎年祝ってくれたのは、ルナーラとトキ婆だけだった。
闇の国で俺たちと遊んでくれたのは、ルナーラだけだった。
それに、
――誰よりも闇の国の復興を願い、妖精を欲しているのは、ルナーラだった。
憎い。
自分が憎い。
役に立てないことが悔しい。
次こそは絶対、俺が妖精を捕まえるんだ。誰よりも沢山、妖精を捕まえるんだ。
俺は、ルナーラに認めてほしい。
ただ、喜んでほしかった。




