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35年ローンの一戸建てごと異世界転移した元教師、合気道と現代インフラで無双する~タダ飯人魚やヤンデレ兎が入り浸る最強マイホーム~  作者: 月神世一


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キャバクラ豪遊と第6聖獣の制裁

キャバクラ豪遊と第6聖獣の制裁

「いらっしゃいませーっ! 鮫島様、火原様! 本日はご来店、誠にありがとうございます♡」

 ポポロ村の隣町にある、絢爛豪華な高級キャバクラ『ルナティック・バタフライ』。

 店内には甘い香水の匂いと、アップテンポな魔導BGMが鳴り響き、煌びやかなドレスに身を包んだキャスト(嬢)たちが、テーブルを囲む男たちに甲高い声で媚びを売っていた。

 その中でもひと際大きなVIPルームのソファーに、ふんぞり返るようにして座っている二人の男がいた。

 テカテカの青スーツを着た鮫島と、安物のダブルスーツの胸元をはだけさせた火原である。

「ひゃはははっ! 飲め飲めぇ! 今日は俺の奢りだ! ドンペリ・ゴールド、もう一本追加で持ってこい!」

「火原さん、流石っス! いやぁ、やっぱり俺たちのマインドセットが間違ってなかったってことッスね! 成功者の波動が、俺たちをこのVIPルームに導いたんスよ!」

 鮫島が、金メッキの安物腕時計を見せびらかしながら、隣に座る獣人族(猫耳)のキャストの腰にいやらしく手を回す。

「え〜、鮫島さんすごぉ〜い♡ ITコンサルって、そんなに儲かるお仕事なんですかぁ?」

「当然っスよ。情弱に『夢』を見させてあげるのが俺のビジネス。俺のサロンに入れば、君も明日からタワマン住みッスよ!」

 ルナから受け取った『数十キロの純金の壺(三日限定)』。

 二人はそれを質屋に持ち込み、莫大な現金(金貨)に換金する……つもりだったのだが、「質屋で身分証明を求められたらヤバい」と鮫島のチキンな性格がブレーキをかけた。

 結果、「この純金の壺をそのまま担保(支払い)として店に預ければ、何日でも豪遊できるんじゃね?」というアホな結論に至り、この高級キャバクラに壺ごと持ち込んで、ここ三日間、文字通りの『酒池肉林』を繰り広げていたのである。

「おい、サファイアちゃん! 俺のグラスが空いてるぜ? 早く注いでくれよ!」

 火原が、鼻の下を伸ばしながら、魔族の美人キャストにベタベタと触る。

「やだぁ、火原さんったら強引なんだからぁ♡ でも、あの黄金の壺、本当に凄いですよねぇ。店長も『あれなら数千万のツケも余裕でカバーできる』って言ってましたよ♡」

「おうよ! 俺が遺跡から命懸けで発掘してきた国宝だからな! 俺の現場の腕力パワーと、鮫島のコンサルの賜物よ!」

 火原がガハハと下品に笑う。

 彼らは完全に有頂天だった。

 自分たちのスキルで作った泥の壺の『ステータス偽装』が四十八時間で切れたことなど、すでに頭にはない。なぜなら、彼らが担保にしている壺は、ルナが錬金術で作り出した『本物の純金』だからだ。

(……のはずだった。)

「さて、鮫島。そろそろいい時間だ。ここらで『お持ち帰り』と洒落込もうぜ」

 火原がニヤニヤと笑いながら立ち上がる。

「いいッスね! 俺たちのソリューション(夜の部)の始まりッスね!」

 鮫島がボーイを呼び止め、尊大な態度で指を鳴らした。

「おいボーイ。お会計チェックだ。あのカウンターの奥に預けてある『純金の壺』から、今日のドンペリ代と、嬢たちの指名料、全部引いといてくれ。釣りはチップでやるよ」

「……あ、少々お待ちくださいませ」

 ボーイが足早にバックヤードへと消え、数分後、店の奥から恰幅の良い店長が、額に嫌な汗を浮かべながらVIPルームへと駆け込んできた。

「さ、鮫島様、火原様……。大変申し上げにくいのですが……」

「あ? なんだよ。俺たちの純金の輝きに、目が潰れたか?」

 火原がゲラゲラと笑う。

「いえ、その……お預かりしていた『純金の壺』なのですが……」

 店長は、手にしたトレイを恐る恐る二人の前に差し出した。

「たった今……突然、ボロボロと崩れ始めまして……ただの『石っころ』になってしまったのですが……」

「「……は?」」

 トレイの上に乗っていたのは、黄金の壺ではない。

 そこら辺の河原で拾ってきたような、灰色でゴツゴツとした、ただの『汚い石の塊』だった。

 ルナの放った善意の偽金錬金術。

 その効果時間である『三日間(七十二時間)』が、まさに今この瞬間、完璧なタイミングで切れたのである。

「な、なんだこれは!? 俺たちの純金の壺はどうした! お前ら、裏で本物とすり替えやがったな!?」

 火原が顔を真っ赤にして、店長の胸ぐらを掴んだ。

「ひぃぃっ! ち、違います! 本当に、カウンターに置いてあった壺が、急にただの石に変わったんです! 鑑定魔法をかけても、魔力ゼロの『ただの石』だと……!」

「ふざけんな! んなオカルト現象があるか!」

 鮫島も顔面を蒼白にしながら、店長に詰め寄る。

「お、おい火原さん! ヤバいッスよ! これじゃ無銭飲食になる……!」

「……てめぇら。うちの店で、詐欺タダノミを働こうってのか?」

 騒ぎを聞きつけた店の奥から、屈強なオーク族や鬼人族の黒服(用心棒)たちが、指の関節をボキボキと鳴らしながらVIPルームを取り囲んだ。

「ひぃっ!?」

「ま、待て! 誤解だ! これは何かの手違いで……!」

 さっきまでふんぞり返っていた詐欺師コンビが、一瞬にして借りてきた猫のように縮み上がる。

 キャバクラの空気が、極上の悦楽から一転、一触即発の修羅場へと変貌した。

 逃げ場を失い、黒服たちにボコボコにされる寸前の火原と鮫島。

 だが、その騒ぎの余波は、運悪く(あるいは運良く)『隣のVIPボックス席』にまで及んでいた。

「……オイ」

 黒服たちと揉み合う火原の背中に、低く、ドス黒い殺気を孕んだ声がかけられた。

「あ?」

 火原が振り返った瞬間。

 隣のボックス席で、高級ドンペリのボトルの横に両足をドカッと投げ出し、昭和の香り漂う無骨なタバコ(ショートホープ)を深々と吹かしている一人の男がいた。

 超絶美形のヤンキー顔。

 ビシッと固められた黄金のリーゼント。

 そして、その足元には、どんな修羅場でも絶対に脱げない『便所サンダル』。

 第六の聖獣にして、次元超越能力を持つ最強の調停者――麒麟キリンこと、陸奥騎麟むつ・きりん

 裏社会のゴロツキたちから畏怖を込めて『リキ兄貴』と呼ばれる男である。

「な、なんだテメェは! 今俺たちは揉めてるんだ、すっこんでろ!」

 火原が、ガテン系の腕力を頼りにリキ兄貴を威嚇する。

 リキ兄貴は、ショートホープの煙をふぅっと吐き出し、ゆっくりと立ち上がった。

 その瞬間、彼の背中に刺繍された『第6聖獣 麒麟降臨』『全国制覇』の文字が、室内の魔導照明を反射してギラリと輝く。

「……揉めるのは勝手だがな。テメェらのそのみみっちい怒声のせいで……隣に座ってるネーチャンが、怯えて震えてんだろうが」

 リキ兄貴の視線の先では、彼を接客していたウサギ耳のキャストが、火原たちの怒号にビクビクと肩を震わせていた。

「酒場ってのはなぁ、美味い酒を飲んで、ネーチャンと楽しく話すためにあるんだ。無銭飲食で店に迷惑かけた挙句、ネーチャンを怖がらせるようなマネすんじゃねぇよ。……酒が不味くなるだろうが」

「あぁ!? 便所サンダル履いた金髪ヤンキーが、偉そうに説教垂れてんじゃねぇぞ! 俺は現場の男だ! テメェなんか一発で……!」

 火原が、右ストレートをリキ兄貴の顔面に向かって振り抜いた。

 しかし。

 リキ兄貴の姿は、火原の拳が届く直前で、まるで陽炎のようにフッと空間からブレて消滅した。

「え?」

 火原の拳が空を切り、彼がバランスを崩した瞬間。

「男なら、サクッと喧嘩でケジメつけろや」

 火原の背後――『次元の隙間』から突如として現れたリキ兄貴が、紫銀色に輝く極大の電撃(神の雷)を右拳に纏わせていた。

 聖雷・鉄拳制裁ゴッドサンダー・ナックル

「オラァッ!! 歯食いしばれや!!」

 ズドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

「あべぼぁァァァッ!!?」

 数億ボルトの聖なる雷を帯びたリキ兄貴の右ストレートが、火原の顔面にクリーンヒットした。

 物理耐性も魔法耐性も一切無視した、次元を超越する神の制裁。

 火原の巨体は、凄まじい雷光と共にキャバクラのVIPルームの壁を紙くずのようにぶち破り、そのまま夜空の彼方へと星になって飛んでいった。

「ひぃぃぃぃっ!?」

 鮫島が、そのあまりにも理不尽な暴力(次元神のヤンキーパンチ)を目の当たりにして、股間を濡らしながらその場にへたり込んだ。

「あ? なんだ、テメェも一緒に空飛びたいか?」

 リキ兄貴が、紫電をバチバチと纏わせた拳をポキポキと鳴らしながら、鮫島を見下ろす。

「ご、ごめんなさいぃぃっ! 許してください! 俺はただのコンサルで……!」

「コンサルだか何だか知らねぇが、酒場のルールも守れねぇダサい野郎は、俺の視界から消えな」

 リキ兄貴が、サンダル履きの足をスッと上げた。

 次元跳躍・背後カカト落とし。

「ママァァァァァッ!!」

 ドッバァァァンッ!!

 雷鳴と共に振り下ろされたサンダルの一撃で、鮫島は床の絨毯を突き破り、一階の路地裏まで一直線に叩き落とされた。

「……ふぅ。やれやれ。これでやっと静かに飲めるぜ」

 リキ兄貴は、壁にポッカリと空いた大穴を全く気にする様子もなく、再びソファーにどっかりと腰を下ろした。

「オイ、店長。あのバカ共がぶち壊した壁の修理代、俺のツケに回しとけ。……さ、ネーチャン、飲み直そうや」

「あ……はいっ♡ リキ兄貴、かっこいいですぅ!」

 震えていたキャストが、頬を染めてリキ兄貴の腕にすがりつく。

 こうして、純金の壺(偽)で豪遊を企てた詐欺師コンビは、ルナの善意の時限爆弾によって無銭飲食犯に転落し、ヤンキー聖獣の理不尽な次元パンチによって、夜の街から物理的に放逐されたのである。

 だが、彼らの地獄はまだ終わっていなかった。

 ボロボロになって逃げ帰る先――ポポロ村には、すでに加藤真守が敷いた『特定商取引法に基づくクーリングオフ包囲網』が、大きく口を開けて待っていたのである。

読んでいただきありがとうございます。

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