↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35年ローンの一戸建てごと異世界転移した元教師、合気道と現代インフラで無双する~タダ飯人魚やヤンデレ兎が入り浸る最強マイホーム~  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/52

荒稼ぎと不穏な影

荒稼ぎと不穏な影

 家屋サイズの『怪獣トマト』騒動を経て、加藤真守は一つの合理的な結論に達していた。

 ――ルチアナ(とルナ)に農業をやらせるのは、ポポロ村の存亡に関わるリスクである。

「農業適性はゼロ、というかマイナスだ。お前を畑に出すくらいなら、俺が一人でやった方が百倍マシだ」

「えへへ……ごめんね?」

 リビングのソファで、ルチアナが申し訳なさそうに(しかし内心ホッとした顔で)頭を掻いた。

「だが、借金は返させる。そこでだ、キュララ」

 マモルは、空中に魔導カメラを浮かべて『マイホームの日常配信』を行っていた天使族のトップ配信者、キュララを指名した。

「はーい! キュララだよ! マモルお兄さん、私に何か用?」

「お前のチャンネルを使って、こいつ(ルチアナ)の借金返済企画をやる」

 マモルの冷徹なプロデューサーの目が光った。

「農業がダメなら、エンタメで稼ぐしかない。お前のチャンネルは神々が見ている『ゴッドチューブ』の中でもトップクラスの同接を誇っているんだろう? そこに『借金まみれの駄女神が身体を張るチャレンジ企画』を流せば、面白がってスーパーチャット(投げ銭)が集まるはずだ」

「なるほど! ルチアナ先輩の転落人生ドキュメンタリーね! 撮れ高バッチリよ!」

 キュララが羽をパタパタさせて賛同する。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私、偉大なる世界神なのよ!? なんで神様がリスナーの笑い者になってスパチャを乞わなきゃいけないのよ!」

「嫌ならカスタマーハラスメント部に通報する。漁船でマグロを釣るか、配信で稼ぐか、どっちだ?」

「……配信でお願いしますぅ」

 マモルの容赦ない二択に、ルチアナは即座に屈服した。

   * * *

 数時間後。

 キュララのゴッドチューブ・チャンネルにて、緊急生配信がスタートした。

『【放送事故!?】借金100万抱えた駄女神・ルチアナ先輩が激辛ラーメン完食で借金返済チャレンジ!!』

「はーい、リスナーの皆! キュララだよーっ! 今日はなんと、あの世界神ルチアナ先輩がゲストに来てくれましたー!」

 キュララが元気よくカメラに手を振る。

 その横には、エンジ色のジャージ姿で「どうして私がこんな目に……」と涙目で座っているルチアナの姿があった。

『草』

『ルチアナ様何やってんのwww』

『ジャージ姿ダサすぎww』

『借金ってマ? 神の威厳ゼロじゃん』

 空中のウインドウに、神々(リスナー)からの草(w)と煽りコメントが猛烈な勢いで流れていく。

「さぁ、ルチアナ先輩! 目の前にあるこの赤いマグマのような物体、説明をお願いします!」

「うぅっ……マモルが作った、『ルナミス帝国産・超絶激辛デス・ラーメン』よ……。匂いだけで目が痛いわ……」

 テーブルに置かれていたのは、マモルが地球の激辛知識と、異世界の凶悪な香辛料をブレンドして創り上げた、地獄のような赤黒いラーメンだった。

「いいか、ルチアナ。制限時間は三十分。スープまで一滴残らず完食できれば、リスナーからの『赤スパ(高額投げ銭)』でお前の借金は完済できる算段だ」

 カメラ外から、マモル(プロデューサー)の冷静な声が飛ぶ。

「分かったわよ! やってやろうじゃないの! 月人くんへの愛(と借金返済)のためなら、激辛ラーメンくらい!」

 ルチアナは覚悟を決め、真っ赤な麺を豪快に啜った。

「ズズッ……!! …………ぶほぁぁぁぁぁっ!!?」

 一口食べた瞬間、ルチアナの目、鼻、耳から同時に蒸気が噴き出した。

「か、辛ぁぁぁいっ!! なにこれ、マグマ!? 舌が、舌が溶けるぅぅっ!」

「水は一杯までだ。さぁ、泣き言を言ってないで食べろ。エンジェル・カードの督促状が泣いてるぞ」

「鬼! マモルの鬼ぃぃっ! ヒィーッ、ハァーッ!」

 涙と鼻水を流し、ジャージを汗びっしょりにしながら、悶絶してラーメンをかき込む駄女神。

 そのあまりにも哀れで、かつ見事なリアクションに、ゴッドチューブのコメント欄は爆発的に盛り上がった。

『ルチアナ様頑張れwww』

『自業自得すぎて草生える』

『オカンPのツッコミ的確すぎだろ』

『【スーパーチャット 10,000G】月人くんのライブ、次も行けるといいですね!』

『【スーパーチャット 50,000G】これでお水買ってくださいww』

 画面には、赤、青、黄色のスーパーチャットが滝のように降り注ぎ、収益メーターが凄まじい勢いで跳ね上がっていく。

「いいぞ、その調子だ。リスナーの同情と笑いを誘え。もっと顔をしかめろ」

「もうやだぁぁぁっ! マモルぅ、お腹痛いよぉぉ!」

 マモルの冷徹なプロデュースと、ルチアナの体を張った芸人魂(?)が、奇跡の化学反応を起こしていた。

   * * *

 一方、その頃。

 天界セレスティアの、薄暗い高級マンションの一室。

「チッ……目障りなババアだ」

 専用のマイタンブラーでカプチーノを啜りながら、大型モニターを睨みつけている男がいた。

 最近神界に入った新入りの世界神、炎上神ワイズである。

 復讐や『ざまぁ系』の過激なヤラセ配信を得意とし、PV(視聴率)のためなら人間が何人死のうが構わないという、サイコパス気質の男神だ。

「俺が裏で魔王軍に村を焼き討ちさせて作った『勇者の悲劇配信』よりも、あんな駄女神のラーメン完食配信の方が同接(同時接続数)が上だと? ふざけるな」

 ワイズは、イラつきながらエンジェル・すまーとふぉんを操作した。

 彼の配信スタイルは『炎上』だ。他人の平和な配信をぶち壊し、惨劇に塗り替えることで数字を奪い取る。

「ポポロ村だったな。近くのダンジョンから、S級の魔物でもけしかけてやるか。激辛ラーメンを食ってる最中にバケモノに襲われて、泣き叫びながら死にかけるルチアナ……うん、最高の『炎上ざまぁ』になるな」

 ワイズは邪悪な笑みを浮かべ、スマートフォンの『事象改変ヤラセアプリ』を起動した。

 ターゲットをポポロ村のルチアナの現在地(加藤真守のマイホーム)に設定し、『S級魔物・強制転移』のボタンをタップする。

 ――ピーーッ!

 しかし、スマートフォンの画面に赤いエラーウィンドウがポップアップした。

『エラー:対象エリアへの干渉に失敗しました』

『理由:対象エリアは【絶対防御結界(女神ルチアナ承認済み権限・敷地権100%)】に保護されています。外部からの物理的・魔法的・事象的干渉はすべて無効化されます』

「……は?」

 ワイズは眉をひそめ、何度も画面をタップしたが、結果は同じだった。

「なんだこの結界は? ただの人間の家に、神の事象改変すら弾くプロテクトが掛かっているだと? ……ルチアナのババア、自分の身を守るためにあんなチート結界を張ったのか」

 ワイズは舌打ちをし、スマートフォンをソファに放り投げた。

「チッ、まあいい。家の中に引きこもっている間は手が出せねぇが、一歩でも外に出た時が最後だ。お前のそのお笑い配信、最高に胸糞悪い『炎上悲劇』にすり替えてやるよ」

 カプチーノを飲み干し、ワイズは暗い瞳でモニターの中のルチアナを睨み据えた。

   * * *

「……ゴチソウ、サマ……デシタ……」

 ポポロ村のマイホーム。

 真っ白に燃え尽きたルチアナが、空になったラーメンどんぶりを前に、口から一筋の煙を吐き出してソファに倒れ込んだ。

「やったーっ! ルチアナ先輩、完食です! そして皆様……目標金額の100万ゴールド、達成しましたーっ!!」

 キュララが歓喜の声を上げ、画面は祝福のコメントと大量のスパチャで埋め尽くされた。

「……よくやった、ルチアナ。これでリボ払いの借金も全額完済できるな」

 マモルは、汗だくのルチアナに冷たい水の入ったグラスを差し出しながら、少しだけ口角を上げた。

「水ぅぅぅ……! ゴクゴク、ぷはぁぁっ! や、やったわ……! これで黒服のレスラーに怯えなくて済むのね……!」

 ルチアナはグラスの水を一気飲みし、涙を流して喜んだ。

「やれやれ。これでようやく、厄介な借金問題も片付いた。明日からまた、平穏な日常に戻れるな」

 マモルは肩の荷が下りたように息を吐いた。

 しかし、異世界オカンの苦労は、決して終わらない。

 手元に大金を手にした『学習能力ゼロの浪費家女神』が、この後どんな暴挙に出るか――マモルの理系脳をもってしても、予測不可能な事態がすぐそこに迫っていたのである。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。