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35年ローンの一戸建てごと異世界転移した元教師、合気道と現代インフラで無双する~タダ飯人魚やヤンデレ兎が入り浸る最強マイホーム~  作者: 月神世一


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先生の背中と、囮の三節棍

先生の背中と、囮の三節棍

 ダダダダダダダダダダッ!!

 ポポロ村の防壁付近では、キュララの放つ5・56ミリ弾の雨と、死蟲機ネクロバグの群れがぶつかり合う凄惨な音が響いていた。

 機械の関節が軋む音、不気味な複眼を赤く光らせて迫る無数の死蟻機ネクロアントたち。そのグロテスクな大群を前に、自警団の面々は必死の防衛戦を展開していた。

「オラァッ! まとめてスクラップになりやがれェッ!」

 最前線で両手斧を振り回し、死蟲機を次々と叩き割っているのは竜人族のイグニスだ。先日、マモルに完膚なきまでに『教育』された彼は、力任せの粗削りな動きを改め、無駄な闘気の消耗を抑えた洗練された動きで敵を粉砕していた。

「イグニス! 戦況はどうだ!」

 キャルルたちを引き連れて前線に到着したマモルが声をかける。

「マモル! いや、マモル先生! ご覧の通りだ!」

 イグニスは斧を振り抜きながら、忌々しげに舌打ちをした。

「個々の強さは大したことねぇ。だが、倒しても倒しても、森の奥から湧いて出てきやがる! まるで底の抜けたバケツだぜ!」

 マモルは目を細め、森の奥から一定のペースで溢れ出てくる死蟲機の群れを観察した。

 脳内で瞬時に、敵の出現間隔と増加ペースをグラフ化する。

「……等比級数的に増殖しているわけではないな。出現のペースが完全に一定だ。ということは、どこかに奴らの『生産工場』があるはずだ」

「生産工場……つまり、親玉がいるってことですか?」

 パイルバンカーを構えたマンミアが問いかける。

「ああ。おそらく『マザー型』が陣取って、後方で延々と兵隊を産み出し続けているんだ。小兵をいくら叩いてもキリがない。元凶を潰すぞ」

 マモルは振り返り、自らの『教え子』や『居候』たちを見渡した。

「キャルル、リーザ、キュララ。お前たちは俺と一緒にマザーを叩きに行くぞ」

「はいっ! マモル先生と一緒なら、どこへでも行きます!」

 キャルルがウサギの耳をピンと立てて元気よく返事をする。

「タダ飯の恩は、きっちりこのお賽銭箱型掃除機で返して見せますわ!」

 リーザも芋ジャージの袖をまくり、鼻息を荒くしている。

「私も行こう。天使族ごときに良い格好ばかりさせられんからな」

 不敵な笑みを浮かべて前に出たのは、魔族のルーベンスだ。彼の指先には、すでに濃密な闇の魔力がチロチロと揺らめいている。

「頼もしいな。マンミア、イグニス! ここの防衛ラインはお前たちに任せる! 一匹も村に入れるなよ!」

「任せてください、先生!」

「おうよ! 死んでも通さねぇ!」

 教え子たちの頼もしい返事を聞き届け、マモルはキャルルに視線を向けた。

「キャルル、お前の聴覚と嗅覚で、一番デカい個体の位置を特定できるか」

「はい! ……あっちです! 森の少し奥まった場所に、大量の金属が擦れ合うような嫌な音と、機械油の匂いが集中しています!」

「よし、行くぞ!」

   * * *

 キャルルの案内で森を突き進むこと数分。

 巨大な木々が開けた広場に、その異形の怪物は陣取っていた。

 体長十メートルはあろうかという、巨大な蟻と要塞を掛け合わせたようなバケモノ。

死王蟻機ネクロハイヴクイーンアント』である。

 怪物の巨大な腹部が脈打つたびに、ガチャリ、ガチャリという金属音と共に、新たな死蟻機が次々と産み落とされ、村の方向へと行軍を開始していく。

「いたわね、デカブツ! リスナーのみんな、ここが今日のハイライトよ! 赤スパの準備はいい!?」

 キュララが、空中に浮かぶ魔導カメラに向かってウインクを決めると、間髪入れずに手にしたM4カービンの引き金を引いた。

 ダダダダダダダダダッ!!

 凄まじい発砲音が森を震わせ、5・56ミリ弾が死王蟻機の巨大な身体へと殺到する。

 だが――

 カンッ! キンッ! ガキンッ!

「ええっ!?」

 キュララが素っ頓狂な声を上げた。

 死王蟻機の全身を覆う漆黒の装甲板は、歩兵用の小銃弾をいとも簡単に弾き返していたのだ。火花が散るだけで、有効なダメージを与えられているようには見えない。

「ギギ……ギィィィィィッ!!」

 銃撃に気づいた死王蟻機が、怒りに満ちた機械音の咆哮を上げ、六本の巨大な脚をワシャワシャと動かしてこちらへ向き直った。

 その口元には、金属すら溶かす猛毒の酸がドロリと垂れている。

「うぇぇぇん! 弾が弾かれちゃうよぉ!」

 キュララが泣きべそをかきながら、リロードのためにマガジンを投げ捨てる。

「それに、このままフルオートで撃ちっぱなしにしてたら、銃身バレルが熱で歪んで壊れちゃうし、弾薬費でスパチャの儲けが飛んじゃうよぉ!」

「(……天使が銃のオーバーヒートと弾薬のコストを気にするな)」

 マモルは内心で冷静にツッコミを入れつつ、状況を再演算した。

(敵の装甲は分厚い。だが、関節部や頭部のセンサーなど、脆い部分は必ずある。俺がネギオの打った特製三節棍を使って、ピンポイントで関節の隙間を破壊していけば、一人でも倒せないことはない、が……)

 マモルは、チラリと後ろに立つ少女たちと、魔族の青年を見た。

 村を守ろうと震えながらも武器を構えるキャルルとリーザ。

 そして、魔力を高めているルーベンス。

(……教師が全部の答えを書いてやって、どうする)

 ここで自分が一人で無双してしまえば、たしかに安全で確実だ。

 だが、それでは彼女たちの『自立』には繋がらない。

 生徒が自らの限界を超え、ポテンシャルを最大限に発揮できるような環境ステージを整え、背中を押してやる。それこそが『教育者』の役割である。

 マモルは、腰の布袋からネギオ特製の三節棍を静かに引き抜いた。

 鈍い銀色の輝きを放つその武器を両手で構え、マモルは力強く叫んだ。

「お前ら、よく聞け!」

 その声は、戦場の喧騒を切り裂き、全員の鼓膜にハッキリと届いた。

 振り返ったマモルの目は、普段の呆れたような『オカン』の目ではない。頼りがいのある、絶対的な『先生』の目だった。

「奴の装甲は硬いが、必ずどこかに限界がある。俺が前に出て、奴の攻撃を全て引きつける! ヘイトを俺に集中させるから、お前らはその間に最大火力を準備しろ! 俺が隙を作った瞬間に、全員の持てる最高の技で、あのデカブツをぶっ飛ばせ!」

 その無謀な作戦に、キャルルが青ざめて叫んだ。

「ダ、ダメですマモルさん! いくらマモルさんが武術の達人でも、あんな巨大なバケモノの攻撃をまともに受けたら、人間の身体なんて一溜まりもありません!」

 たしかに、死王蟻機の前脚の振り下ろしは、家屋を簡単に叩き潰すほどの質量がある。まともに受ければ、合気道の達人であろうとミンチになるのは明白だった。

 だが、マモルは口角をわずかに上げて、不敵に笑った。

「バカ言え。誰が『まともに受ける』と言った」

 マモルは、大地を蹴った。

 魔法による身体強化も、闘気による加速もない、純粋な人間の歩法。

 だが、無駄を完全に削ぎ落としたその動きは、滑るように死王蟻機の懐へと肉薄していった。

「ギィィィッ!」

 自分に向かって一直線に向かってくる矮小な人間に気づいた死王蟻機が、巨大な鎌のような前脚を大上段から振り下ろす。

 風を裂く轟音。直撃すれば即死。

 だがマモルは、その巨鎌の落下軌道と速度を、寸分違わず見切っていた。

「フッ!」

 半身を開き、わずか数センチの体捌きで死の刃を躱す。

 そして、地面に激突しようとする前脚の側面に、三節棍の先端を軽く叩きつけた。

 力は要らない。ベクトルの方向をほんの少しだけズラしてやるだけでいい。

 ズゴォォォォンッ!!

 マモルの横スレスレを通り抜けた巨鎌が、自らのパワーに振り回されるようにして、隣の地面を深く抉った。

「ギ、ギュル……!?」

 体勢を崩した死王蟻機が、慌てて残りの脚でマモルを薙ぎ払おうとする。

 それに合わせて、マモルは舞うように回避と牽制を繰り返した。

 右へ、左へ。

 頭上から降り注ぐ溶解液(酸)の雨を、三節棍をプロペラのように回転させて生み出した風圧で弾き飛ばす。

 巨大な質量による蹂躙を、合気道の理合でことごとく空振りさせ、敵のバランスを執拗に崩し続ける。

 それはまさに、神がかった曲芸だった。巨象にまとわりつく蜂のように、マモルは一切のダメージを受けることなく、敵の注意ヘイトを100%自分に釘付けにしていた。

「こっちだ、デカブツ! 動きが単調すぎるぞ! そんな計算しやすいベクトルじゃ、俺には一生当たらない!」

 マモルが三節棍の先端で、死王蟻機の複眼をペチンと叩く。

「ギギギギィィィィィッ!!!」

 完全に激昂した死王蟻機が、後方の生徒たちには目もくれず、全エネルギーをマモル一人に向かって注ぎ込み始めた。

「……信じられない。ただの人間が、あの怪物と真っ向から渡り合っているだと?」

 ルーベンスが、呆然と呟く。

「違うわ! マモル先生は、私たちに『時間』を作ってくれているの!」

 キャルルが、自らの両足に全闘気を込めるべく、深くクラウチングスタートの姿勢をとった。

「先生が命懸けで作ってくれたチャンス……無駄にはしませんわ!!」

 リーザも、両手を胸の前で組み、自らの内に眠る人魚族の魔力を極限まで高め始めた。

「……そろそろいいか!」

 マモルは、死王蟻機の前脚を三節棍で大きく弾き飛ばし、怪物の胸元に巨大な隙(ガラ空きの空間)を作り出した。

「今だ! お前らの本気を見せてみろ!!」

 マモルのげきが、戦場に響き渡った。

 その言葉を合図に、教え子たちの『最大火力』が、一斉に解き放たれようとしていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

「マモル先生、囮としての立ち回りがプロすぎる!」

「一切被弾しない合気道回避カッコいい」

「いよいよヒロインたちの最大火力が炸裂します!」

と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部より【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価ポイントを入れて応援していただけますと幸いです!

皆様の応援が、マモル先生の三節棍のワックス代(作者のモチベーション)になります!

次回、第15話「教え子たちの見せ場」!

ヒロインたちの隠されたポテンシャルが爆発! そして天界では……!? お楽しみに!

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