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060 護りたいんです!



 ステラに睨まれて意識が遠のき、体が(くずお)れそうになるルキウス。



 「ルキウス様!」



 あわててフェリシアがルキウスを支える。



 「……ありがとう……フェリス」



 また意識を失いかけた。だいぶ慣れたと思っていたが、正面から目を合わせるとまだ意識が飛ぶ。



 (情けない……)



 ルキウスは、フェリシアに支えてもらいながら、ふらつく足を踏ん張って立つ。そして……



 「……わからない、わからないけど僕は、あなたを、ステラさんを護らないといけない、そういう気がするんです。継嗣戦だろうと関係ない。僕は護る。あなたを、あなたたちを……」



 夢。ステラと初めて会い意識を失ったときに見た夢を、あの二人のことを、ルキウスはここで暮らすようになってから毎日のように見ていた。



 場面は毎回違う。断片的だし、おそらく時系列もバラバラだ。そして、その夢を見るたびにとても悲しくなる。辛くなる。切なくなる……



 だが、こうも思う、強く、思う――護らなければ――絶対に、護らなければ!



 ルキウスは、意識を必死に保ちながら、ステラを見続ける。



 ステラはゆっくりと息を吐きながら、悲しい色を宿した()を、ルキウスから外した。



 「あなたは継嗣戦のことをどれだけ知っているのですか? 継嗣戦は殺し合いなんです。魔獣を狩るのとはわけが違います……」



 言いよどむステラ。だが気を取り直し、



 「……あなたは……あなたに人を殺すことができるのですか。……わたしたちを守るということだけで、よく知りもしない人を殺せるのですか? 竜眼主になってしまっただけ、大切な人を守りたいだけ、ただそれだけの、善良かもしれない人を、殺せますか? それに……あなたも、あなただって殺されるかもしれない……わたしたちなんかを……守ったためにです!」



 (……ころす……ころされる……)



 継嗣戦についてはルキウスも調べた。陰惨だった。恐ろしくなった。



 だから知ってはいる……だけど、わかってなどいない……本当の恐ろしさなど……わかるわけがない……



 汚さなければならない手……奪うかもしれない命……奪われるかもしれない命……



 継嗣戦とは、殺すことであり、殺されることでもある。改めてその事実をつきつけられ、身がすくむルキウス。だけど……



 ステラは続ける……



 「私たちはある(しる)べによってこの王都に来ました。ですが、いつかはここを去らねばなりません。継嗣戦はまだ何年も続きます。ルキウスさんは、私たちと一緒にビタロスを出て、半世界中を回りながら殺し合いができるのですか? わたしは……わたしは、あなたにそんなことをして欲しくは……ありません」



 溢れそうになる涙を堪え、震える声で訴えるステラ。



 ルキウスの、心が揺らぐ。だが……



 「……あなたたちだって……戦ってきたじゃないですか。僕だって……」



 「できません! あなたにはできませんし、して欲しくありません! わたしたちとあなたは違うんです。わたしたちは……わたしたちは、竜眼の血でつながった家族なんです。ジョルジョさんもグレタさんもアリアもアンナも……みんな、わたしの衛士です! みんなの命はわたしと共にある。わたしの死は自らの死です。みんながわたしを守るのは自らの命を守るのと同じなのです。でも、あなたは違う……あなたがわたしを守らなければならない理由など、ありません!」



 (……みんな衛士だったのか……)



 幼いアリアとアンナまで衛士だという事実には愕然とする。だがそれでも……



 「それでも僕はあなたを護りたい! 理由なんてなくてもいい! 護りたいんです!」




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