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第25章 闇に墜ちた勇者

「ク、ク、ク……」


 そのときだ。

 玉座の奥から、低い笑い声が響いた。


 闇の中から、凄まじい威圧感をまとった存在が姿を現す。

 巨躯。2メートルを超える長身に、漆黒の鎧をまとった異形。

 その頭には禍々しい角が二本生え、赤く燃える双眸が俺たちを睨みつけている。


 魔王。

 これが、この時代の魔王か。


 だが、その瞬間。

 俺の隣にいたリプリカ様が、ぞっとした顔になった。

 大魔女リプリカの顔から、一切の血の気が引いたのを俺は見た。

 こんな表情のリプリカ様は、初めて見る。


「……リプリカ様?」


「エルド……あの魔王は」


 リプリカ様は、声を震わせた。


「あの魔王は初代魔王ではない」


「は?」


「11代目勇者のアークが倒した魔王と……同じものじゃ!」


「なっ――!?」


 リプリカ様の言葉に、俺の思考は一瞬停止した。

 アークが倒した魔王。あの未来の世界で、世界を恐怖に陥れた魔王と、同じだって?


「嘘だろ……あいつは、アークが倒したはずじゃ……」


「ク、ク、ク……ハーッハッハッハッハ!!」


 魔王が、哄笑した。

 その笑い声は魔王城全体を震わせ、天井から砂粒がぱらぱらと落ちてくる。


「よくぞ見抜いた、魔女よ。そう――余はお前たちの知る魔王。11代目の勇者アークに敗れた、あの魔王だ」


「どういうことだ!」


 俺は叫んだ。


「貴様はアークが倒したはずだろう! 魔王は滅びたんじゃないのかよ!」


「滅びた? ハッ! 確かに余の肉体はあの小僧に破壊された。だが――思念は残ったのだ」


 魔王は、語り始めた。


「肉体は滅んでも、思念体として余は存在し続けた。そして余は考えた。未来で敗れたのならば、過去を変えればよい、とな」


「過去を……変える……」


「余は時の狭間を漂い、この時代に辿り着いた。初代勇者がまだ勇者として覚醒していない時代にな。そしてこの時代の初代魔王に憑依した。初代魔王の肉体と、余の思念が合わさったこの身体は、かつての余以上の力を持っている」


 リプリカ様が、歯を食いしばった。


「なんということじゃ……。勇者アークが倒したと思っていた魔王は、完全には滅んでいなかった……!」


「そしてまず余がやったことは、勇者の排除だ」


 魔王は、アリアに視線を送った。

 闇に堕ちた瞳のアリアは、ぴくりとも動かない。操り人形のように立ち尽くしている。


「余は初代勇者アリアの存在を知っていた。なにせ未来で勇者どもに散々苦しめられたからな。その初代を潰せば、すべての勇者は生まれなくなる」


「お前が……アリアの両親を殺したのか」


「そうだ。魔王軍をあの山に送り込み、狩人の夫婦を殺した。――アリアも殺すつもりだったのだがな」


 魔王は、忌ま忌ましそうに口元を歪めた。


「勇者の才能というのは厄介なものだ。殺そうとした瞬間、あの小僧から勇者の光が発動した。殺すことができなかった。ならば――利用することにした」


「闇の心を植え付けて、洗脳した……ということか」


「その通りだ。いまやアリアは余の忠実なる剣。勇者の力を持ちながら、闇に染まった最強の駒よ」


 魔王は、残酷な笑みを浮かべた。


「さあ、アリアよ。侵入者どもを排除せよ」


 闇の瞳が、こちらを向いた。

 アリアが――初代勇者が、俺に向かって剣を構え、地を蹴った。


「くっ――!」


 がきぃぃんっ!!

 俺の魔刀工の剣と、アリアの剣が激突する。

 衝撃波が広間全体に広がり、床の石が砕けて飛散した。


「す、すごい……!」


 ルティナ姫が、思わず後退する。

 アイネスもクロエも、その凄まじい衝撃に目を見開いていた。


「こ、これは……次元が違う……!」


 アイネスが呻く。

 その通りだ。この戦いは、ルティナ姫たちとは文字通り、次元が違う。

 加勢しようにも、近づくことすら危険だ。


「姫たちは下がっていろ!」

 俺は、魔刀工の剣を構えた。


「闇に染まった、勇者アリアは俺がやる! みんなは手を出すなよ!」


 それが俺の義務だと思った。

 未来の親友の先祖。初代勇者。

 それが魔王の手に落ちたというのなら、俺が、この俺が倒さねばならない!


「いくぞ、アリア!」


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