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33話 クリスマスのプレゼント交換で


 その後も、ババ抜きや大富豪など、いくつものゲームをして遊んだ。

 

 気が付けば、すっかり時間も遅くなっている。


「そろそろ、ひまり寝かせてくるね」

 色晴がそう言って、眠そうにしていたひまりを連れてリビングを出ていく。

 しばらくして、色晴が戻ってきた。


「お待たせ。それじゃあ、そろそろメインイベント始めよっか」

「メインイベント?」

 蓮が首を傾げる。

「プレゼント交換だよ」

「待ってました!」

 蓮が嬉しそうに声を上げる。


 色晴はみんなの持ってきたプレゼントを集めると、一つずつ白い紐を結び始めた。

「……何してるんだ?」

 三が尋ねる。

「見てれば分かるよ」

 そう言って、色晴は全てのプレゼントに紐を結び終えると、それらを一つの大きな袋へと入れていった。


「よし、準備完了!」

 色晴は大袋から伸びる白い紐を指差した。

「みんな、この中から一人一本ずつ紐を選んで引いてね。その先にあるプレゼントが、自分のプレゼントだから」

「なるほどな」

 全員が袋から伸びる紐を一本ずつ掴む。

「みんな準備できた? じゃあ、いくよ」

「せーの!」

 一斉に紐を引く。

 袋の中から、次々とプレゼントが引きずり出されていく。


「おおっ!」

 その中でも、ひときわ大きな包みを引き当てたのは蓮だった。

「よっしゃ! これ一番でかくねぇか!?」

 蓮が嬉しそうに包みを抱える。

 しかし、すぐにその表情が固まった。

「……ん?」

 包みの中から出てきたのは、何やら妙な箱だった。

 蓋を開けた瞬間。


 バネ仕掛けの何かが飛び出した。

「うわっ!」

「ははっ!」

「……」

 蓮が驚いて後ずさる。

「おじさん、それ僕が準備した」

 柊が得意げに言った。

「お前かよ!」

「びっくりした?」

「やったな……!」

 蓮が恨めしそうに柊を見る。

「まあまあ」

 色晴が笑いながら口を挟んだ。

「流石にそれだけじゃあれだから、一応その下にちゃんとプレゼント入ってるよ」

「そうなのか?」

 

 蓮は箱の中を探る。

「……お?」

 下から出てきたのは、一枚のハンカチだった。

「おお、ハンカチか」

 蓮はそれを手に取ると、柊へ向き直る。

「柄いいじゃん。大事に使うよ」

「……うん」

 柊は少し照れくさそうにしていた。

 その様子を横目に、三は自分の引いたプレゼントへ視線を落とす。

 

 三のプレゼントは、ハンドクリームだった。

「それ、私が選んだやつだよ」

 色晴が言う。

「そうなのか」

「うん。香りはちょっと女子っぽいんだけどね」

 色晴は楽しそうに笑った。

「まあ、坂倉から可愛い匂いがするってことで」

「……」

 三は手の中のハンドクリームを見る。

 使う時は少しだけにしよう。

 三は心の中でそう決めた。

 

 色晴が引き当てたのは、明らかに高そうな包みに入ったチョコレートだった。

「これ……私がもらっていいの?」

 色晴は包みをじっと見つめる。

「……私が選びました」

 優が小さく手を挙げた。

「優ちゃんのなんだ。……高そう」

 色晴は少し緊張した様子で、包みをそっと持ち上げる。

「そんなに高いものじゃないですよ」

 優が答える。


 実際にはそこまで高価なものではないらしい。ただ、一粒あたりの値段を考えると、なかなか手を出しにくいタイプのチョコレートだった。

「大事に食べるね」

 色晴はそう言って、嬉しそうに微笑んだ。

 そんな中、三はふと周囲を見渡した。

 自分が選んだプレゼントは、誰の手に渡ったのだろう。


「……あ」

 三の視線が止まる。

 優が持っている。

 その手にあるのは、三が咲と一緒に選んだ手袋だった。

 女子に渡ることを前提に、二人で選んだものだ。

 見た目は少し可愛らしさがあり、サイズも女性向けにやや小さめ。その代わり、見るからに暖かそうなものを選んだ。

 もし蓮に渡っていたら、たぶんピチピチだっただろう。


「……」

 三は改めて優の手元を見る。

 手袋は優の手によく馴染んでいるように見えた。

 そう思ったところで、優が三を見つめていることに気づいた。


「これ、三くんが選んだんですよね?」

「……ああ」

 ぎこちなく三は答える

「これ可愛いです。三君、センスいいですね」

「……咲にアドバイスもらったんだ」

「そうなんですか?」

 優は手袋を見つめながら、嬉しそうに微笑んだ。

「大事に使わせてもらいます」

「……おう」

 三は少しぶっきらぼうに返した。

 その一方で、穂花が蓮の腕にぴったりとくっついていた。


「……何してるんだ?」

 三があまりの光景に思わず尋ねる。

「さあ?」

 色晴も不思議そうに二人を見ている。


「穂花、どうしたの?」

「このクッション、かわいい!」

 穂花が抱えているのは、クリスマス仕様のネコのクッションだった。

「ああ、それ俺が選んだんだ」

 蓮が答える。

 どうやら、蓮が選んだクリスマス仕様のネコのクッションが、穂花の心をすっかり奪ってしまったらしい。


「おじさん、ありがとう!」

「おじさんじゃねぇんだけどな……」

 蓮は複雑そうな顔を浮かべた。

「まあ、喜んでくれてよかったけどよ」

 その近くでは、柊が少し残念そうな顔をしていた。

「……これ、妹が選んだやつ」

「何だよ、嫌なのか?」

 蓮が尋ねる。

「だって、せっかくのプレゼント交換なのに……」

 柊は少し不満そうに、自分の手元にあるプレゼントを見つめていた。

 

 こうしてプレゼント交換も終わり、気が付けばすっかり遅い時間になっていた。

「そろそろ帰るか」

 三がそう言うと、みんなもそれぞれ帰る準備を始めた。

 玄関で靴を履き、外へ出る。

「今日はありがとね!」

 色晴たちに見送られながら、三たちは手を振った。


「じゃあ、またな」

 蓮は色晴たちに手を振り返す。

 三は蓮や優とは帰る方向が違うため、そこで別れることになった。


「またな!」

「……おう」

 三がそう返すと、蓮は元気よく手を上げた。

 三が歩き出そうとした時、隣にいた優が口を開く。

「三くん、また」

「……ああ。また」

 

 三は短く返した。

 優が手を振る。

 その手には、三が選んだ手袋がつけられていた。

 三も軽く手をふり返すと、前を向き歩き出した。

 少し歩いたところで、三は自分の頬が緩んでいることに気づいた。

「……」

 三はそっと表情を引き締め、そのまま家へと帰った。

    ◇

 家に入ると、「お兄ちゃん、おかえり!」と咲が出迎えた。

「どうだった?」

 咲はニヤニヤしながら尋ねてくる。

「……よくやってくれたな」

 三がそう言うと、咲は嬉しそうに笑った。

「なんのことー?」と、咲は惚けてそのまま逃げようとする。


「……あ」

 三はそこで思い出した。

「咲」

「な、なに?」

 咲が恐る恐る振り返る。

 三は鞄から一つの包みを取り出した。

「これ、クリスマスプレゼント」

「え?」

 

 三が差し出したのは、ショッピングモールで咲が欲しがっていたベージュのマフラーだった。

「本当にいいの?」

 咲の目がキラキラと輝く。

「……ああ」

「やった!」

 咲は嬉しそうにプレゼントを受け取った。

 

 咲はさっそくマフラーを首に巻き、「……どうだ?」と聞く三の前で嬉しそうにくるりと回ってみせた。

「うん、肌触りもいいし、すごく可愛い! ありがとう、お兄ちゃん」

「……そうか。気に入ったならよかった」

 三は少し照れくさそうに目をそらす。そんな兄の様子を見て、咲はふふっと楽しげに笑った。


「一生大切にするね」

「ほら、遅いんだから早く寝ろ」

「はーい!」

 咲は首に巻いたマフラーを名残惜しそうに触りながら、自分の部屋へと戻っていった。


 静かになったリビングで、三はふうと小さく息をつく。

 三もリビングの電気を消すと、静まり返った自室へと向かうのだった。窓の外に広がる冬の夜空には、静かに星が瞬いていた。それぞれが胸に抱いた小さな温もりとともに、特別なクリスマスの夜は、穏やかに終わりを告げた。

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