アスナの気持ち 1日目終了
入ってきたアスナと互いに気まずい雰囲気になる。ぼうっと寝てるのも居心地が悪いので俺は起き上がり座ると隣にアスナも座る。座ったアスナを向くととアスナも俺を見ていたから目が自然と見つめ合う。至近距離で見る彼女は可愛いかった。初めの出会いが悪かったのでアスナをまじまじ見なかったがこうして見るとぱっちりした目やポニーテールにしているから白い肌にチラチラと目線がいきそうになる。ここまで近くに家族以外で女性を感じた事があったっけ? 急にドキドキしてしまう。そんな心情の中、突然アスナの手が俺の手に被す様に触れる。
「ねぇ、ハル君。こんな時に言うのもなんだけどね。私はハル君の事が大好きです。あの時気づいたの。ハル君に助けられて私はまた誰かを傷つけてしまった……失ってしまったって思ったの。しかも今回は私の所為で一歩間違えばハル君が死んじゃうかもしれないし大惨事だった。なのに自分の事しか考えれなかった。ハル君に助けられた命だけど私は辛くて考えが足らなくて、自ら死のうとしてしまった時もまたハル君は私を助けてくれたね。ハル君のお陰で私前向きになれたよ。学校が楽しくなったよ。私はハル君に会うたびにどんどんと好きになっていくの。私はハル君と同じ気持ちでいたいと思うのは我儘かな?」
アスナの淋しげな微笑みに俺はズキッとくる。ただ俺は記憶がない。深刻な内容でも俺は分からない。だから、今のアスナの気持ちにこたえるすべをもたない。
俺が何とも言えない表情を浮かべたからかアスナは顔を伏せる。
「ねぇ、私はハル君には何されても良いんだよ? 私をハル君のモノにして良いんだよ? どんな事をされても私はハル君とずっと居たい。一緒にずっと居たい。それだけ私はハル君を想っているの。ズルいのは分かっているの。だけどそれだけハル君を私のモノにしたい。私をハル君のモノにされたい。そうさせたのはハル君だよ。私は誰とも関わらずに生きていこうと決めていたのにハル君がいけないんだよ。もう私はハル君がいないと生きていけない」
迫り来るアスナに俺は何も出来ずに押し倒されてしまう。色っぽいアスナに俺は何かに魅入られてしまう。
「……ねぇ、ハル君。此間の続きをここでしよ? 私は心の準備はもう出来てるよ」
甘い香りに頭がクラクラする。アスナが話す度に俺は理性が働かなくなっていく。抱き締めたい。このまま流されても良いかなど様々な邪な感情が現れる。
俺は何も考えずに抱きしめた。アスナは良いよと耳元で呟く。その瞬間、俺はすっと血の気が無くなっていく。
……俺は何やってんだ?
朝不躾に扱った女性を今度は自分のふしだらな感情でまた彼女を傷つけようとしている。
自分が情けなくなってくる。それに俺は幸せになっちゃいけない。
俺は止まった理性を働かせアスナを引き剥がす。アスナは俺の顔を見ると申し訳なさそうにゴメンと謝ってきた。俺もゴメンと謝る。
「急だったよね。ゴメンね。もうハル君は私の事嫌いになった? 私は何がいけなかったんだろう。ハル君の事が好きだって気づいた時からどんどんハル君が遠く感じるよ。こうなるなら好きって感情を知らなかったら良かったよ。ねえ、最後に聞いても良い?」
アスナは泣き出しそうな表情で少し震えている。涙を堪えているみたいだ。
「私が屋上から飛び降りようとして止めてくれた後に私の事を好きって言ってキスしてくれたのは本当の気持ちだったの?」
……俺はそんな事をしていたのか?
「すまない。俺はどうやら10日の記憶を失っているみたいだ。だから、君を嫌いとか好きとか答える事が出来ない」
アスナは俺の言葉に顔を歪ませ頭を抱えポロポロと涙を溢す。
「ぁあぅぁ、ぁあ、ご、ごめんなさい。ごめんなさい」
アスナは俺にただひたすら謝り続ける。どうする事も出来ない俺は何を彼女に言葉をあげたら良かったのか分からない。
「俺と知り合いだったのか?今日目覚めてから俺の時間が10日前で止まってしまっているんだ。それに気がついてから誰かに何があったのか聞きたかったのだけど俺は自分の中で混乱して倒れてしまったみたいで俺は結局10日前に何があったか分からないままなんだ。だからーー」
アスナは俺の言葉に徐々に顔色を悪くし、またごめんなさいと呟く。
俺はバツが悪くなりそっぽをむく。これ以上言うと互いに傷つけ合うだけだと思った。
だから、俺はアスナに冷たく言い放った。
「もう俺に関わらない方が良い」
これがいつも通りの俺だ。
1年経つと嫌でも関わってくる奴らが出来た。でも本来の俺は誰とも関わらず、他人と交わらずに一歩後ろからただ見ている傍観者だった。
……のはずなのにこんな状況になっているんだろう?
「私は取り返しのつかない事をしてしまったけど、ハル君が言っていた通り、明日あの場所で私待っているから」
アスナは辛そうな表情のまま逃げる様に保健室から出ていった。俺は今までにない出来事にただ戸惑うばかりだった。
嫌な事や忘れたい事があると俺は屋上へ行く。屋上は先生は気付いてないがいつも南京錠が壊れており誰でも入れる様になっている。
やはり当たる風が気持ちが良くスッキリする。今日だけで他人と入れ替わったのではないのかと疑ってしまう程、可笑しな出来事ばかりだった。
フェンスに寄りかかると、視界に2人組を見かける。アスナと男子生徒が歩いていた。
よく分からないがモヤモヤする。
でも、何のモヤモヤなのかも考えるもの面倒だ。また明日になれば、いつもの変わらない退屈な日常に戻るだろう。
そう思っていたーーー
私は疲れてしまった。
もう誰からも必要としてくれない影にすらなれない空っぽだ。
私は知っていたんだよ。気づいていたよ。
私にお迎えが来ていた事。だから、私はそれを受け入れただけ。そう、それだけなのに目の前が転落し起き上がると目の前に血だらけの誰かがいた。
何故かその姿があの時の親友と重なってみえた。
私はもう一度、この時に心が壊れてしまった。
男子生徒に見覚えのあり、瀕死の彼に私は無意識のうちに生きてと願う。それなのに彼は自分が死にそうなのに私にハッキリと「生きろ」と伝えてきた。
この時点で本来なら私は死を選ぶ事は許されなくなった。
「1日目はこれにて終了だ。君にとっては【これから】……彼女は死ぬ運命の者だった。だけど君は願った。彼女がまた死に直面した時に君にはもう一度、選択肢をあげよう。話は単純だ。彼女を助ける代わりに君が死ぬか君は彼女が死ぬ事を知りながら傍観者を貫き、彼女をそのままの運命にするか選ぶと良い。私はただ叶えるだけだ。時間はまだある。今回の君はどっちを選ぶのだろう?」
とある彼女はシニカルに笑う。そのまま、手をヒラヒラさせながら消えて行く。
あと7日……
レーベル違いと言うかなろう向きな作品じゃないようですね。
なので、こちらの作品はまったりと月1更新でお送り致します。
この作品は私の大好きなジャンルの百合やBLや妹と恋愛、冒険やTSなど含まれていない純愛をテーマにした作品です。