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竜騎士見習いルル~田舎娘は仲間たちと空を駆ける~  作者: 夢子


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飛行リレーに向けて

「さて、君たちに話しておくことがある。知っている者がほとんどだと思うが、学期末には毎年、学年対抗飛行リレーが開催される。各学年から五名を選出し、第三休憩所までの距離を往復する。第一走者と第三走者は往路、第二走者と第四走者は復路を担当し、アンカーだけが第三休憩所まで一人で往復することとなる。どの区間を誰が飛ぶか、そして誰をリレー選手として選出するか、各自の能力や技術を考え、皆で相談し合ってほしい」


「「「はい」」」


 毎年学期末に開催される王立アストリア竜騎士学園の学年対抗飛行リレー。

 これは竜騎士団の団長も見に来る大行事だ。


 三年生は卒業前ということもあり、自分たちの実力を竜騎士団長に見せつけたい。

 そして二年生は、将来の竜騎士として、自分たちがどれほどの実力を持っているのか試したいという思いもある。


 そのため、毎年一年生が優勝争いに加わることはない。

 一年生は空を飛び始めたばかりということもあるし、学年が上の男子学生はやはり体格も違うため、飛行速度も比べ物にならないほど速い。


 それに、相棒との付き合いも学年が上であるほど長くなる。

 だから、いつもなら一年生が優勝するなど誰も考えないだろう。


 でも、今年の一年生は違う!


 全員がすでに第三休憩所まで飛べており、脱落者が必ず出ると言われる冬の飛行訓練も全員で乗り切った。


 そして一年生は皆、竜との仲も良く、学園を辞める者も出ていない。

 そして何より、ルル・ヴァルドという異端児が一年生にはいる。

 

 もしかしたら……


 今年の一年生ならば何かをやってくれるのではないかと、教師陣でさえ思ってしまうほど、今年の一年生には密かな期待がかけられていた。


 そのため、今年が最後の飛行リレーとなる三年生だけでなく、二年生までもが少しピリピリとしていて、今までになく一年生を気にしているようだった。一年生の飛行訓練をじっと見つめている者もいるようで、ルルたちもそのことには気づき、意識していた。


「さて、まず選手はどうするか? 飛行が得意な者というと……まあ、まず私だろうな」


 机を動かして話し合いの場を作ると、鼻高々に自分が一番だとカイルが宣言する。

 確かにカイルの飛行は上手なので、ダメ出しをする気はないのだが、あまりにも子供っぽい姿に皆が苦笑いだ。「そうだね、カイルがいれば安心だねー」と軽く受け流しながら、選手五人を誰にするか考えていく。


「ルルは絶対よ。アンカーを飛ぶのはルルしかいないわ」


「「「賛成」」」


 クラリスの推薦に皆が賛同してくれて、ルルはありがとうとお礼を言う。

 自分でもこのリレーでは長い距離を飛ぶアンカーになりたいと思っていたので、様子を見て立候補しようと思っていた。ただ、カイルの子供っぽい姿を見た後だったので、自分も同類に見えてしまうかもと思うとちょっと言い出しづらく、クラリスの推薦には感謝したいくらいだった。


「実力でいったら、成績順にルル、エド、カイル、レオン、クラリスが妥当じゃないか?」


 ハルトの言葉にうんと頷く者は多い。だけど、エドが手を上げる。

 エドの竜ロッソはまだ若い。

 飛行には慣れてきたけれど、まだ心配だとエドは正直に言った。


「それでしたら、私も……速度で言えばハルトの方が私とアストラよりも速いと思いますわ」


「うーん、でも僕らはムラがあるからな……。相棒のソルは誰かと競うことにはまだ慣れていないから、リレーで先輩の竜を怖がりそうな気もするんだよなー」


 それは確かにと皆が頷く。

 乗り手の気持ちを感じやすい竜は、先輩に気を遣うパートナーの気持ちを敏感に感じ取り、萎縮してしまう可能性もある。ただ、チームには女帝と呼ばれるセレスがいるので、そこはどうなるか分からない。セレスに「何をやっているの!」と発破をかけられれば、先輩など気にしている場合ではないだろう。


 そう考えると誰を選ぶのか、また皆で頭を悩ませる。


「先に、僕とフィンは飛行が苦手だから応援に回らせてもらうよ」

「私も、やっと一人で乗れるって感じだから、競争なんて無理だと思うわ」


 ノアとミアが手を上げ、皆の応援に回ると言う。

 するとディーンも手を上げた。自分の竜フレアは力比べなら勝負になるけれど、競争では相手にならないだろうと判断したのだ。ただし、大食い競争なら負けないよと笑いを取るところはディーンらしかった。


「エドのロッソとハルトのソルは、当日調子がいい方を選手にするって、余裕を持って決めた方が良いかもね」


「確かにそうだね。それに、レースの練習はこれからだ。一人で飛ぶのと競争するのとでは違うから、竜たちの様子を見て飛ぶ順番も決めた方が良いかもな」


 レオンの言葉に皆が頷く。

 とりあえず、今の選手候補はルル、カイル、レオン、クラリス、エド、ハルトの六人。


 ルルがアンカーを飛ぶことは決まったが、あとの順番は練習次第で決める。

 多分、エドとハルトの竜はスタートが良いだろうと、皆で話し合う。


 追いかけたり、追いかけられたりするより、スタートで自分のペースで飛ぶ。

 人間なら一番緊張するポジションだが、竜ならばそれが一番緊張しない。

 そう話し合った。


 そして次の日の飛行の授業からは、リレーの練習が始まる。

 ノアやミア、ディーンの竜も来年、再来年を見据えてリレーの練習をするが、今回は仮想の先輩役を担ってもらう。


 竜騎士リレーでは、学校側が用意した竜アンカーを使ってリレーを行う。

 つまり、一チームにつき一つの竜アンカーを使い、乗り込みから飛翔、着陸、そして次の走者への引き継ぎまで行うため、チームの連携も試される。


 入学したばかりで不慣れな一年生が一番不利になる競技のため、これまで一年生の優勝がなかったことも頷ける戦いだった。


「エドは竜アンカーの扱いが上手いから、リレーに向いてると思うな」


「それを言ったら、ハルトとソルの飛翔時間は俺たちより短い。そこも考えて意見しろよな」


 エドとハルトは仲がいいため、お互いに相手の良いところを褒めながら、リレーの選手を譲り合っているようにも見える。


 ルル的には、調子が良い日のソルはエドのロッソよりも速いと思う。だけど、ソルは少し飛行にムラがある。その点、ロッソはエドへの信頼が厚く、父親のようにエドを慕っているので、上空でも安定しているといえた。


 そう考えると、やはりどちらが飛ぶかは当日決めるしかない。二人はいがみ合うこともなく、ああしよう、こうしようとスタートについて話し合っていて、とても良い間柄に見えた。


 そして練習を重ねるうちに、往路と復路のどちらが得意なのかも分かってくる。

 その結果、決めた走順は一走がエドかハルト、二走がレオン、三走がクラリス、四走がカイル、そして五走のアンカーがルルとなった。


「みんな、優勝目指して頑張ろうね!」


「「「おう!」」」


 一年生皆が気合を入れる。

 一年生が勝つことはとても難しいと分かっている。


 だけど誰も諦めていない。

 絶対に先輩たちに勝つ!

 そう信じている。


 竜騎士リレーは学期末試験の前だ。


 もうあと一か月と、戦いのときは迫っていた。

おはようございます、夢子です。

本日もお読みいただきありがとうございます。

早いものでもう五十話です。

皆様のお陰で続けられています。


ディーンの竜フレアが何気にお気に入りな私。

ちなみに色はオレンジ色です。

冬は腹巻必須。w


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