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竜騎士見習いルル~田舎娘は仲間たちと空を駆ける~  作者: 夢子


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騎士の訓練

 冬将軍の猛攻がそろそろ落ち着き始め、日によっては春の女神の温かさを感じる日も多くなってきた。

 そのため、ルルたちの授業も内容が変化し、空を飛ぶ授業はもちろん、最低限の騎士としての動きも学ぶ時間が増えていた。


 竜騎士には竜騎士の戦い方があるように、騎士には騎士の戦い方がある。

 竜騎士になったからといって、そのまま順調に一生空を飛び続ける竜騎士でいられるのはほんの一握り。


 ある日突然、空を飛ぶことが怖くなる者もいれば、怪我を負い、竜騎士の仕事を続けられなくなる者もいる。それに、相棒である竜が亡くなってしまうこともあるし、竜だって怪我を負い、空を飛べなくなることもある。


 祖父の竜に慣れているルルならば、他の竜と新たに親交を結べるかもしれないが、そもそもそれ自体が異例なこと。本来、相棒以外の竜と空を駆けるなど、どの竜騎士にもできないこと。竜に何かあった場合は、空を飛ぶ竜騎士を諦めるしかないのだ。


 そのため、竜騎士は多くのことを学ぶ。

 事務仕事ができるように計算はもちろん。

 普通の騎士として活躍できるように剣も習うし、その他の武器も習う。

 研究の道に進めるように学科を詳しく学ぶこともできるし、己の竜の世話を学ぶことで竜の世話係になる道もある。


 寮には元竜騎士だったマーサやゴードンがいるし、同じく竜騎士だった教師が学園にはいるため、ルルたちは他の選択肢があることももちろん分かっていた。


 ルルだって竜騎士を引退せざるを得ない立場になったら、竜の世話係か、父のような竜医師になりたいと思う。竜医師の場合はもう一度獣医師学校へ通い直さなければならないため、世話係が一番現実的な道だろう。


 それはルルだけでなく、他の生徒も同じ。

 授業の中でガイウスが「選択肢」をたびたび口にするからということもあるが、皆、竜騎士になる難しさと、空を飛ぶ過酷さを理解しているからともいえた。


 だからだろう、それぞれの教科の先生も「竜騎士の後は……」という話をするときがある。

 クラリスは引退後、母親と同じように竜騎士団の中で内勤を続けるつもりでいるし、ミアは竜騎士を引退した後は実家の店を手伝いたいと言っていた。


 それに、ディーンは竜の食事を研究する職に就きたいと言っているし、ノアはセドリックの研究をすでに手伝い始めていて、竜騎士にならずに竜騎士団内の研究者の道に進むだろう。


 カイルは引退後、きっと貴族として何かやるだろうし、レオンはクラリスに結婚を申し込んでいるので、竜騎士団内の役職に就く気がする。


 ハルトは貴族の子だけど七男なので、実家の爵位を継ぐ予定もなく、自由にしていいと言われているそうなので、そのまま竜騎士団に残るだろうと言っていた。


 そしてエドは、竜の世話係の中でも育成に関する仕事に就きそうな気がする。

 本人から聞いたわけではないので分からないが、元々エドは生き物の生態にも詳しいし、育て方も上手だと思う。だからこそ、ルルはエドが父ロイドと同じ竜医師になるのだと思ったくらいだ。

 でも、ロッソとの仲を見ていると、エドは竜の子育てにも向いているとルルは感じていた。


「よし、今日は剣以外の訓練を行う。皆、それぞれ自分の第二、第三の武器を持つように」


「「「はい」」」


 弓やナイフを持つクラスメイトの中、ルルだけが鞭を持って構える。

 ちょっと鞭に興味があって、学園に入ってから習い始めたルルだけど、意外と手にしっくりきて、気に入っている。


 教える先生が女性でとても魅力的であるため、憧れもあるのだけど、鞭の蛇のような、竜の竜尾のような動きが楽しくて、ルルは弓よりも最近は鞭の練習を選んでするぐらいだった。


「うん、ルル、上達したね。もう体に当てることもなくなったようだ」


「はい、ヴィオラ先生。一人でも練習しました。それに、大振りにならないように心がけています」


「うん、良い心がけだ。良いか、何度も言うが、鞭は先端がどこにあるか常に心がけておけ。そうすれば非力な女性でも男性騎士に勝てる! ルルは筋が良いから、なおさらだ」


「はい」


 女性騎士はどうしても力では男性に敵わなくなる。

 なので、ルルは中距離から攻撃できる武器として鞭を選択したという理由もあった。


 けれど、鞭の扱いは難しく、最初の頃はよく自分の体に当ててしまい、痛い思いをした。

 だけど最近は鞭の軌道がだいぶ分かるようになり、それがとても楽しくもある。


 いつかはヴィオラのように強い一撃を打てるようになりたいと、ルルは猛練習中だ。


 そして、クラリスもミアもルルの鞭さばきを見て、二年生になったら自分たちも習おうかと、今悩み中だったりもする。


 クラリスは学園に入ってから第二、第三の武器を覚え始め、ミアに至っては野菜を切るナイフさばきはともかく、剣は初心者ともいえる。そのため、今はこれ以上武器を覚える余裕がないというのが正直なところ。でも、ヴィオラ先生の鞭を振るう美しさと格好よさを見てしまえば心が揺れるのもしょうがなく、来年にはと目標を持っているようだった。


「イテッ」


 ドサッと音がしたかと思うと、エドが前のめりに倒れていた。

 そんなエドにハルトが駆け寄り、様子を確認する。


「エド、大丈夫か?」


「ああ、ごめん、ハルト。ちょっとバランスを崩して転んだだけだ」


「そうか、ならいいけど、無理はするなよ。怪我をしたら意味がないからな」


「ああ、気を付けるよ」


 鞭の練習を終え、ルルも投擲の練習に入ろうかと思っていると、ハルトが転んだエドを起こしているところだった。


(エド、この前も転んでたよね……もしかして武器が合ってないのかな?)


 重い剣を選んだのならあり得る疑問だけど、エドは今、ハルトと投擲の練習をしているだけ。ナイフのサイズが合わないというのは、よほど大きなナイフの場合のみ。投擲用の細く小さいナイフに体が負けるはずがない。


 ルルは可愛い弟分の様子がおかしいことが心配になり、休憩用の椅子に座ったエドに声を掛けた。


「エド、大丈夫? 怪我してない?」


「ああ、大丈夫だ。ちょっとバランスを崩しただけだから、何ともないよ」


 そう言いながらも、エドはなんだか疲れて見える。

 長い付き合いだからこそ分かる、寝不足のような顔だ。


 もしかしてカイルに対抗意識を持っていて、無理な鍛え方でもしているのではないか? と心配になってしまう。


 いや、それか、まだ先の試験に備えて深夜まで勉強しているのかもしれない。

 エドが負けず嫌いであることを知るルルは、そんな考えに行き着いた。


「ねえ、エド、保健室に行く? 私、ついていくよ?」


「大丈夫だって、ルルは大げさだなー。心配すんなって」


 エドはそう言っていつも通り笑うけど、ルルの心配は消えない。

 寮の二階に女子生徒は入れないため、ハルトにお願いして、部屋での様子とかを見ていてもらわないとと、姉心が疼く。


「ルル、投擲練習するんだろう。俺もちょっと休んだら行くから、先にやってろよ」


「……うん、分かった。でも、何かあったらすぐに声を掛けてね。約束だよ」


「はいはい、分かったって」


「もー、そんな適当な言い方してー」


 その後、しばらくするとエドは立ち上がり、ルルと一緒に投擲の練習を始めた。

 的も狙うことができたし、投げ方にもおかしいところはなく、ルルは安心した。

 

(良かった、エド、元気みたい)


 真剣な顔で的を狙うエドにおかしなところはない。

 だけど、やっぱり不安は消えなくて……

 ハルトだけでなく、ノアにもエドのことを頼んでおこうと、固く誓った自称姉役のルルだった。

おはようございます、夢子です。

本日もお読みいただきありがとうございます。


美味しいお肉が食べたいな……

竜のお肉は美味しいのでしょうか?

ちょっと気になります。w

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