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竜騎士見習いルル~田舎娘は仲間たちと空を駆ける~  作者: 夢子


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竜騎士のお昼休み

 第一竜騎士隊の飛行を見学したルルたちは、騎士団が使う食堂へと案内された。

 ここまで皆を案内してくれた団長は団長室へ戻り、担任のガイウスもそれについていった。


 ルルたち一年生は今日はこの場で騎士たちと同じ食事を摂り、その後はまた竜騎士団長の案内で運動場などを見学することになっている。


 多くの騎士たちが食事を受け取る列に並ぶ中、まだ子供体型ともいえるルルたちがその列に加わると、騎士たちとの大きさの違いは歴然だった。体の厚みも同じ人間とは思えないほどで、騎士たちの間に挟まれて並ぶ一年生は、まさに借りてきた猫のように大人しくなっていた。

 

「今日はAランチで」

「Bランチ大盛!」

「俺はCランチだ」


 食事はA、B、Cの三種類のランチメニューから選ぶ形式で、日によってメニューは変わるらしく、とても美味しそうだ。ただ、その量の多さにルルたちは圧倒される。ルルたちから見れば二人前にも思えるボリュームだった。


「少なめも頼めるから大丈夫だぞ」


 後ろに並ぶ騎士の男性がそんなことを教えてくれる。

 自分たちも学生の頃ここに来て料理の多さに驚いたんだと笑いながら、盆を取り、カトラリーも自分で取るのだと詳しく教えてくれた。


 ルルたちはその男性騎士にお礼を言い、少なめのセットをお願いした。

 だけど、どの料理も気になるため、ルルがAセット、クラリスがBセット、ミアがCセットと、せっかくなので三人でシェアして食べることにする。


 そして男の子たちも、さすがにあの量は……と思ったのだろう、少なめを注文していた。

 ただし、ディーンだけは普通盛りだった。

 自分のものとは違う味を食べる子に少し分けてもらい、相手からも食べ物を分けてもらう作戦らしい。


 ルルたちとシェアしてもいいよ、と言ったのだが、なぜか顔を赤くして断られてしまった。

 食いしん坊のディーンであっても、女の子とのシェアは恥ずかしいことらしい。

 別に「あ~ん」と食べさせるわけでもないのにと、ルルには年頃の男の子の気持ちなど全然分からなかった。


 

「クラリス、食事はどうだ、美味しかったか?」


「まあ、お兄様!」


「やあ、君たち、ここの料理はなかなかの味だろう? 今の騎士団長になってから味が変わったって言われてるんだ」

「前は量だけで味はイマイチだったらしいぞ。まあ、俺たちが入団した時には今の味になっていたけどな」


 ルルたちが食べ終わるころ、クラリスの兄レオニスと同じ隊のメンバー、アルノーとアレンがやって来た。


 クラリスがいるからか、三人は当然のようにルルたちがいるテーブルにつき、テーブルの上に盆に載った食事をドンッと置いた。だが、その量の多さにルルたちは圧倒される。大盛どころか特盛の量だ。食べたばかりのルルたちは、それを見て気持ち悪くなりそうだった。


「お兄様、そんなに食べますの?」


「ああ、今日は朝からずっと外での訓練が続いていたからな」

「そうなんだ、竜騎士は食べないとやっていけないんだよ」

「そうそう、上空は寒いからね、体が熱を欲するんだよ。だからお腹がすっごくすいちゃうんだよなー」


 三人の言葉は分かるけれど、だからと言ってこの量はルルには無理だ。

 それは女の子たちだけでなく、男の子たちも同じようで、この先自分たちもあの量を食べるのか? と問いかけるような視線を三人へ送っていた。


「あの、すみません、クラリスのお兄さん、竜騎士隊の皆さんは全員寮住まいなんでしょうか?」


「ああ、レオニスでいいよ。そうだね、最初の一年は必ず寮に入ると決まっているが、その後は自宅から通える者には許可が出る。ただ、夜番の日は泊まりになるね。それは寮ではなく宿直室に泊まる形だ。まあ、仮眠だけで、本気で寝る者はいないけどね」


 ミアの質問にレオニスは優しく答えてくれる。

 けれど、食事を摂りながらで、その上上品に食べているのだから、素晴らしいとしか言えない。


 お肉が消えていくところを見つめながら、ミアはホッと息を吐く。

 王都に実家があるミアはいずれ自宅へ戻りたいと思っているらしい。


 きっとミアのことだから家族が心配なのだろう。

 優しいミアに続き、ルルも質問をした。


「あの、レオニスお兄さん、新人はどんなふうに配属されるんですか?」


「ああ、君はルル・ヴァルド君だったね」


「はい、ルル・ヴァルドです」


「竜騎士団は五隊しかない。なので本人の希望が通りやすい。ただ第一だけは団長が選抜する形になるな。あと、今は竜騎士の人数も増えてきて新しい隊を作ろうとしているところだから、この先、再編成もあり得るね」


「そうなんですね……、ありがとうございます」


 詳しく話してくれるレオニスの言葉に一年生皆が耳を傾ける。

 竜に乗る竜騎士隊は五隊だけれど、竜騎士団の中にはそれを支える人たちも含まれる。


 事務仕事を担う人や、医療に携わる者、調査や探索を担当する者もいる。

 それは空を飛び駆ける隊員とは違い、竜に乗って現場へ向かったり、竜のための安全を担ったりと、仕事は様々だ。


 クラリスの両親は今でも竜騎士であるけれど、一線を退き、父親は調査の仕事、母親は事務の仕事に就いているらしい。特に女性は結婚や妊娠で空を飛ばない時期もあるため、内務の仕事を最初から望む者もいるようだ。


 自分の希望を深く考え始めるのは、三年時に騎士団へ行って見習いの仕事を手伝う期間からが多い。

 そして入団後、いろんな部署を回り、自分に合う仕事を見つけ、第一から第三まで候補を提出するそうだ。


「昔は竜の研究者は王城の研究課に所属していたが、今は竜騎士団に所属しているんだよ」

「竜の道具を開発する部署も竜騎士団だ。覚えておくといい」


「はい、ありがとうございます」


 アルノーとアレンも竜騎士団について詳しく話してくれる。

 たくさんの仕事があるため、選択肢は多い。


 だけど、その中でもルルは空を駆ける竜騎士隊を望んでしまう。

 先ほどあれほど素晴らしい飛行を見せられただけに、なおさらだった。


「ルルちゃんは飛行が素晴らしいって聞いたけど、飛行はいつから練習してたの?」


 今度はアレンからルルに質問が飛んできた。

 目の前のお皿にはもう肉はない。

 残された野菜をつまみながら、楽しそうな様子でルルを見る。

 

 いつから飛行していたか……


 そう考えると、生まれた時からが正しいかもしれない。

 祖父の竜グレイヴに乗っていた記憶は、もう幼いころからずっとある。


 つまりそれは、記憶が持てないころからグレイヴに乗っていたということで。

 ただ、自分一人でグレイヴに乗ったのはいつか……と聞かれれば、三歳の時かもしれない。


「私はずっと祖父と一緒に竜に乗っていました。だけど、一人で初めて竜に乗ったのは三歳の時……木登りをして降りられなくなった時ですね」


「木登り?」


「はい、グレイヴに……祖父の竜に一人で乗りたくて、内緒で木登りをしました。そしたら降りられなくなって、グレイヴが助けてくれたんです。それでそのまま空に飛んでくれて……後でたくさん怒られましたけど、忘れられない思い出ですね」


 あの日、初めてルルはグレイヴに一人で乗った。

 多分グレイヴはほんの少しの時間、それも低空で、子守のつもりで飛んでくれたのだろう。


 だけどルルには忘れられない出来事となった。


 一人で飛ぶ空はとても広く、雄大で、同時に怖さも感じた。

 祖父のいない上空は不安で、心細かった。


 けれど、その想いがルルを掻き立てた。


 絶対に一人で竜と飛べるようになる!


 乗せてもらうのでもなく、飛んでもらうのでもなく、ルルが自分で竜と共に空を飛ぶ。

 そう心に強く誓ったのも、この時だったと思う。


「私は一生竜と飛べる、そんな場所で働いていたいです」


 ルルの正直な言葉に、レオニスもアルノーもアレンも笑っている。

 そう言うと思っていた。

 そんな心の声が聞こえそうな笑顔だが、ルルはそんなに分かりやすい表情をしていたのだろうか? と首を傾げた。


「あ、ルルちゃん、俺のお嫁さんも募集してるから、興味があったら応募してみてね」


 ぱちんとウインクをするアレンの言葉に、なんだかカッコいい先輩竜騎士のイメージが壊れ、残念さを隠さない顔で「はあ……」と曖昧な返事を返したルルだった。

こんばんは、本日二話目です。

よろしくお願いいたします。


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