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竜騎士見習いルル~田舎娘は仲間たちと空を駆ける~  作者: 夢子


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出発

 遂にルルが旅立つ日を迎えた。


 けれど呑気なルルには、変に肩に力が入っている様子はなく、いつも通り朝早くに起き、ニコと共にグレイヴの散歩をした後、母ミレイユに急かされながら準備を終えた。そして普段よりも可愛らしく女の子らしいワンピースに着替え、馬車で王都まで送ってくれるトーマスの到着を待っていた。


「ルル、オッス」


「エド、おはよう。アハハ、エド、なんか変だよ。今日のエド、別人みたい、アハハハ」


 ルルが笑うのも当然で、今日のエドは見るからにお坊ちゃま。

 母エマによって磨き上げられたエドは、エド史上一番の見た目となっていて、綺麗な白のシャツにタイを付け、膝下までの半ズボンに白いタイツと磨き上げられた靴。そのうえ焦げ茶の髪は撫でつけられ、ぼさぼさ感はないため、あまりにも普段とのギャップがありすぎて、ルルは思わず笑ってしまう。


 だけど、それが微妙に似合っていない気がして、気の毒すぎる。

 本人も分かっているのだろう、借りてきた猫状態のエドが、ちょっとだけ口を尖らせる。


「うるさいなー、今だけだよ。母さんから見えなくなったら元に戻すんだから」


 そう言ってエドは、髪をぐしゃぐしゃとやる仕草をする。

 本当にやったらエマの雷が落ちるので、勿論仕草だけだ。


 どこの母親も笑顔な鬼に変われることを、ルルもエドも身をもって知っているため、危険行為は行わない。


「ル、ルルだって……なんか……違うじゃんか」


 チラリとルルを見て、エドが目を逸らす。

 エドの頬が少し赤くなっているが、ルルは気づかない。


 ワンピースの裾を掴み、くるりと回った。


「可愛いでしょう? お母さんが今日の為に作ってくれたワンピースなの」


「……かわ……可愛い、いや! 可愛いのはワンピースだからな!」


「アハハ、分かってるよー」


「……」


 エドとそんな会話をしていると、トーマスの到着が告げられ、ルルもエドも外へ向かう。


 学園で使う荷物はもうすでに送られているので、今日はこれから王都へ向かう旅で使う荷物のみ。


 ボストンバッグ一つを手に持ち、庭へと出てみれば、家族だけでなく村のほとんどの人が見送りに来てくれていた。


「ルルちゃん、エド、頑張れー」

「都会っ子になんか負けるなよー」


「村の誉れだ、凄いぞ二人とも」

「体に気を付けてね、自分を大事にするのよー」


 あちらこちらからそんな声掛けを貰い、二人は驚き、照れながらも村の皆にお礼を言った。


 そして家族と笑顔で向かい合う。


「エド、無理をし過ぎないでね」

「エド、ルルちゃんをちゃんと守るんだぞ」

「お兄ちゃん、頑張ってね」


「うん、父さん、母さん、リオ、俺頑張るよ。絶対に夢をかなえるから安心して」


 エドは両親とリオと挨拶を交わし、ギュッとハグで別れを惜しむ。


「ルル、頑張るのは良いけれど、無理はしないでね」


「うん、お母さん、ちゃんと守ります。元気じゃないと相棒の竜に心配かけちゃうもんね」


「そうだぞ、ルル。竜にとって相棒は特別だ。お前に何かあったら竜は病気になるかもしれない。ちゃんと自分の体も心も管理できるようにならないと、一人前の竜騎士とは言えないからな」


「うん、お父さん、絶対に気を付けます。相棒に迷惑をかける竜騎士にはなりたくないからね」


 両親との挨拶を終えたルルは、祖父バルガスとその相棒グレイヴ、そしてルルの大事な妹分である愛猫のニコと向かい合った。


「おじいちゃん、行ってきます」


「ああ、ルル、気を付けて行ってこい。それから相棒の竜を守れ。だがな、自分の命も同じぐらい大事にしろ。それが出来て初めて竜騎士だと胸を張れる」


「うん、おじいちゃん、分かってる。私、絶対におじいちゃんみたいな竜騎士になるから、期待してて」


「ああ、期待してるぞ、ルル」

「ギャギャ」

「にゃっ」


 挨拶を終えたルルとエドは、トーマスの馬車に乗り込んだ。


 竜であるグレイヴで送ってもらえばとても楽ではあるが、そうはいかない。


 王都に竜で乗り込むには、急なことでもない限り、かなり前からの申請が必要だ。


 それは王城で働く竜騎士の邪魔になってはいけないという理由もあるが、野生の竜が攻めてきたと勘違いさせないためでもある。


 それに何より、バルガスは竜を個人で所有することが許されるほどの英雄。


 簡単に王都へ行きたくない理由も、本人にはあったりもする。


「みんなー、行ってきまーす!」

「行ってきまーす!」


 期待を胸に村を出発したルルとエドの顔には涙など見えず、ただ楽しみだけが浮かんでいた。





「さあ、エド、ルル、今日はここで一泊するぞ。三人一緒の部屋だが、そこは我慢してくれよな」


 王都までは、何もなく進めば五日かかる。


 天候や魔獣など何かあればもっとかかるだろうし、子供の旅だと考えれば、ルルたちは一週間の旅になるかもしれない。


「うん、トーマスおじさん、全然大丈夫。っていうか一緒なの嬉しい。夜までたくさん話せるもん。ね、エド」


「えっ? ま、まあ、そうだけど……」


「何? 私と一緒じゃ嬉しくないの? 今日は沢山話そうねって約束したのにー」


 小さな子供のようにぷんぷんと怒るルルの隣で、エドは少し赤い顔で目が泳いでいる。


 そんな二人の様子に笑いながら、トーマスはルルとエドの頭を撫でる。


「こら、ルル。長旅なんだから夜更かしはダメだぞ。それに馬車の旅は思っているよりも疲れるんだ。ちゃんと休まないとダメだぞ」


「はーい。でもトーマスおじさん、ずっと座ってたからお尻がむずむずする。ちょっと動かないと眠れそうにないよ」


「アハハ、確かにそうだな。よし、じゃあ後で俺と剣の稽古でもするか? 勿論木剣だが、宿の庭で出来るようになってるぞ」


「うん、お願いします! ねえ、エドも一緒にやるでしょう?」


「ああ、勿論。トーマスさん、俺も一緒にお願いします」


「おう」


 こうしてルルの気を逸らすことに成功したトーマスは、二人を相手に剣の稽古をし、疲れさせることに成功した。


 夕飯を食べる頃には二人とも疲れからウトウトとし、思春期特有の異性を意識するという思考もエドからぶっ飛ばし、ルルの「もっと楽しくしたい」という欲望までも封印することに成功した。


 そして翌日、いつも通りに目を覚ましたルルは、ニコがいないことにちょっとだけ寂しさを感じる。

 エドもまた家族を思い出したのか、何となく口数が少ない。


 朝ごはんを食べるときには、祖父の竜であるグレイヴと散歩できない寂しさも感じ、ルルはちょっとだけ心に小さな穴が開いたような感覚だった。


「ルル、どうした? 元気ないな?」


 ご飯も半分残し、昨日のようなお喋りもないルルにトーマスが声を掛ける。


「ん、グレイヴとニコに会いたいな~って思って……ちょっと寂しくなっちゃった」


「アハハ、そうか。素直に寂しさを認められるのは偉いぞ。だがな、それは仕方がない。グレイヴはともかく、ニコはな、俺だってニコみたいな子が家にいたら、こんな仕事続けられないさ」


「本当? トーマスおじさんも寂しくなる?」


「ああ、当然だ。それに、ルルが全然平気って言った方がニコが可哀そうだろう? ニコはペットじゃなくって、ルルの妹なんだろう?」


「うん、そう、妹! 大事なの!」


 ニコは既に五歳の猫だ。


 夏季休暇などの長期休みは会えるとは言え、王城に勤める竜騎士になるルルが、この先ニコに会える時間は限られている。


 そのことにルルがどこまで気づいているかは分からない。

 単純に今だけの寂しさかもしれない。


 けれど、家族と離れる寂しさを知ることも、これから竜騎士を目指すルルには大切なことだった。


「さあ、ルル、エド、次の街に出発だ」


「うん、トーマスおじさん、今日もお願いします」


「トーマスさん、よろしくお願いします」


「おう、任せとけ」


 家族を思い出し、少し気落ちしていた二人に発破をかけ、王都へ向かう旅は続いていくのだった。

おはようございます、夢子です。

さっそくお読みいただき、そしてブクマ、評価、いいね、など付けて下さった読者の皆様ありがとうございます。励みになっております。


本日は朝一本、そしてお昼休みにもう一本投稿出来れば…と思っております。

無理だった場合は夜投稿いたしますので、どうぞよろしくお願いします。


ルルとエド、遂に村から出発です。

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