竜騎演技とダンス
遂に学園祭最終日を迎えた。
ルルたちの喫茶店は二日間で終了のため、昨日の終了後にミアを中心にして売り上げを計算したが、思った以上の収益があり、ルルもみんなも大満足。売り上げはすべて引退した竜や竜騎士のために使われるため、多くある分には大歓迎だった。
「やったね!」
「ああ、俺たちも少しは先輩たちの役に立てたって証拠だな」
そんな会話を皆で交わし、笑顔でジュースを掲げて乾杯し、少し早めの打ち上げを行った。
お茶入れの指導を頑張ったクラリスは少し涙目で、初心者から脱却したカイルはどこか誇らしげだった。
そして今日は、出番のないルルたちは学園祭の最終日を楽しむ。
そうは言っても屋台はもう半分以上片付けられていて、食べ物を楽しむという雰囲気ではない。生徒も来客者も皆そわそわと上空を見つめ、あるものを待っている状態。ルルもエドに誘われ校庭へ出ては空を見上げていた。
「エド、楽しみだね」
「ああ、先輩たちの実力も分かるしな」
晴天で何よりだ。
今日は学園祭の締めに相応しいお天気ともいえた。
何故ならば、学園祭一の楽しみがこれから始まるからだ。
「これより、王立アストリア竜騎士学園二年生全員による竜騎演技を発表いたします」
ルルたち一年生や一般の観客が校庭内で待機していると、放送のアナウンスが流れ、午前中の飛行演技、二年生の発表が始まると声がかかり、ワーッと歓声が上がる。
ルルたちが最初に飛行訓練で向かった一番近い竜の休憩所を出発し、学園の上空、王都の皆が注目する中で飛行演技は行われる。
今校庭に来ていない街の人々も、王都の自宅だったり、街の中だったり、高台に上ったりと、この飛行演技を楽しみにしていると聞いている。
王家の人もそれは同じで、アレクシスもいつも家族で王城の一番高い塔に上り、演技を見つめるのだと言う。
そんな話を思い出し、ルルはドキドキしながら見守った。
二年生は全員で八名。
学年キャプテンであるセドリックを先頭に、綺麗なV字型で上空に現れた。
八頭の竜が翼を大きく羽ばたかせながら、息を合わせて飛んでいる。
遠くから見ているだけでも、その動きがぴたりと揃っているのが分かる。
やがて先頭を飛んでいたセドリックが速度を落とすと、後ろにいた竜たちが左右へと広がり、綺麗な横一列へと形を変えた。
そのまま一列になって飛んだかと思えば、今度は左右の竜たちが少しずつ高度を変えながら上昇していく。そして中央のセドリックを残して、左右の竜たちがまるで大きな翼のように広がる。
そして一瞬。
八頭の竜が一斉に翼を翻した。
右と左に分かれて大きく旋回し、空の上で交差する。
「わぁ……!」
思わずルルの口から声が漏れた。
互いの距離はそれほど離れていない。
それなのに八頭はぶつかることなく、まるで最初から決められていたかのように綺麗にすれ違っていく。
再び一つにまとまった八頭は、今度は大きな円を描くように上空を旋回し始めた。
その中心にいるのはセドリックだ。
空中で位置を変えず飛び続けることはとても難しい。
そのため、先頭で動かず支点となるセドリックの役割は大きい。
二年生の中でセドリックが一番飛行が上手い。
竜騎士なら、それが見ただけでも分かる。
セドリックは相棒ライズと呼吸を合わせ、翼を細かく動かしながら、その場で見事にホバリングしている。その周囲を他の竜たちが回り、まるでセドリックを中心に大きな花が咲いていくようだった。
「凄い凄い、綺麗だね、エド」
「ああ、凄いな! 一年違うだけであんなに飛べるようになるんだな」
円を描いていた竜たちは、今度は一斉に高度を上げていく。
青い空へ吸い込まれるように八頭が上昇したかと思えば、今度は一斉に下降する。
風を切る音が校庭まで届き、観客から「おおっ!」という歓声が上がった。
そのまま地面へ向かっていくのかと思った瞬間、八頭の竜は翼を大きく広げ、急上昇する。
太陽を背にした竜たちの姿が、まるで空に浮かぶ影絵のように見えた。
「凄い……」
ルルは目を輝かせながら空を見上げる。
自由に空を駆けることが好きなルルだって、こんな飛び方があるのかと驚くぐらいだ。
そして最後は八頭が左右に分かれ、大きく旋回しながらセドリックのもとへ集まっていく。
八頭が再び綺麗なV字型を作ったところで、一斉に翼を大きく広げ、空の上でぴたりと動きを止めたように見える。
その瞬間、校庭から大きな拍手と歓声が沸き起こった。
「綺麗だったねー」
「もっと見ていたかったよ」
「今年の二年生も素晴らしいものだった」
観客からそんな声が上がり、ルルもエドも自慢げに頷く。
私たちの先輩は凄いでしょう?
なんだか自分たちまで褒められたような、そんな気分になっていた。
「これより、王立アストリア竜騎士学園三年生全員による竜騎演技を発表いたします」
午後になり、今度は三年生の竜騎演技が始まった。
最後まで残っていた屋台や学園内の片付けを手伝っていたルルたちは、また校庭に出て来て、三年生の演技を待ち構える。
三年生は六名。
先頭に一騎、右左に二騎ずつ、そして最後尾に一騎と編隊を組んで現れた。
三年生のキャプテン、アルフレッドは最後尾。
校庭の上空へ来ると、最後尾のアルフレッドはくるりと上空で宙返りをし、隊列中央に進み出る。
それに合わせ仲間たちも左右へ広がっていく。
アルフレッドを中心に六頭の竜が集まり、二年生とはまた違った花のような形を作る。
そのまま花びらのように左右へ広がったかと思えば、今度はアルフレッドを中心に、くるくると円を描き始めた。
六頭の竜が大きな円を描きながら旋回する中、中央のアルフレッドはその場でホバリングを続けている。
そして突然、アルフレッドが翼を大きく広げた。
そのまま一気に上昇すると、他の竜たちもそれに続いて空高く舞い上がる。
六頭がそれぞれ違う方向へ散ったかと思えば、次の瞬間には互いの間をすり抜けるように交差しながら、再び中央へ集まっていく。
最後は六頭が一斉に翼を翻し、くるりと宙返りを披露した。
観客から大きな歓声が上がる。
ルルは真ん中でホバリングしながら宙返りするアルフレッドの技量に驚かされた。
動いた勢いで回ることと、上空で待機した状態から宙返りをすることは難易度が違う。
「アルフレッド先輩凄いなぁ。カッコいい……」
アルフレッドの飛行を見つめ、ルルから本音が漏れるとエドが素早く反応する。
「お、俺だって三年になったらあれぐらい出来るようになってるしぃ……」
「アハハ、うん、そうだね。一年生のみんなが出来るようになりたいよねー」
「……」
竜騎士の先輩であるアルフレッドに対抗意識を燃やすエドにうんと頷き、ルルは未来の自分たちの姿を想像し、期待に胸を膨らませる。
竜騎演技は、各学年で動きを考えるそうだ。
つまりルルたちは来年あの上空で、自分たちが考えた演技を披露することとなる。
ならば絶対に今年の先輩たち以上にいい演技を披露したい。
(私たちなら絶対に大丈夫! 負けないんだから!)
ルルはそんな夢を持ち、握り拳を作っていた。
「皆、学園祭ご苦労だった。今年は天候に恵まれたこともあり、多くの人々に訪れていただき、とても充実した学園祭になったと思う。さて、諸君、これから後夜祭を行う! ここからは私たち竜騎士学校の生徒だけのお祭りだ! この時間を友達とたたえ合い、無事に終えたことを喜び合ってくれ!」
「「「はい!」」」
三年生の飛行演技が終わり、遂に学園祭は終了の時間となる。
一般客は帰路に付き、校庭には片付けを終えた学生たちが集まって、焚火台を囲み打ち上げが始まる。
アルフレッドの開演の言葉を聞き、楽団の人たちが陽気な音楽を奏でだす。
それと同時に「ウォー!」と野太く大きな声を上げたのは、今年が最後の学園祭になる三年生たちだ。
炎がともされた焚火台の周りを囲み、陽気な音楽に合わせ踊り出す。
あまりにも力強く激しいダンスに、他の学年の生徒たちは拍手を送り笑顔で見つめる。
息の合った掛け声とダンス。
どうやら三年生はダンスの練習もしていたらしい。
手足の先まで揃った踊りに、ルルたちの顔には笑顔だけでなく、凄いと尊敬の眼差しも生まれていた。
「さあ、みんなも輪の中に入ってくれ! 皆で踊るぞ!」
アルフレッドの掛け声で「わぁ!」と歓声が上がり、次々と生徒たちが輪の中に入っていく。
ルルもエドに「行こう!」と手を差し出され、笑顔で頷き輪の中へ入る。
楽しくて嬉しくて、ルルの頬は緩みっぱなしだ。
エドだけでなく、カイルとも踊り、クラリス、ミア、それに他の一年生皆と次々に手を合わせ、歌い踊り合う。
「アハハハ、学園祭、すっごく楽しいね! エド!」
「ああ、最高だ! 来年も頑張ろうな、ルル!」
「うん!」
手を繋ぎ一緒に踊るエドも皆も凄く楽しそうで、それは自分たちが頑張ったからこそ、楽しいと分かるもので、学園祭はルルの中で忘れられない思い出になったのだった。
おはようございます、夢子です。
いつも応援いただきありがとうございます。
またブクマ、良いね、評価など、付けて下さった皆様感謝しております。
学園祭終わりです。
エドなんやかんやと三日目はルルの横をキープです。w




