学園祭の話し合い
「まもなくこの学園でも学園祭が行われる。学園祭は三日間。最初の二日は催し物や研究発表、残りの一日が実技の発表となる。一年生はクラスで一つ出し物をする予定だ。個人的な発表は二年生からになる。ただし、上の学年の者と合同で研究発表する者は、申請すれば大丈夫だ。それと最終日の竜騎演技も二年生と三年生だけになる。今年の一年生は優秀で、すでに皆、飛行ができるようになっているが、例年ではそうでないことが多いからな。そこは我慢してほしい」
「「「はい」」」
ルルたち一年生は、そもそも他の学年の入学時の人数よりも少ない。
そのおかげもあってか、いまだ脱落者を出すことなく過ごせている。
それに一致団結とまではいかなくとも、クラスの仲は悪くなく、一人ぼっちになる子もいない。
女の子三人は親友だし、エドはハルトとノアと気が合うようだし、カイルはレオンとディーンといつも一緒だ。切磋琢磨することも大事だけど、なにより相談できる相手がいることは大切だった。
「先生、一年生はどんな出し物をすることが多いのですか?」
「そうだな。ここ数年は一年生は食事処のようなものをやることが多い。数年前には講堂で歌を歌ったり、演劇もしていたこともあったが、食事処であれば集客も多く、接客をしながらでも交流がしやすいからな。OBの竜騎士が来た時にも話がしやすいぞ」
本物の竜騎士が来ると聞いて、皆の目が輝く。
この先、王城へ竜騎士団の見学に行けることもあるそうだが、その前に現場の話が聞けるかもしれない。皆がワクワクしているのがルルにも伝わってくる。
「飲食店は食堂の若手や、寮のゴードン、それから竜騎士団の先輩も屋台という形で出すので、一年生は無理しない程度の店でいいからな」
去年の一年生は買ってきたお菓子を並べる程度、その前の年は同じく買ってきたパンを並べてパン屋にしたそうだ。生徒は貴族が多いため、きっとそうならざるを得ないのだろう。それでも接客を経験したり、会計を経験したりと、学ぶことは多いようだ。
「よーし、じゃあ皆で話し合えー。分担や必要なものなど、細かく決めるようになー」
「「「はい」」」
担任のガイウスが教室から出ていくと、皆で席を移動して丸くなる。
村のお祭りの準備をするようで、ルルはワクワクが止まらない。
先輩たちの飛行の演技も見られるし、王城で働く竜騎士との交流もあるそうだ。
「ねえねえ、せっかくだから、私たちでお菓子を焼いて喫茶店をやらない?」
「あら、私たちで喫茶店? 素敵じゃない」
「私もいいと思う。お茶を出すぐらいなら簡単だし、セットだけにして値段を固定しておけば計算も簡単だしね」
最近シュガーベルにハマっているルルたち女子生徒が提案を出して盛り上がると、待て待てとカイルが手を上げる。
「ルル・ヴァルド、勝手に決めるな。喫茶店などできるわけがないだろう。私はお茶など淹れたこともないぞ」
「だったらカイル、覚えればいいじゃん。文化祭って、そういうことを学ぶ機会でしょう?」
「そうですわ。貴方、何を甘えたことを言っていますの? 自分がお茶を淹れられないから喫茶店をやらないだなんて、理由になりませんわ」
「私は喫茶店なら分担も決めやすいし、下手に安いお菓子やパンを買ってくるよりも、お客様に喜ばれると思うけど?」
「うっ……」
女子対カイルの図になり、カイルは言葉に詰まる。
友人に助けを求めるが、男の子たちは全員フイッと目をそらす。
結託した女子を敵に回してはいけない。
少年たちは自分の命が大事だと、大人しく口を噤んだのだった。
「じゃあ、一年生の模擬店は喫茶店ってことでいいかな?」
「ええ、いいわ」
「良いと思います」
ルルの問いかけにクラリスとミアが率先して賛成してくれて、男の子たちは「はい」と頷いて肯定する。
お菓子を作れる人間は、ルル、ミア、ディーン、そして得意ではないけれどエド。
お茶を淹れられる人間は、ルル、ミア、ディーン、エド、クラリス、ハルト、ノア。
そして、普段からお菓子は食べる専門、お茶は飲む専門というのがカイルとレオンだ。
なので必然的にカイルとレオンは接客専門となる。
カイルに接客ができるか、皆、心の中で不安がっているが、だからと言って他に何ができるかと言われても困る。「カイルは計算が早いから会計でもいいよね」とルルが言えば、カイルはなぜか自慢顔になっていた。
「休憩の順番も決めておこうか」
「私たちは分かれたほうがよさそうね」
「うん、女性竜騎士に興味を持ってくるお客さんは絶対にいると思うし、私たちを見て竜騎士になりたいって女の子が増えたら嬉しいよね。それとお茶を淹れることが得意な人は別れたほうがいいと思うし」
「「「……」」」
自分たちの喫茶店が開けるという楽しみで、お店の内容はサクサク決まっていく。
学園には貸衣装があるので、女子生徒はワンピースにエプロン、男の子はタキシード。
お菓子は前日までに焼いておける、日持ちのするもの。
そして当日はお茶を淹れるだけ。
お菓子と一緒に提供し、おつりがあまり必要にならない金額に設定する。
内容がある程度決まれば、最後に組み分けを決めることになった。
「カイル、ディーン、ミアで一組。エド、ハルト、クラリスで一組。私、ノア、レオンで一組。でいいかな?」
「いや、ちょっと待て。私とルル・ヴァルドは同じ組のほうがいいのではないか? 私にお茶の淹れ方を教えてくれるのだろう?」
「ううん、お茶の淹れ方はクラリスが一番綺麗だと思うよ。私の淹れ方は自己流だし。それにカイルにはディーンがいるでしょう? いつも一緒なんだから、ディーンに聞けばいいと思うよ」
「……」
こんな時までライバル心を向けてくるカイルを、ルルはバッサリと切る。
ハッキリ言って、高位の貴族家子息であるカイルが一番役に立たない。
気心の知れたディーンに補佐してもらい、実家が商会を営んでいるミアが支えるのが一番だ。それにミアなら優しく指導してくれるはず。クラリスだったらダメ出しがきつそうだ。ルルは自分の采配に、うんうんと納得の頷きをした。
「ルルと俺は一緒のほうが動きやすくないか? その、村の祭りとかで手伝いも分かってるしさー」
「エド、だからこそ別れるんだよ。ミアとエドと私が一番こういったことに詳しいでしょう? だからエドと一緒の班だけはないな。これがベストだと思うよ」
「……そうか……」
エドはなぜかがっくりと肩を落とす。
最初は全員で店を回し、落ち着いたらこのグループで休憩に入る。それだけのことなのに、エドは村の祭りの気分を味わいたいのか、残念そうな顔をしていた。
「お菓子は何がいいかな? 数が多く焼けるものがいいよね?」
「ルルのマフィンは絶対ね。とても美味しいもの、お客様も驚くと思うわ」
「この前作ったマカロンも捨てがたいけど、ちょっと材料費がかかりそうだよね? ウチの店でよければ相談に乗れるけど」
「あ、僕も、知り合いの問屋があるから材料は安く仕入れられるよ。それにお菓子も、ガナッシュとか作るのは得意かなぁ」
「わぁ! さすがディーン! 頼りになるー!」
「ええ、ぜひ試作品を食べてみたいですわ」
「ディーンならいろいろなお菓子を知ってそうだよね」
「うん、まあね……エヘヘ」
お菓子の話にディーンが食いつき、女子三人と一緒に何を作ろうかで盛り上がる。
その間、残された男子生徒たちは、茶葉を何種類用意するかと、厨房から借りるカップやポット、お皿の数を決めていく。女の子と和気あいあいと仲良く計画出来ることを期待していた者たちは大人しい。ディーン一人が女子たちと楽しそうに話していて、ちょっとだけ羨ましいと思っていた。
「学園祭楽しみだねー。喫茶店頑張ろうねー」
ルルのそんな言葉にクラリス、ミア、ディーンが「うん」と頷き、ほかの男の子たちは「はい」と大人しく返事を返したのだった。
おはようございます、夢子です。
今日から学園祭の話になります。
楽しんでいただけると嬉しいです。
もし学園祭を文化祭と打ち間違えていたら教えて下さい。
気を付けているのですが……見逃してしまう私です。




