表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怖いものが大の苦手 (本人は否定してる) な美少女が、なぜかいつも私に怖い話をしてくる。  作者: 夏野恵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/7

第5話 ……大したことじゃないんで

「三輪さんって遊園地とか来るタイプなんだねー!」

「まあ、うん……」


視線を落とすと、三輪さんは足をクロスさせていた。

ここから逃げたいという思いがよく伝わってくる。


私よりは仲良くない子なのかなって思ったら、ちょっとだけ嬉しかった。


「こんにちはー」


ひとまずジャブでその女の子に挨拶してみる。


「あ、こんにちは!」

「三輪さんと同じクラス?」

「あ、そうですー!」


「ねー!」と三輪さんの肩をぽんぽん叩く。


思わず三輪さんと呼んだけれど、それどころじゃなさそうだった。

目を白黒させながら、三輪さんはこくりと頷く。


「誰かと一緒に来た感じ?」

「はい、友だちと一緒に来ました!」

「めっちゃ楽しそうじゃん」


それから少し話してみると、意外と普通の女の子だということがわかった。


バスケ部に入っている女の子で、三輪さんと同じクラス。

今日はゴールデンウィーク唯一の休みで、友だちと一緒に来たらしい。


会話のテンポ感が早めだけど、三輪さんが困るほどの子ではない気がする。


でも隣の少女はずっとそわそわしていた。


その理由がわからないまま、私は三輪さんの友だちと話を続ける。


「ずっと聞きたいことがあったんですよねー」

「え、私にってこと?」

「はい!」


ほぼ初対面の私に聞きたいことか。

ちょっと興味あるぞ。


「……ていうかさ、そろそろ友だち待ってるんじゃない?」


ずっと黙っていた三輪さんがようやく口を開いた。

話を変えたいという気持ちが溢れんばかりの口調である。


「いや、せっかく会ったんだし」

「私が聞いておくから良いよ」

「直接聞きたいしなぁ」

「あとで連絡するし」


居心地の悪いまま、2人の様子を見守る。


「とりあえずさ、聞きたいことは私に教えてよ」

「なんか三輪さん、いつもより圧強くない?」

「……別に」


「普通でしょ」と目を伏せたタイミングで、その子は唐突に聞いてきた。


「三輪さんと先輩って、同じ中学なんですか?」


私たちの空気が、一瞬だけ止まった。


……え、マジ?


三輪さんを見ると、唇をぎゅっと結んでいる。

反応から察するに正解らしい。


「そうかも」

「やっぱそうだったんですね!」


うんうんと頷いてから、その子は続ける。


「だから三輪さんって文芸部入るときに、」

「佐々木ちゃん」


隣から、驚くほど冷たい声が聞こえた。


温かい陽気なのに、一気に鳥肌が立つ。

腕を組んで、隣におそるおそる視線を向けた。


三輪さんは張り付けたような笑みを浮かべている。


「その話、絶対しないでって言ったよね?」

「でもさ、」

「あとで教えるから、今はやめてくれる?」

「……ガチだねぇ」


まあいいけど、とその子(たぶん佐々木さん)は苦笑いを浮かべて引き下がった。


「じゃあ私たちはお昼ご飯食べに行くから」


すぐに三輪さんが立ち上がったので、それに倣って私も腰を上げる。


「またね佐々木さん」

「うん、バイバイ」


「楽しんでねー」と佐々木さんは軽く手を振り、小走りで離れて行った。


「じゃあお昼ご飯食べに行きましょうか」

「……そうだね」


うすら寒い感覚を覚えながら、私たちはレストランに向かう。

その後はお昼ご飯を食べてアトラクションに乗ってから、解散することになった。


三輪さんはさっきの話を一度もしなかった。


「帰りってほぼ同じだよね」

「はい」


少し間が開いてから三輪さんは頷く。


バスに乗り込むとすぐに発進した。

西日が車窓から入ってきて、少し眩しい。


「千尋ちゃんって同じ中学だったんだね」


なるべくいつも通りのテンション感で三輪さんに話を振る。

私たちは奥の席に座っているので、話声はほとんど聞こえないはずだ。


「……まあ」


イエスかノーかはっきりしないけど、たぶんイエスなのだろう。


「中学の頃から私のこと知ってた感じ?」

「……」


三輪さんは何も言わない。


バスの揺れる音が、やけにうるさく感じる。


視線を隣に滑らせると、彼女はうつむいていた。

手をぎゅっと握り、身体を小さくしている。


この空気どうしようかなと悩んでいると、ようやく三輪さんが口を開いた。


「……大したことじゃないんで」


三輪さんの柔らかい声が耳朶を打った。


バスの前方を見てから、元の場所に視線を戻す。

なんとなく、バッグを少しだけ遠くに置き直した。


「芽衣さんが同じ中学だってことは知ってました」

「うん」

「でも、隠してたわけじゃないんです」


私に聞かれたら素直に言おうと思ってたけど、聞かれなかったかららしい。

それにしては同じ中学ってことを暴露されたとき、嫌そうな表情してたけど。


たぶん三輪さんは、まだ私に何か隠している。


でも執拗に聞いたら、三輪さんにとって今日が嫌な記憶として残るかもしれない。


信号が赤になって、バスがゆっくり止まる。


「今日は楽しかったね」


そう言って三輪さんに少し近づいた。


もう柑橘系の香水の匂いはほとんどしない。

ハーフアップにした髪も少しだけ崩れていた。


だからってどうってことでもないんだけど。


「千尋ちゃんも楽しかった?」

「……楽しかったです」


ぎりぎり聞き取れる程度の声だった。


よかったよかった。

終わり良ければすべて良しだ。


「また一緒に行こうね」


色々な言葉を飲み込んで、もっとも当たり障りのない言葉を口にする。


「……いいんですか?」

「私はいいよ」


週末は特にすることないし。


「……そうですか」


深呼吸をひとつしてから、三輪さんはこちらに視線を向けた。


「予定が会えば、私も一緒に行きたいです」

「いいね、また来よう」


私が頷くと、彼女はふにゃっと笑みを見せた。


三輪さんの詳しいことはわからない。

でもきっと、そう悪いことではないと思う。


今の表情を見て、なんとなくそう感じた。


「今度もお化け屋敷行こっか」

「……私は、良いですけど」

「でも千尋ちゃん、めっちゃビビってたよね」

「いや、アレはほんとに違くって……」


手をぱたぱた振って否定する三輪さん。


怖い系が苦手なのはどうしても否定したいらしい。

もうバレてるけどね。


三輪さんの言い訳を聞いてるうちに、いつの間にかバスが動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ