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怖いものが大の苦手 (本人は否定してる) な美少女が、なぜかいつも私に怖い話をしてくる。  作者: 夏野恵


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第4話 幽霊とかって信じてます?

「あ、おはよー」

「おはようございます!」


三輪さんが待ち合わせ場所にとことこやってきた。


今日は5月5日、三輪さんと一緒に遊園地に行く日だ。

ちなみにこの遊園地は、小学生のときによく連れて行ってもらった場所である。


「待ち合わせ時間って10時でしたよね?」

「そうだね」

「今って9時半ですよ?」


なんでこんなに早くから来てるんですか? と三輪さん。


「なんとなくかな」


ほんとは三輪さんへのナンパ防止だったけど、そのまま言うのは気恥ずかしい。


今日の三輪さんは、やはり気合の入っている服装だった。


薄ピンクのカーディガンを羽織り、ほどよく抜け感のある印象。

セミロングの髪を今日はハーフアップにしてて、とっても可愛い。


こんな子が1人で待ってたら、誰かに声をかけられること待ったなしだ。


「もう開いてるし、そろそろ行こっか」

「そうですね!」


雑談をしながら入り口に向かうと、ゴールデンウィークだから混んでいた。

待つの嫌だなとぼんやり考えていると、いつもは感じない匂いが鼻腔を抜ける。


爽やかな柑橘系の香りだった。


「千尋ちゃんって今日香水つけてる?」

「つけてますよ」


気になるんだったら落とします、と三輪さん。


「いや、その匂い好きだからいいよ」

「……それは、よかったです」


一瞬だけ間が開いてから、三輪さんはぼそっと応えた。


なんとなく手で顔をぱたぱた仰ぐ。

三輪さんに視線を流すと、バッグを握り直していた。


そんな空気感のまま、入り口で手続きを済ませていざ入場。


「まずはどこ行きます?」


さっきの雰囲気を切り替えるように、三輪さんは明るい声で聞いてきた。


「待たない場所が良いかなぁ」

「遊園地で待たない場所ってほとんどないですよ」


それはそうだけど。


「千尋ちゃんが行きたい場所で良いよ」

「んー……」


マップを見ながら、三輪さんはぼそぼそ呟く。


周りの人とぶつからないように気を使いつつ、遊園地の中央に向かった。

家族連れも多いけど、やっぱりカップルで来ている人もちらほらいる。


「そういえば千尋ちゃんってさ、結構モテそうだよね」


沈黙が続いていたから、ほどよく間を埋めるに話を振った。


「そういうタイプに見えます?」

「そういうタイプにしか見えないけど」


今でさえ、三輪さんは他の人から見られている。

それがちょっと嫌で、私が遮蔽物になっているところだ。


「前に芽衣さん、私のことめっちゃ可愛いって言ってましたもんねー?」


いたずらっぽく彼女はこちらを見てきた。

こちらに顔をぐっと近づけて、笑みを浮かべている。


小泉さんとの話を聞かれていたようだ。


「可愛い、とまでは言ってなかったけど」


私が言ったのは『めっちゃかわ、』までだった気がする。


「でも芽衣さんって私のことモテるタイプに見えるんですよね?」

「うん」

「じゃあ私のこと可愛いって思ってるってことじゃないですか」

「……」


間違ってはいないけど、本人の前だとなぜか否定したくなる。


「こことかどうです?」


どう答えたものか考えていると、三輪さんが話を変えた。


彼女の細い指の先にあるのは、とあるアトラクション。


「私はいいけど、千尋ちゃんは大丈夫なの?」

「……大丈夫ですけど」


明らかに大丈夫じゃなさそうな声が返ってきた。


彼女が行きたいと言い出したのは、昔からあるお化け屋敷だった。

三輪さんの化けの皮が剝がされることになると思うんだけど、大丈夫なのかな。


「じゃあ行こっか」

「……」


入り口に着くと、少しだけ待っている人がいたので、雑談をしながら時間を潰す。


「芽衣さんって怖いの好きじゃないですか」

「うん」

「心霊スポットとかには興味ないんですか?」

「行きたいって感じではないかな」


私は怖いもの知らずではない。


怖い話が好きだからこそ、そういう場所には立ち寄らないのだ。

ただ見る分には面白いので、たまにそういう動画を覗いたりする。


「芽衣さんは幽霊とかって信じてます?」

「それはね、パンドラの箱ってヤツだよ」


腕を組んで応える。


「どういうことですか?」

「あまり話したくないって言うか」

「えっ……」


三輪さんをほどよく怖がらせていると、すぐに順番が回ってきた。


簡単に説明を受けてからいざ入館。


辺りが真っ暗になって、赤や青のほの暗い光が反射している。

少しノスタルジックな気持ちになりながら、私たちは通路を歩いた。


「三輪さん大丈夫?」

「……うん」


とても小さくて可愛らしい返事が返ってきた。


三輪さんは私の後ろを半歩遅れて続く。

伝説のホラゲみたいなことしてるな、と思っていると——


いきなり赤い照明が強まり、叫びながら演者が正面に出てきた。


「……んっ」


口元を押えて、三輪さんは声を漏らす。


なんだなんだ。

そのいやらしい声は。


普通は大声出すものじゃないの?


そんなことを思いながら、最後まで私たちは歩き続けた。


「……はぁ」


お化け屋敷を出ておもちゃを回収してから、三輪さんは大きなため息を吐いた。


予想通りと言えば、予想通りの結果である。


「やっぱ千尋ちゃんって怖い系苦手、」

「いや、こういうのは苦手ってだけですから」


怖い話は好きなんで、と話を遮って呟いた。


お化け屋敷から少し離れて、近くのベンチに腰掛ける。


「これからどうする?」

「良い時間なので、そろそろお昼にしましょう」

「いいね」


スマホでレストランを調べてみる。


こういうところの料理ってやけに価格が高いよね。

財布の紐が緩んでいるときにお金をとろうとするなんてけしからん。


そんなことをぼんやり考えていると、少し離れたところから声が聞こえた。


「あれ、三輪さんじゃん!」


そこに立っていたのは女子高生にしては身長の高い女の子だった。

三輪さんに視線を戻すと、視線がふらふら泳いでいる。


偶然見つかった感じかな。


どうしようか考えつつ、その子が私たちに向かってくるのを眺めた。

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