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基礎魔法士は見返したい! ~無能な落ちこぼれと呼ばれた僕は、基礎魔法×全属性で成り上がる~  作者: スギセン


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4話 早朝の森

 翌朝、僕はあまりの空腹に目を覚ました。

 まだ日は昇る前で肌寒く、辺りにはうっすらとした暗がりが広がっている。


「……うぅ、なにか食べないと」


 ぎゅるぎゅると騒ぐ腹の虫を抑えるには、兎にも角にも食料だ。


 昨日の夜なんてビスケット三枚だけだったし、そりゃあお腹も空くよ。


 それによく考えれば、ちゃんとしたご飯を食べたのは進級試験の朝だったからなぁ。


 しかも緊張してスープしか飲んでなかったし。

 ……どんな状況でもお腹だけは空くっていう言葉、本当だったんだな。


 幸い、食料の調達方法には少しばかりの知見があるし、森と言えばやはり食材の宝庫だ。


 ……手あたり次第に勉強してたおかげだけど、薬学とかサバイバル術の知識がこんなに頼もしくなる状況になるなんて思いもしなかったよ。


 お腹が減って倒れそうだけど、心のどこかでは小さなワクワクを感じていた。

 自然環境では自分の力が、自分の知識がそのまま生死に直結する。


 それはつまり、僕自身の価値を何の色眼鏡もなく証明できるってことだ。


 ……こういう状況で思うのも不謹慎かもしれないけど、生きてるって、初めて実感できてるのかもしれない。


 僕は足取り軽く、早朝の森へと足を踏み入れた――。


 * * *


「んっ、思ったより暗いな……」


 まだ日も出ていない森の中は、当然のように暗く足場も悪い。

 何度もつまづきながら、あることを思いついた。


「試したことはないけど、多分いけるはず……【光輪(ラース)】」


 僕の詠唱に呼応して、小さな光のモヤが現れた。

 特異四属性(テトラコン)の一つ、光属性の基礎魔法だ。

 

 この魔法は単体では何の効果も持たない、光のオーラを生み出すだけなんだけど――


「うん、思った通り! これでバッチリ見えるね!」


 僕の狙いは魔法そのものというより、これに付随して現れる光源としての機能だ。


 光輪(ラース)は柔らかい光を放って、任意の場所にとどめておける。

 

 それに、火種(フラン)と違って延焼の心配もないし、継続的に使うことを考えたら魔力消費量的にも断然こっちのほうが有効だ。


 僕の狙い通りに行き先を照らす優しい光は、さっそく森の恵みを与えてくれた。


 小さな赤い実がたくさん実った茂みに、近くの倒木の周りには白や茶色のキノコがたくさんはえている。


「おっ! ようやく食料っぽいもの見つけたよぉ……! えぇと、この実は……赤くて張りのある果実、ギザギザの小さい葉っぱに、枝には細かいトゲ。 それから、横に連なるように広がった茂み――うん、リュコの実だ!」


 いつか見た、野生植物図鑑と薬学の教材の内容を照らし合わせて、この実の正体が判明。


 種はなく、酸味が強いけど栄養価に優れている実だ。

 

 逸話によると、遭難した人たちがこれを食べて生き長らえたってことがあったとかなかったとか……


「……まあ、僕は別に遭難してる訳じゃないんだけどね。 むしろ、救助されることはないから、下手したら遭難してる方がマシなのかもね」


 自虐的にボヤきつつ、リュコの実を口の中へ放り込む。

 柔らかい皮がピッと弾けて、口いっぱいに酸味が広がる。


「……! んん、栄養がありそうな味!」


 顔をしかめながらも、しっかりと森の恵みを味わう。

 当然お腹は膨れないが、こういったものでしか得られない栄養もある。


「…………」


 いくつかリュコの実をつまみ食いして少し気分が落ち着いてくると、さっきの自分の発言を思い返す。


「……遭難のほうがマシとか、不謹慎だったよな、うん。……ごめんなさい」


 僕は誰にでもなく、その場で頭を下げた。

 ここに僕がいるのは、僕自身の不甲斐なさのせいだ。 


「うん……よし! さて、お次は君たちだ」 


 両頬をパシッと叩き、気持ちを切り替える。

 遭難したにせよ、そうじゃないにせよ、食べ物が必要だということには変わりない。


 僕の盛大な勘違いでもなければ、白いキノコは〔ツガロパ〕、茶色いほうは〔オオフサダケ〕だ。

 どちらも食用になり、味も良い。


 薬学の勉強でも鬼門と呼ばれるのが、薬効野草(ハーブ)と菌糸類の分野だ。


 とりわけキノコについては、猛毒を含むものが多く、食用と見分けのつきにくいものもたくさんある。


 幸い、ツガロパやオオフサダケが同時に生育できる環境では見た目の近い毒キノコはないけど――


「……毒キノコを食べたところで――僕が死んだところで、心配する人もいないしな」

 

 ザワザワッと、黒い感情が渦を巻いた。

 むしろ、ここで意味もなく生き続けるよりもいっそのこと――


「…………なぁんてね! さあ、これだけあれば美味しい朝ご飯になるぞ!」


 無理やり声を出して、手頃なキノコを次々と拾い集める。

 ひとしきり集め終えると、僕は鼻歌なんかを歌いながら来た道を戻った。

 

 けれど心の中のモヤモヤは、まだじっとりと滞留していた。

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