表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
基礎魔法士は見返したい!~無能な落ちこぼれと呼ばれた僕は、基礎魔法×全属性で成り上がる~  作者: スギセン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/25

13話 ワーグ、再び

 月夜に照らされた一人と一体。 

 両者の空気がピンと張り詰めた。

 

 様子を伺いながらも、左に、右に、ジリジリと動きながら距離を詰めるワーグ。

 対するロナンさんも、ワーグに向けた剣先をゆっくりと動かす。


「ゴルルル……」


 ワーグの喉奥深くから、地響きのような唸り声が響いた。


「ルルル――バゥワッ!!」  


 ――次の瞬間、ワーグは一瞬のうちに飛び掛かった。

 爪を、牙をむき出しにして――ありったけの殺意を込めた突撃。


 ギリィッ――


 しかしロナンさん、一歩も臆することなく真っ向から受け止める。

 大振りな刀身の腹を盾代わりに、鋭い爪も牙も、完全に制してみせた。


「ふっ……!」


 そして一息入れると、ワーグが嚙みついたままの剣を大きく振って、力任せにワーグを放り投げた。


「す、すごい……」


 圧巻だった。

 ロナンさんは、見た目からは決して筋肉量が多いとは思えない。

 

 でも、僕を軽々と持ち上げたり、僕があれだけ苦戦していたワーグを力任せに押し返したり――ロナンさんのそれは、明らかに普通の人と違っているように思えた。


「グルルッ……ガァッ!!」


 再び、ワーグが駆け出した。 

 でも今度は、さっきよりも低く、鋭い勢いで突っ込んでくる。


 ――まずい。

 あの位置じゃあ、剣で防ぐことは難しい!

 ワーグのやつ、ついさっきロナンさんに力負けしたもんだから、戦法を変えてきたんだ……!


 スッ――。

 対するロナンさんも、当然のように腰を落とした。

 片脚を下げ、剣を大きく後ろに構えた。


「――せぇっ!!」


 ブオンッ――!!

 力強い掛け声とともに剣が風を裂き、突っ込んでくるワーグに刀身が吸い込まれてく。


 ザシュッ。


「キャヒンッ……!!」


 すれ違い様、ワーグの横っ腹に深い一撃が入った。

 致命傷だ。

 

 ゴロゴロと転がりながらも、なんとか立ち上がったワーグだったが――ぼたぼたと激しい出血が黒い水たまりを形成し始めた。


 ロナンさんは、圧倒的に有利な状況だというのにおごることなく、静かに剣先をワーグに向けた。

 決着の時は、近い。


「……!」


 刹那、瀕死のワーグと目があった。

 くすんだ金色に光る瞳からは、激しい怒りのようなものを感じた。


 次の瞬間、ワーグがニヤリと笑った――ような気がした。


「ガ……ガルラァッ……!!」


 ワーグは血を吐きながら吠え、ロナンさんから大きく距離をとりながら旋回。

 ――かと思ったら、次の瞬間、無防備な僕の方目掛けて駆け出した――!!


「しまっ――!!」


 ロナンさんの慌てた声。

 それが聞こえる頃には、ワーグは数メートル先まで迫っていた。


 まずいまずいまずいまずい――――!!

 どうする、何ができる!?


 火?水?それとも、土?電気?

 とっさに考える。


 小さい火を起こしてみるか?

 水の泡を出したら怯むか?

 土を少し動かしたら防げるか?

 さっきみたいに静電気を利用すれば――


 いや、きっとだめだろう。

 今までだって、相手が油断してるところに運よく効いたっていうだけだ。


 今のワーグにあるのは――決死の覚悟。

 刺し違えてでも僕を殺そうとする、執念だ。

 

 そこに、僕の小さい奇跡が入り込む隙間なんてない。

 

 ――今度こそ、僕は死ぬんだ。


 僕の心の中は、恐怖と絶望で満たされた。

 

 飛び掛かってきたワーグが、恐ろしいほどスローモーションに見える。

 少し離れて、必死に手を伸ばすロナンさんの姿。

 

 あぁ、そうだ。

 ロナンさんに……魔法を見せてあげるって約束――守れなかったなぁ。

 

 なんだかすごく――すごく、怖いなぁ。


 全てを諦めかけたその時、気付いた。

 震える僕の手に、溢れるほどの魔力がみなぎっていることに――。


 それを見て、頭に電流が流れた。


 僕はもう、考える必要すら無かった。


 古代魔法(オルタナ)発動――【月詠(ルーナ)】……!!


 直感だった。

 何をどうすればいいかは、体が――心が知っているようだった。


 魔力の流れが教えてくれる。

 火と水が混ざり合い、途方もない力を生み出すと。


 僕の体の中で、火属性と水属性の魔法が、絡み合い、溶けていく――。

 僕は――叫んだ。


火×水(フラ・ボルン)――【爆ぜよ水(イドラ)】――!!」

 

 ドパァンッ――!!

 次の瞬間、目も開けられないほどの衝撃が走った。


 あまりの衝撃に、僕はゴロゴロと転がった。


 体中に響く振動が、吐きそうなくらい痛い。


 でも、全身を走る激痛が、今も僕は生きてるってことを実感させた。


「うぅっ――な、なにが……」


 ようやく目を開けた僕は――自分の目を疑った。


 ポッカリとえぐれた地面、吹き飛んだ土や石、そして――

 少し先で、ピクリとも動かないワーグの姿。


「えっ、なに、これ――いっ!?」

 

 状況を飲み込めずにただただ困惑していると、走ってきたロナンさんが思い切り抱きついて来た。


「いっ、いだいいだいっ! ロ、ロナンさ――」


「――グスッ。 ごめん、ごめんね……私が、不甲斐ないばっかりに……グスッ」


 ロナンさんは泣いていた。

 ガッシリとしがみついた腕が、肩が、小さく震えている。


「だ、大丈夫ですって! ほら、僕、なんとか生きてますし!」


「グスッ……うん。 本当に、よかった……絶対死んじゃったと思ったよぉ……グスッ」


「ま、まあ、それはそうなるところでしたけど……おかげで助かりました」


「……え?」


 ロナンさんは、僕からゆっくりと体を離すと不思議そうな表情を浮かべた。

 鼻も、頬も、真っ赤に染めている。


「私、なにもしてない――いや、何もできなかったんだよ?」


「え? いや、だって、ワーグを倒してくれたじゃないですか。 現に、ほら」


 僕はそう言って、物言わぬワーグの死体を指差した。

 けど、ロナンさんは更に不思議そうに、首をかしげた。


「……レキムさん、何を言ってるの?」


「何って、何がですか……?」


「あれは、あなたが魔法で倒したんですよ? ドパァンッ!って」


「…………え? 僕がぁ……?」


 正直、咄嗟のこと過ぎて何が起きたのか、何をしたのかさえよく分かってない。


 なんとなく、古代魔法(オルタナ)の力の一端に触れたような気がしなくもないけど……何の実感もない。


「えっ、僕が魔法で……?いやいや、そんなこと――あふっ」


「……!? レキムさん!?」


 急に、全身の力が抜けていく。

 意識が薄れていく。


 そりゃあ、そうだ。

 体力、限界をとっくに超えてる。

 魔力、多分スッカラカン。


 僕はロナンさんの呼ぶ声に応じることなく、気だるいまどろみの中に沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ