表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵令嬢メリスの奮闘記  作者: 紙禾りく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/65

第三十九話

「気持ち良かったですわね」

「はい。ちょっと恥ずかしかったですけど。得がたい体験でした。こんなに肌が綺麗になるものなのですね」

 カラミラ様に同意しながら、頬を摩るアリク様。


 満足そうな二人の横で、私も自分の肌を触ってみる。……おお! これすごい。こんなに美肌になるとは。

 もちもちといつもより弾力があって柔らかく、表面はしっとりさらさらの素晴らしい肌に仕上がっている。


「私までご一緒させていただいて、本当によろしかったのでしょうか?」

「良かったのよ。マイアにはお世話になっているからね。それにしても、カラミラ様の言った通り、ここのエステは別格ね」

「そうなのですわ。ここは本当に素晴らしいのです!」


「やっぱりオイルなんかが特別なのかしら?」

「そうですね。ケノミ――」

「メリス様! この店のエステに使用されるオイルは、いろいろな薬草から作られた、特別製だそうですわ」


 はぁー。私はプラム様ではなく、カラミラ様に尋ねたのだけど……。そんな露骨に割って入ってこないで欲しい。

 これがあるから困るのよね。プラム様はぐいぐいくるから、アリク様やカラミラ様と満足に会話し辛くなってしまう。


「ええ。その通りです」

「……」

 会話を遮られたことに苦笑しつつ、波風立てぬよう一歩引いてみせるカラミラ様。アリク様も無言で私たちから距離を取った。


「へぇー。そうなのね。そのオイルは売っていたりはしないのかしら?」

「残念ながら販売はしていないと言われましたわ」

「そう……」

 はぁー。やっぱりプラム様がいると駄目ね。


「そんなに気を落とさずとも。お気に召されたのであれば、メリス様もここに通ってはいかがですか?」

 気を落とした理由はあなたにあるのだけど……。プラム様は必死過ぎる。もう少し他人に譲る心を覚えて欲しい。


「私、ここにはよく来るのですが、良ければ一緒にどうですか?」

「あら。プラム様はここによく来ているの?」

「はい。それなりに来ております」

「そうなのね……」


「メリス様も通われるのでしたら、ご一緒しませんか?」

「そうねぇー……」

「メリス様はダイエットのためにここに来たのですわよね。でしたらここはダイエットに最適ですわよ!」


 確かにこれだけの美肌効果があり、そのうえで痩身効果まであるというのは、本当に魅力的なことだけど。

 でもプラム様が一緒となると、おそらくアリク様たちは一緒に来てくれないだろう。どうしたものかしら?


「実は私、少し食べ過ぎで太ってしまったのですが。ここに通うようになって、お腹周りの余分な脂肪がなくなりましたのよ」

「うーん。まあ、考えておくわ」

 少し考えてから、とりあえず答えを保留することに。


 別にプラム様のことが嫌いというわけでもないので、一緒に通う約束をしても良かったのだけど。

 今すぐに答えを出す必要性を感じなかったし、後でメリスとも相談してから、どうするか決めよう。


「そうですか……。それでメリス様、この後のご予定は?」

 少し残念そうな顔をしたプラム様、しかしそれも一瞬のことで、今度はこの後の予定を聞いてくる。

 予定ね。とりあえずは昼食にする予定だったけど……。


 これ、プラム様はずっとついてくるつもりよね? うーん。だとすると今日は早めに切り上げたほうが良いかも。

 昼食の後は適当に回るつもりだったけど。プラム様が一緒となると、アリク様とカラミラ様は楽しめないだろう。


「マイア。レストランを予約しているのよね?」

「はい。レストランを予約しております」

「あら。そうでしたの。私もご一緒してもよろしいでしょうか?」

「マイア」


「店側に断られる可能性もありますが、おそらく大丈夫だと思われます」

「そう。なら、一緒にいきましょうか」

「はい!」

「……またのお越しをお待ちしております」


 嬉しそうなプラム様とともにエステサロンから出た私たちは、マイアの先導に続いてレストランに向かう。

 長い廊下を進む私たち、左右には一定の間隔で客室の扉が並ぶ。そうしてしばらく歩き続けていると突然!


「やっぱり帰る!」

「お待ちください、お坊ちゃま!」

 突然響いた声に何だと思う間もなく、勢いよく開かれた扉。その扉は丁度私のすぐ横にあって……。


 えっ? ちょ、ちょっと待って!


 開いた扉から飛び出してくる太った少年。不運なことに、少年の進路上に入ってしまった私。

 不味い。このままではぶつかってしまう! 慌てて避けようとするが、足がもつれて転んでしまう。


「きゃっ!」

「お嬢様。大丈夫ですか!」

「いたた……」

 前を歩いていたマイアが、駆け寄ってくる。


「お怪我はありませんか?」

「ええ。大丈夫よ」

 幸いなことに尻餅をついただけで、大したことはなかった。しかし、いきなり飛び出してくるなんて。


「ちょっとあなた! 危ないじゃない、いきなり!」

 私のすぐ近くに立つ少年に向かって声を荒げるプラム様。

「いや。そいつが勝手に転んだだけだろう。俺はちゃんと止まったぞ」

 プラム様の剣幕に一瞬たじろいだものの、すぐに言い返す少年。


 ご、ごもっとも……。まあ確かに、さっきのは慌てた私が勝手に転んだだけと言えなくもない。

 なにせ、少年は私にぶつかる寸前でうまく勢いを殺し、ぶつかる前にきちんと止まったからだ。


「えっ? いや! だとしても! そもそもあなたがあんな勢いで飛び出してこなければ、こんなことにならなかったわよ!」

 少年が私にぶつかったように見えていたのか、一瞬虚を突かれた様子のプラム様。しかしすぐに勢いを取り戻し少年に食ってかかる。


 まあ、正直私も、一言ぐらい謝って欲しかった。


 だって、ぶつかりはしなかったけど。少年は私が転んだ原因の一端を間違いなく担っているからね。

 何を急いでいたのか知らないが、あんなに勢いよく部屋から飛び出して来なくても良いじゃないの。


 そんなことを思いながら立ち上がり、私も一言文句を言ってやろうとしたけど、視界にあるものを捉え、絶句する。

 えっ? ちょっと待って! あれって妖精? よね? ええっ! だとしたら。この太った少年の正体はもしかして……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ